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国際認証「B Corp」取得に向けた取り組みも:

古本ビジネスの「おかしい」を変えたいバリューブックス

文●石井英男 写真●篠原幸宏(バリューブックス)提供 編集●ASCII

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 バリューブックスは長野県上田市を拠点とする、古本売買を主な事業とする会社だ。本の売り手から倉庫に届いた本を査定し、買取金額を支払う。そうして買い取った本を、Amazonや楽天、自社のサイトを通して次の読み手に販売している。こうした本の買取販売事業を基盤としながら、本の送り主が買取金額をNPOや大学などに寄付する仕組み「チャリボン」を運営したり、寄贈という形でも本を届けるなど、社会貢献的なサービスも展開している。

 また、社会的な責任を果たす企業を認証する「B コーポレーション」(以下「B Corp」)認証の自社での取得を目指すと共に、B Corpの入門書とも言える「The B Corp Handbook」日本語版の出版にも、多くの人々と一緒に取り組んでいる。 

 そうした同社の取り組みに強い共感を抱いたイノラボの藤木隆司氏、青木史絵氏が、バリューブックスの創業者 兼 取締役 中村大樹氏、取締役 鳥居希氏に話を聞いた。
 

株式会社バリューブックス創業者 兼 取締役 中村大樹氏

バリューブックスのウェブマガジン「End Paper」より

株式会社バリューブックス取締役 鳥居希氏

同上

イノラボ 藤木隆司氏

イノラボ 青木史絵氏

あえて送料を「有料化」

藤木:はじめに、バリューブックスがどんな会社か教えてください。

鳥居:まず、どんな事業をしているか、またこれまでの事業の経緯をお話しします。当社は今年創業15年目の会社で、「日本および世界中の人々が本を自由に読み、学び、楽しむ環境を整える」というミッションのもと、本の買取販売をして、「本を集めて届ける」事業をしています。

 本を買い取る方法として、一般的な買取ともう1つ、買取代金を寄付金とするしくみの2種類があります。販売は主にECですが、その他に実店舗や移動販売車、卸での販売もしています。また、本を届ける方法として、販売する他に「ブックギフト」として本を寄贈する取り組みもしています。

 もともとは創業者の中村大樹が大学を卒業後、手元にあった一冊の本をAmazonのマーケットプレイスで個人で販売したのが始まりでした。徐々に売り上げが伸びて規模が少しずつ大きくなり、そろそろ会社にしようかということになったのが2007年ですね。

 そこから14年経った今年6月の期末の数字ですが、社員数300人超、在庫数136万点、年間買取数356万点、年間販売数293万点となっています。長野県上田市内に倉庫が5つあり、同じく上田市内に実店舗も運営しています。年間買取数が356万点となっているのですが、これは買い取ることができた本の数であって実際にお送りいただく本はその倍くらいあります。

長野県上田市にある倉庫の1つ

 宅配買取サービスは「バリューブックス」と「Vaboo」の2種類あって、バリューブックスのほうは会員登録制、Vabooは会員登録なしで買取をお申し込みいただけます。

藤木:業界の中でもユニークな取り組みをされている印象があります。

鳥居:他の業者さんと違うのは、本を送っていただくときの送料の扱いでしょうか。宅配買取では、買取業者が送料を負担するのが一般的です。以前は弊社も送料を全額負担していましたが、2018年に、買取1箱につき500円を送料として査定額から差し引く形に変更しました。代わりに、買取金額は従来の1.5倍に上げています。送料を弊社が一律で負担する場合だと、買い取れない本の送料も全体の買取価格に影響してしまいます。買い取れない本が多いほど、買い取れる本の買取価格が下がってしまうことになります。それを是正するような形で、送料有料化に踏み切りました。送料をいただき、その分、値段がつくものだけに仕分けされた本を、それまでよりも高い価格で買い取るサービスへの転換です。

 弊社には、1日2万冊の本が届きます。そのうち買い取ることができているのは半分くらいで、もう半分は値段をつけて買い取ることができておらず、そこを改善したいという長年の課題がこのサービス変更の背景にはあります。

 弊社が買い取れるのは、ECで販売できる本です。具体的には、状態が良かったり、ECでの販売時に必要なISBN(​​国際標準図書番号)がついている本ですね。これらは、お手元で比較的簡単に判断いただけると思いますが、それ以外に買取価格を決める大きな要素として、中古市場での需要と供給の関係があります。たとえば2年前のベストセラーなどの場合、売りたい人が多すぎて、中古市場で供給過多になっていて、値段がつかなかったりすることもあります。本の状態やISBNは手元でご判断いただけますが、市場での需要と供給は本そのものを見ただけでは判断が難しいと思います。

 そこで、送料有料化とあわせて弊社の買取サービスの機能として2018年にリリースしたのが、ISBNや本のタイトルを使った「おためし査定」です。その時点では、1冊ずつ買取価格を調べるものでしたが、翌年にリリースした新機能の「本棚スキャン」では、本棚に並んだ本をスマートフォンで撮影するだけで、本の暫定的な査定が一度にまとめてできるようになりました。少しでも簡単に、値段のつくものだけを選んで買取サ ービスをご利用いただけるようにするのが意図ですね。

本棚スキャン。本棚に並んだ本の写真をとるだけで買取金額の目安がわかる

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