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高齢者の記憶が電気ショックで「20代並み」に、米研究チーム

2019年04月17日 12時41分更新

文● Niall Firth

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脳の一部に電気刺激を与え、脳波を同期させることで、一時的に加齢性の記憶障害を回復できるという。

作業中の一連の情報を一時的に脳内に保持する「作業記憶(Working Memory)」は、年齢を重ねるにつれて悪化していく。作業記憶は脳の異なる部分が互いにどう同期しているかに関連していると見られている。だが、加齢とともにこれらの脳波の同期にずれが生じ、作業記憶は低下する。そのため、会話や読書、あるいは集中することが困難になるのだ。

ボストン大学の研究チームがこのほど実施した実験では、まず、若者と高齢者に一連の記憶タスク(間違い探し)を与えて結果を比較した。当然のことながら、最初の試験で成績がよかったのは若者グループだった。次に、高齢者グループに電極で覆われた帽子をかぶせ、脳波が同調するように脳の2つの領域(側頭皮質と前頭前皮質)に電気刺激を25分間与えた。すると、電気刺激を受けた高齢者グループの成績はずっと良くなり、20代の若者と同程度になったという。研究グループによると、効果は試験終了後、少なくとも50分間続いたとしている。研究成果は4月8日、ネイチャー・ニューロサイエンス誌で発表された。

今回の成果は、加齢性の記憶障害に対する治療法の新たな可能性を示すものだ。だが、より多くの参加者と適切な臨床試験を繰り返す必要がある。また、実験後に効果が継続するという証拠もない。脳刺激療法を用いて集中力を高めるというDIYカルチャーはすでに存在するものの、実際に安全なのかどうかの検証は不十分だ。したがって、この実験を自宅で試さないように。

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