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EVシフト進む中国、7万カ所の充電スタンドで米国を圧倒

2019年02月07日 11時18分更新

文● James Temple

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中国は電気自動車市場において、諸外国を尻目に急激にシェアを伸ばしている。昨年の中国における電気自動車の販売台数は、他国のすべての電気自動車の合計販売台数を上回った。

2月5日にコロンビア大学のグローバル・エナジー・ポリシー・センター(Center on Global Energy Policy)が発表した報告によると、中国は電気自動車を支援するのに必要なインフラの建設も急速に進めている。中国政府は電気自動車のテクノロジーを、世界の自動車市場で躍進する好機として捉えているからだ。

新たな報告書によると、中国国内にあるEV充電器は現在80万8000基に上り、米国の約50万基を大きく引き離している。この数字は、両国それぞれですでに使われている電気自動車台数と同様の差(中国260万台に対して米国110万台)を反映したものだ。

しかし中国が本当に他国を引き離しているのは、公衆充電スタンドの数だ。2018年末時点で、中国では約7万カ所のスタンドに合計33万基の充電器が設置されている。一方米国は、2万4000カ所のスタンドに6万7500基の充電器が設置されているが、充電器のほとんどは各家庭にある状況だ。

この差はどこから来たのか。第一に、自動車市場の規模は中国の方が大きく、人口も米国よりずっと多い。第二に、中央政府が台頭しつつある電気自動車産業の支援に、米国よりもずっと力を入れているからだ。具体的には、販売助成金の支給、ナンバープレート取得制限の免除、電気自動車やバッテリーの大手製造企業への特別な助成金の提供などだ(「EVシフトでも覇権目論む中国の巨大な野望」「強烈な「EVシフト」で中国は自動車産業を制するのか?」を参照)。

しかし、どの国であっても電気自動車産業をうまく立ち上げるためには、鶏が先か、卵が先かという根本的な問題を頭に入れておく必要がある。消費者に車を買う気にさせるには、十分な数の充電スタンドが必要となるが、充電スタンドの採算が取れるにはそれに見合う数の電気自動車が世の中で使われていなければならない、ということだ。報告書の著者によると、中国はさらなる問題にも直面している。中国の人口の大部分が自宅に専用駐車場を持たず、規制によって家庭用充電器を設置するのに何カ月もかかるのだ。

そこで中国政府は資金調達やテクノロジーの標準化、目標設定を通して、公衆充電施設網の設置を推進しているという。具体的には、中国国務院は2020年までに約500万台の電気自動車に十分に対応できる充電施設の設置を求めている。

米国政府は電気自動車の購入促進のために税の優遇措置を提供し、ごく一部の州や都市が税金の払い戻しやその他の財務的手段を提供して充電器の設置を支援している。しかし全体として、連邦政府が電気自動車用の公衆充電施設の設置に大きな役割は果たしていない、と報告書は指摘している。

米国にとってのリスクはいうまでもなく、やがてこれらの対照的な政策優先事項によって、中国が数年後に大きく成長した決定的な自動車テクノロジーの強みを手に入れることだ。中国は海外での販売拡大と、自動車業界の中心であるデトロイトに取って代わることを狙っているのだ。

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