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ビジネスコンテストから4ヵ月でサービスイン! 第一生命のオープンイノベーションが成功した理由とは

第一生命 InsTech担当者に聞く〈後編〉

連載
InsTechオープンイノベーションビジネスコンテスト

企業内の壁を突破する方法は?

 多くの大企業がオープンイノベーションに取り組んでいるが、なかなか事業化へ結びつかず、途中で頓挫してしまうケースも少なくない。そんななか、第一生命は、2017年にビジネスコンテストを初開催し、4ヵ月後には受賞企業とのコラボレーションをスピード実現している。

 いったいどのように社内の障壁を突破していったのか。前編に引き続き、第一生命 営業企画部 InsTech推進室の白鳥央氏にオープンイノベーション成功の秘策を訊いた。

 なお現在、第一生命は、かんぽ生命、NTTデータとの共同で「InsTechオープンイノベーションビジネスコンテスト」を開催中。ヘルスケアや健康増進、保険ビジネスに関連したアイデアを2019年2月15日まで募集している。

4ヵ月間でのサービスインは
スタートアップとの協業だから実現できた

 スタートアップがビジネスコンテストに参加する目的は、受賞そのものよりも、その先にある事業化の実現だ。大企業とどのように協業が進められるのかは大いに気になるところだろう。

 2017年に初開催された「InsTechオープンイノベーションビジネスコンテスト」では、受賞企業2社の技術が保険商品やアプリに採用されている。

 JMDCのOCRによる健康診断書のデータ化技術は、第一生命の健康応援アプリ「健康第一」に採用されており、スマートフォンのカメラで読み取った健康診断の結果から健康年齢と健康タイプが分かるようになっている。テック・パワーの顔画像シミュレーションも、同じく「健康第一」アプリに採用されており、CMで見たことのある方も多いはず。

健康第一アプリには「InsTechオープンイノベーションビジネスコンテスト」の受賞技術が採用されている

 第一生命初のアプリ「健康第一」は、スタートから実質4ヵ月でサービスインした。同社では、これまでも社外のパートナー企業と連携してシステムを開発したことはあったが、ここまで短期間で進んだことはなかったそうだ。

 「これまでの我々の感覚では考えられない。スタートアップならではのスピード感に、学ぶところが大きかった」という。

 「健康第一」には、スタートアップを含め、全24社が関わっている。それだけ多くの企業が参加するプロジェクトでは、コミュニケーションをとるだけでも膨大な時間がかかりそうだ。第一生命は自社ビル内に専用の場所を用意し、各企業の担当者が毎日のように集まり、調整をしながらまとめていったそうだ。

イノベーションを創出するための組織づくり

 順調にプロジェクトが進んだのは、当時の代表取締役社長(現在は会長)の渡邉光一郎氏がトップダウンでInsTechの取り組みを打ち出したことが大きい。

 保険会社ならではの難しさもあった。新しい保険商品をつくるには、金融庁のガイドライン内で考えなくてはいけない。専属の商品事業部、法務関係のチェックをする部署、お客さまへ届けるのは営業部、それぞれに目指す方向がある。

 こうした壁は常にあったが、執行役員の岩井泰雅氏がリーダーとなり、役員自らが動いたことで、社内の障壁や複雑な手続きを突破できたという。

 もちろんトップダウンや特定の担当者だけの働きでは、事業として継続していくのは難しい。第一生命では、組織全体でイノベーションへ向けて取り組んでいるのが特徴だ。

 経営企画部や社長直轄の組織ではなく、営業企画部内にInsTech推進室を設置。営業企画部はビジネスに近いため、よりお客さま目線でのサービスを考えやすい。営業企画部を中心に、各部署からもメンバーが参加し、密にコミュニケーションをとりながら取り組みを進めていった。

 加えて、Dai-ichi Life Innovation Labという施設ができたことで、ほかの部署からの訪問者にInsTechを説明する機会も得られ、グループ全体に取り組みへの理解が浸透してきているそうだ。

畑違いのアプリ開発だったが、執行役員である岩井氏自ら強力に推し進めた結果だった

生命保険のイメージにとらわれない
自由な技術やアイデアを求む!

 最後に、どのような企業に応募してほしいかを訊いた。

 「我々では思いつかないようなサービスを提案してほしい。生命保険に関する知識は弊社がもっているので、何か面白い技術やアイデアを提案してくれれば、うまく組み合わせてビジネスやサービスに育てられるかもしれない。健康がテーマではあるが、柔軟にイメージを膨らましてくれるとうれしいです」

 いまは保険やヘルスケアとかけ離れていても、全く異なる分野で集まり、会話を深めることで、イノベーションが生まれる可能性はある。「ビジネスのアイデアはあるが実現手段がない」「技術はあるけれど使い道がわからない」というスタートアップも、まず応募してみてはいかがだろうか。

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