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寝たきり原因No.1「筋肉や骨の衰え」は中年期から予防せよ

文● 真島加代(ダイヤモンド・オンライン

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自分の体が思うように動かなくなり、体の衰えを実感するという中高年も多いだろう。その状態を放置し続けると、いずれ自らの足で歩くこともままならない老後を迎える可能性も…。そうした老後のリスクを示すキーワード「ロコモティブシンドローム」が注目を集めているという。(清談社 真島加代)

寝たきり生活のきっかけは
運動器の衰えが最多

寝たきり生活は運動器の衰えが大きなきっかけになります。
若い頃にスポーツをしていたから大丈夫、という理屈は通用しない。元アスリートで引退後に運動を意識的にしていなかった人がロコモになってしまうケースもあるのだ Photo:PIXTA

 自分の足で行きたい場所に行く――、多くの人がこの事実を当然のこととして生活をしている。しかし、50代を迎えたあたりから「膝が痛い」「尻もちをついただけで骨折をしてしまった」などの理由から、少しずつ動くことがおっくうになっていくという。

「こうした不調には骨や関節、筋肉、神経を指す器官『運動器』が深く関わっています。加齢をはじめとする、さまざまな要因によって運動器に障害を抱え、立つ、歩くという動作ができなくなった状態を『ロコモティブシンドローム(以下、ロコモ)』と呼びます」

 そう話すのは「ロコモチャレンジ! 推進協議会」推進委員長を務める、NTT東日本関東病院整形外科部長の大江隆史医師。大江医師は、ロコモの状態が進行すると「要支援」「要介護」になり、最終的には”寝たきり”になってしまう、と話す。

「多くの人は、高齢者が寝たきりになる理由として、脳血管の障害や認知症などをイメージすると思います。しかし『平成28年厚生労働省国民生活基礎調査』では、運動器の障害をきっかけにして、要支援、要介護になったという高齢者が最も多いという結果が出ました。つまり、高齢者は徐々に動けなくなり、最後には寝たきりになってしまうという人が最も多いということです」

複数の運動器疾患が
ロコモを引き起こす

 歩行や自立は、骨と関節と筋肉、神経の「運動器」がすべて関わっている動作なので、運動器のうち、どれか1つでも欠けるだけで、日常生活にも支障が出る。

「若者が動けなくなる原因は、交通事故による骨折や病気など、理由が1つに絞られます。しかし、高齢者の場合は複数の運動器の疾患が連鎖・複合することで、体が動かしにくい状態になっていくのが特徴です」

 たとえば、加齢とともに筋力が衰える「サルコペニア」を発症している高齢者が、少しつまずいて転んだだけで骨を折った場合、ただの骨折ではない、と大江医師は話す。

「サルコペニアは筋肉の衰え、骨折は骨粗しょう症によって骨がもろくなっていることが原因の、骨脆弱性骨折の可能性が高いのです。このように、高齢者が動けなくなるきっかけは1つではないため、その原因を突き止める必要があります。ロコモが進めば『立つ』『歩く』の動作ができなくなるだけでなく、生活に刺激がなくなり、脳機能が衰えたり、内臓にも問題が生じたりするなど、全身に悪い影響が現れてしまいます」

 移動機能だけでなく、老後の生活の質全般に関わるロコモ。「年を取ったのだから、多少の動きづらさは仕方がない」では済まされないのだ。

中高年にこそ試してほしい!
「ロコモ度テスト」にチャレンジ

「骨粗しょう症」や、筋肉が衰える「サルコペニア」と聞いて、遠い未来の話だと感じる人もいるかもしれない。しかし、大江医師は、自身が「寝たきり予備軍」であることに気がついていない中高年も少なくない、と指摘する。

「20代、30代の頃にアスリートとして活躍していた人が中高年、高齢者になったときに、運動を意識的にしていなかったために『ロコモ』になっているケースもあります。ロコモは若い頃の運動経験よりも、今現在の運動量や食生活が大きく関係しているのです」

 かつては活動的だったとしても、今運動をしていなければ、ロコモの入り口に立っていると考えたほうがよさそうだ。自身の衰えに気がついていない人は「まずは自分の『ロコモ度』を知る必要がある」と、大江医師。そこで日本整形外科学会が提唱している、ロコモ度テストについても教えてもらった。

立ち上がりテスト
片脚または両脚で決まった高さから立ち上がれるかどうかを判定し、下肢筋力を測るテスト。

<片脚の場合>
1:高さ40cmほどの台(イスなど)に浅く腰掛ける。
2:腕を胸の前で交差させて少し前かがみになり、片脚を軽く上げる。このとき、上げた膝が曲がっていてもOK。
3:2の状態から、反動をつけずに立ち上がり、3秒間片脚立ちの状態をキープする。この動作を右脚と左脚、それぞれに行う。

「左右どちらか一方の片脚で、40cmの高さから立ち上がれない場合は『ロコモ度1』。移動機能の低下が始まっている状態です。筋力やバランス力が落ちている可能性があります」

「ロコモ度2」の人はすでに
運動器疾患を発症しているかも

<両脚の場合>
1:高さ20cmほどの台(階段1段程度の高さ)に浅く腰掛ける。
2:腕を胸の前で交差させて、少し前かがみになる。
3:反動をつけずに両脚で立ち上がり、3秒間両脚立ちの状態をキープする。

「40cmの片脚立ちができなかった場合には、両脚立ちテストを行います。20cmの高さから両脚で立ち上がれなければ『ロコモ度2』です。ロコモ度1に比べて、移動機能の低下が進んでおり、このまま放置すれば、歩く、立つという動作ができなくなるリスクが非常に高いです」

 特に「ロコモ度2」の人は、変形性関節症による膝の痛みなどの「運動器疾患」を発症している可能性があるので、整形外科専門医の受診をおすすめする。また、ロコモティブシンドローム予防啓発公式サイト「ロコモチャレンジ!」内には、25問の質問によって、さらに詳しくロコモ度を判定する「ロコモ25」が公開されているので、心配な人は一度チェックしてみよう。

「ロコモ度テスト」で、自分の衰えを思い知らされたとしても、嘆くことはない。大江医師は「ロコモは日々の取り組みで改善できる」と、強く主張する。

「日常でできるロコモ対策は『少し頑張って体を動かす』ことです。私が実践しているのは、3階まではエレベーターを使わず階段を上ること。そのほか、スクワットや、大股で歩いて歩行速度を速めたウォーキングをすると筋力を維持することができます。何より、無理のない程度の運動を長い間続けることが重要なんです」

日常的に体を動かすクセをつける
食事は骨と筋肉の強化を意識せよ

自身の下半身を強化するスクワット。大江先生によれば「ちょっとツラさを感じるくらいの運動」が、ロコモ対策につながるそう(『ロコモチャレンジ!』HPより)

 多くのトイレが洋式になり、階段がつらければエレベーターを利用でき、自分の足をあまり使わずとも生活ができる現代。いわゆる「体の甘やかし」が、ロコモを引き起こすならば、日常的に体を動かす習慣を中高年のうちから身に付けるのが理想だという。

「ロコモの予防・改善には、食事も重要なポイントです。骨を強化する場合、カルシウムの摂取だけでなく、カルシウムの吸収率を高めるビタミンD(サケ、きのこ類に多く含まれる)を一緒に取りましょう。また筋肉の強化には、タンパク質が不可欠。タンパク質を多く含む肉や魚、卵、大豆食品を取りつつ、タンパク質の分解、合成を促すビタミンB6も一緒に食べるのが理想です」

 ビタミンB6は、バナナ、キウイに多く含まれているので、デザートとして食べてもOK。運動と食事、双方のバランスを整えることがロコモ対策につながるようだ。

 また、運動器疾患を発症している場合は、整形外科医への相談も視野に入れるべき、と大江医師はアドバイスする。

骨密度検査を早めに受けることも
ロコモ対策としては非常に有効

「運動器の疾患は、しっかり治療を受けることで回復が見込めるケースもあります。たとえば、骨粗しょう症の疑いがあれば、骨密度検査を受けることもロコモ対策のひとつ。検査の結果、骨密度が70%を下回っていれば、骨密度を上げる薬を飲むなどの治療を受けてロコモが改善されるケースも多いのです」

『1日2分で一生自分の足で歩ける! 相撲トレ』(著 大江隆史/SBクリエイティブ)

 骨密度の低下は、女性ならば閉経が近い45歳以降、男性は60代を境に低下していくため、早めの検査や治療が老後のカギを握っているという。運動器の老化対策は、早い年齢から行うに越したことはないのだ。

「超高齢社会の到来によって、健康寿命という言葉が注目を集めています。健康寿命とは、健康上の理由で活動が制限されていない状態で、日常生活を送れる期間のこと。しかし、健康寿命と実際に死を迎える平均寿命には、男性で8年、女性で12年の差があります。最後の約10年をいかにして健康的に過ごし、自分の足腰で生活するかが、老後の生活の質を高めるカギとなっているのです」

 寝たきり予備軍の中高年であっても、適切な対策を行えば、未来は大きく変わってくる。早い段階で「ロコモに気づくこと」が、肝要なのだ。


※本記事はダイヤモンド・オンラインからの転載です。転載元はこちら

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