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本麒麟を討て!“ビールに近い”新ジャンル戦争に「消耗戦」の懸念

文● 週刊ダイヤモンド編集部,重石岳史,鈴木洋子(ダイヤモンド・オンライン

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サントリーBWSの鳥井信宏社長(写真左)
サントリーBWSの鳥井信宏社長(写真左)は今上期にも「新ジャンルでトップブランドの地位を握る」と意気込む Photo by Yoko Suzuki

大手ビール4社の2019年の事業方針が出そろった。各社に共通するのは、ビールより安い新ジャンル商品への注力だ。10月の消費増税への対応策だが、ビールと遜色がない味わいを追求する新ジャンルの強化は、ビール類市場全体の縮小を加速させかねないリスクをはらむ。
(「週刊ダイヤモンド」編集部 重石岳史、鈴木洋子)

「新ジャンルでもいずれナンバーワンを取る」――。アサヒビールの平野伸一社長は昨年11月の本誌インタビューで、新ジャンルにおける“奪首”を誓った。

アサヒ極上〈キレ味〉
アサヒビールが1月29日に全国発売する「アサヒ極上〈キレ味〉」

 新ジャンルとは、麦芽以外の原料を使用したり、発泡酒に別のアルコール飲料を混ぜたりしたもので、ビールよりも税率が低く低価格のため、市場が広がっている。

 ビール、発泡酒、新ジャンルというビール類の3分野において、アサヒは旗艦ブランドの「スーパードライ」でビール市場の首位を堅持する。だが新ジャンルの「クリアアサヒ」は、キリンビールの「のどごし」、サントリービールの「金麦」の後塵を拝す。

 奪首宣言を有言実行すべく、アサヒが年初の事業方針説明会で発表した新ジャンルの新商品が、「アサヒ極上〈キレ味〉」だ。

 平野社長が「ビールの味わいに近い“ニアビール”だ」と自信を示す通り、その味はスーパードライに酷似する。新ジャンル主飲者に3割強存在する「キレ・刺激」嗜好に対応するため、アサヒ独自の高発酵醸造技術をつぎ込んだ。

 アサヒの念頭にはキリンが昨年発売した「本麒麟」のヒットがある。本麒麟は、低価格ながらビールに近い味わいが受け入れられ、過去10年間に発売したキリンの新商品の中でナンバーワンの売り上げを記録。キリンは今年、あえて新商品を投入せず、本麒麟など「主力ブランドへの集中投資」(布施孝之社長)に専念する構えだ。

 新ジャンルで今年、“史上最大の攻勢”を仕掛けるのがサントリーだ。2月に「金麦〈ゴールド・ラガー〉」を発売し、翌月には金麦をフルリニューアル、4月には「マグナムドライ〈本辛口〉」を投入する。今年上期に過去最大量の広告を打ち、波状攻撃を展開する。サッポロビールもやはり本格志向の「サッポロ本格辛口」を4月に発売し、巻き返しを図る。

消費増税見据え
生き残り懸けた新ジャンル“乱打戦”

 上図で示したように、サッポロを除く3社は新ジャンルを大きく伸ばす計画を立てている。

 その背景にあるのが、10月に控える消費増税だ。ビール類は軽減税率の対象から外れ、店頭価格が上がる。節約志向の高まりから、安価な新ジャンルの需要が一層高まるという読みだ。

キリンビールの布施孝之社長
「本麒麟」のヒットで本格志向の新ジャンル市場を開拓したキリンビールの布施孝之社長 Photo by Y.S.

 その際の差別化要素となるのが、「本格」や「キレ」といったビールの特徴にいかに近づけるかということだ。そのためには莫大な開発投資が欠かせない。キリンのある幹部は「本麒麟の成功は、主力ののどごしが販売減になることを覚悟し、本気で投資を行ったことにある」と明かす。

 足元でビール類市場は14年連続で縮小し、今年の全体需要も2%程度落ち込む見通しだ。減少するパイの奪い合いが本格化する中、主戦場の新ジャンルで勝てなければ企業として生き残れない。

 まさに生死を懸けた“乱打戦”となる様相の新ジャンル市場だが、その先に待ち受けるのはおそらく、誰も望んでいない業界の苦境だ。

サッポロ本格辛口
サッポロビールが4月2日に発売する「サッポロ本格辛口」

 新ジャンルはあくまで“ビール風”の発泡性アルコール飲料であり、ビールではない。サッポロの髙島英也社長は「新ジャンル市場でしっかり戦いたい」としながらも、「ビールを伸ばさずしてサッポロビールの存在意義はない」と強調する。それは経営維持のために新ジャンルの安売り競争に参戦せざるを得ない業界共通のジレンマの表れでもあろう。

 だが、安価でかつビールと変わらない味の新ジャンル商品が大量に出回れば、わざわざ高価なビールを手に取る必然性はなくなる。各社は無論、飲み応えやきめ細かい泡などビール独自の価値訴求も忘れてはいないが、新ジャンルに流れた需要がビールに回帰するかは不透明だ。それを決めるのは、あくまで消費者である。

 新ジャンルは2020年以降、段階的に税額が引き上げられ、ブランドの淘汰が予想される。一方で税額が下がるビールは追い風となるはずだが、各社が開発にしのぎを削る“ニアビール”の存在は、ビール市場のさらなる縮小を招きかねない。


※本記事はダイヤモンド・オンラインからの転載です。転載元はこちら

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