このページの本文へ

大人気「健康増進型保険」の割引に飛びついてはいけない理由

文● 島野美穂(ダイヤモンド・オンライン

  • この記事をはてなブックマークに追加
  • 本文印刷

生命保険各社がこぞって売り出している「健康増進型」の生命保険。歩いたぶんだけ保険料が安くなる、健康診断書で規定の数値をクリアすると保険料が割り引かれるなど、従来の保険に加入者の健康維持を促すための仕組みが掛け合わさっているのが特徴だ。しかし、前向きなイメージに誘われて安易に加入するのは危険だという。保険コンサルタントの後田亨氏に聞いた。(清談社 島野美穂)

「健康で長生き」願望に
マッチした商品として人気に  

「健康増進型」生命保険のブームですが、冷静に考える必要があります。
「健康増進型」というと新しい保険ジャンルのようだが、実態はこれまでの「死亡保険」や「医療保険」と変わらない。冷静に見極める目を持つべきだ Photo:PIXTA

 住友生命、第一生命、東京海上日動あんしん生命など、大手の保険会社から個性的な健康増進型保険が次々に発売されている。この背景には、日本人の長寿化が関係していると後田亨氏は言う。

「『長生きするなら健康でいたい』という人々の願望を意識した保険だと思います。今までの保険は、“もしものとき”や“万一に備えて”というのが一般的な考え方でしたが、健康増進型保険は、何かあったときだけでなく、日常から支えてくれるようなイメージを持てそうです」(後田氏、以下同)

 一方で、こうした新基軸の保険商品を作らなければならなかったのには、「新規契約の動向が思わしくないことも一因としてあるのではないか」と後田氏は言う。

 というのも、新規契約件数は医療保険および終身保険の増加を受けて近年増加傾向にあったのだが、低金利環境が継続した結果、2017年の4月に貯蓄性商品の保険料が大幅に値上がりした。その影響か、2016年、17年と2年連続で新規契約件数は減少した。

 つまり、健康増進型保険が増加した背景には、新たに売れる商品を作らなければならないという、保険会社側の切実な事情があったと推察される。

保険会社の演出を除けば
中身はただの保険商品

 ユニークな健康増進型の保険だが、その内容や仕組みは保険会社によって異なる。

 住友生命の『Vitality(バイタリティ)』は、加入者の健康への取り組みをポイント化し、ウェアラブル端末やスマートフォンを使って管理する。累計ポイントに応じた年間の保険料割引や、提携のパートナー企業が割引価格で提供するサービスを受けられるなど、魅力的な特典もある。

 また、損保ジャパン日本興亜ひまわり生命保険の『リンククロス 自分と家族のお守り』は、契約後所定の期間に、健康状態などがある基準まで改善された場合、保険料が安くなるという。

 共通するのは、健康に関する一定の基準をクリアすることで、保険料が割り引かれる、あるいは払い戻されるという点。加入者の健康状態が良くなる分、保険会社が支払う保険金額が少なくなるため、保険料を割り引くことが可能というのが保険会社の説明だ。

 自分の健康を維持することで保険料が安くなるというロジックは、一見加入者にとってトクなようにも見える。しかし、後田氏は「保険を検討する際に、健康増進型であるかどうかは二の次」だと忠告する。

「そもそも、その保険が自分にとって本当に必要なのかどうかと自問してみることです。たとえば、保険に明るい保険会社の人たちは、医療保険には入りたがりません。健康保険の『高額療養費制度』で医療費の個人負担には上限がありますし、医療保険からの給付金額はさほど高額にならない、と見ているからです。したがって、割引や特典を語るまでもないわけです」

 前述した2つの保険を例に上げると、『Vitality(バイタリティ)』は医療保険で、『リンククロス』は死亡保険。健康意識を促進させるような演出がプラスされているだけであって、要するにこれまでの保険と変わらないのだ。

「自立していない子どもがいる世帯主が、一定期間、死亡保障を割引料金で確保できるようなケースに限って利用を考えてみる。その程度でいいと思います」

費用対効果を検証する
試算方法はない?

 健康増進型保険に加入したいと思う人にとって、デメリットはないのだろうか。

「保障内容により保険料が異なるのはもちろん、さまざまな判定基準で保険料の変動も見込まれます。さらに特典の違いも加わると、商品価値の評価・比較検討はとても難しくなります」(後田氏)

 各社の保険の比較などが難しい場合、一般の消費者はどうしたらいいのだろうか。

「実は、比べにくい保険は検討しなくて構わないと思います。『商品価値の評価が難しい保険は誰のためにあるのか?』と考えてみてほしいのです。たとえば、営業担当者や代理店に支払われる手数料など『契約に要するコスト』は、商品の評価をするうえで重要な情報だと思いますが、明らかにされていません。常識で考えて『利用料がわからないサービス』は怪しいでしょう」(後田氏)

 加入者のメリットがいまひとつわかりにくい一方で、保険会社にとってはわかりやすいメリットがある。健康増進という前向きなテーマを営業現場で語れること、加入後も健康状態の確認等で、顧客と継続的に接点を持ちやすいと思われることだ。

 さらに、比較が難しい保険では、保険会社が手数料を高く設定できる余地が増えるとも考えられる。

「『万が一の時にX万円』といったシンプルな保険と違って、どの保険が良心的な価格設定になっているのかわかりにくい。すると、値下げ競争なども避けられます。保険会社にとっては、複数の保障機能や付帯サービスがあることは好都合な面があるのです」

どんな保険であろうとも
選ぶポイントは3つだけ!

 とはいえ、健康を促すという点は、考慮すべきメリットとして認められないだろうか?

「たしかに、『せっかく保険料を払うのだから、健康増進活動を継続していこう』という動機づけになる人もいるかもしれません。ただ、ジムに入会したはいいけど通ってない、通販で健康器具を買ったけど数回使っただけという経験がある人もいるでしょう。多額のお金を払うことが、モチベーションの持続を決定づけるかどうか、そのあたりは個人差も大きいのではないでしょうか」

 なお、割引率でいうと、職場の団体保険などは一般個人向けの30~50%引きも珍しくない。どんなに魅力的に見える新商品が出ようとも、保険選びの鉄則は、「わかりやすく、シンプル、そして掛け捨てであること」。これだけなのだ。


※本記事はダイヤモンド・オンラインからの転載です。転載元はこちら

カテゴリートップへ

最新記事
最新記事

ASCII.jp ビジネスヘッドライン

アスキー・ビジネスセレクション

QDレーザー販促企画バナー

ピックアップ