このページの本文へ

データの悪用ではないか:

順天堂大医学部 女性減点のいい加減な理由

2018年12月13日 16時00分更新

文● 盛田 諒(Ryo Morita)

  • この記事をはてなブックマークに追加
  • 本文印刷

●データは減点の根拠にできない

 27年前の論文は面接試験の点数を調整する根拠にできるのか。12日、論文を書いたローレンス・コーン教授に直接連絡をとってたしかめたところ、

 「論文は『心理的成熟度』における性差を調査したものです。『コミュニケーション』や話術の性差について調べたものではありません。また、心理的成熟における性差に関する論文の知見と、入学試験に合格するための最低点を上げるという決定の間に、関連性は見られません」

 として、論文と点数調整のつながりに疑問を抱いていました。

 また、論文で言語能力の性差に関するデータとして言及されているのは、1988年の統計解析データ(メタアナリシス)です。当時データ解析を担当した研究者の1人は、ウィスコンシン大学のジャネット・シブリー・ハイド教授でした。

 ジャネット・シブリー・ハイド教授にも連絡をとり、同じ質問を投げかけたところ、

 「女性受験生の0.5点減点は科学的なデータのひどい悪用です。性差によるコミュニケーション能力の違いは小さく、教育方針に意味をもたせるには小さすぎるものです。それに、女性1人1人のコミュニケーション能力には大きなばらつきがあります。なぜ女性全員を一律に減点できるんですか?」

 と、大学の決定には批判的でした。

 また、ジャネット・シブリー・ハイド教授に話を聞くにあたり、話をつないでいただいた、アメリカ心理学会元会長のダイアン・F・ハルパーンさんに事情を説明したところ、

 「(性差を理由に減点したら)米国では違法になりえますよ。どんな評価でも(統計調査における)グループレベルのわずかな違いから女性を減点することなんてできません。それに、コミュニケーション能力が高い学生を求めているのに最高得点の学生にハンデを負わせるなんて意味不明です。まだ続けることはできますが、おわかりのとおり、こんな形で採点に使われることには大反対です」

 と、やはり厳しい指摘がありました。

カテゴリートップへ

注目ニュース

ASCII倶楽部

プレミアムPC試用レポート

ピックアップ

ASCII.jp RSS2.0 配信中

ASCII.jpメール デジタルMac/iPodマガジン