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欧州の比較ショッピング事業者、Google が違法行為を続けていると批判

2018年12月12日 00時15分更新

記事提供:SEMリサーチ

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Google ショッピング検索が EU競争法に違反しているとして欧州独禁当局・欧州委員会(EC)が同社に対し24億2,000万ユーロ(当時のレートで約3,000億円)の罰金を科してから1年以上が経過した。ECの競争政策担当・マルグレーテ・ベステアー委員(Margrethe Vestager)氏は10月、Google が提案したオンラインショッピング領域において競争を促すための施策が実を結ぼうとしていると発言したが、ライバルの比較ショッピング事業者は依然として納得していないどころか、状況がむしろ悪化しているとして、ベステアー委員に宛てた公開書簡で Google を厳しく批判している。

公開書簡を送ったのは欧州で比較ショッピング事業を展開する次の14社だ。Acheter-moins-cher.com、Comparado (Preis.de)、Foundem、Idealo、KuantoKusta、LionsHome、PriceRunner、PriceSpy、RedBrain.com、Solute (Billiger.de)、StyleLounge、Vergelijk (Compare Group)、Visual Meta (Ladenzeile / ShopAlike)、Yroo。以下、本文で「14社」「ライバルの比較ショッピング事業者」などは連名で書簡を送ったこの14社を指す。


本記事では、Google が欧州で実施したショッピング検索の変更について解説したうえで、競合比較ショッピング事業者14社の主張を紹介していく。

(関連記事:GoogleがEU競争法に違反、制裁金3,000億円支払い命じる 欧州委員会


EUで導入されたCSSシステム

Google は 欧州委員会の裁定に従い、同サービスに関係するすべての事業者に公平な競争環境を提供するため、いくつかの変更を行った※。同社のショッピング広告(※ ショッピング広告を取り扱う部門)を単独の事業部門として独立させた。また、ショッピング広告(旧商品リスト広告=PLA)枠にオークションベースのシステムを導入し、Googleショッピング部門やライバルの比較ショッピング事業者は入札により同枠に広告を表示することが可能となった。

※ 上記変更はいずれも EU域内のみ。それ以外の国・地域は従来通りの仕組み

CSS の仕組みを図で表すと次のようになる。

EUで導入された CSS の仕組み Googleショッピング広告
About advertising with Comparison Shopping Services に掲載された図版をもとに作成。広告掲載希望者は、CSS各社(図のA, B, ... Google Shopping)を通じて Google検索結果のショッピング枠に広告を出稿する。複数の CSS と契約して、それぞれに商品データを送信して広告を出稿することもできる。

欧州経済領域(EEA)の一部とスイス市場において、ショッピング広告の掲載を希望するすべての販売業者は、必ずComparison Shopping Services(以下 CSS)を通さなければならない。ライバルの比較ショッピング事業者も、独立部門となった Googleショッピングも、この CSS の1社として扱われ、互いに広告枠を(契約した販売業者の代理として)オークションで争うことになる。このように、ショッピング広告枠を等しくすべての CSS に開放して、(Googleショッピング部門も、他社も平等に)オークションで争う体裁を整えたことで、Google は公平な競争環境を提供したことにしている。


ライバル事業者「結局、Google が大半の利益を奪っている」と非難

この新システム導入後のショッピング広告の変化について、米Searchmetrics が調査結果を12月に発表している。同社によると、2018年1月時点で英国における検索結果にライバルCSSの掲載割合が1%未満だったのが、同年12月には32%まで増加。同じくドイツでは2.0%から33%と競合CSSの表示割合は大幅に高まっている。

にも関わらず、ECに宛てた公開書簡の中で14の比較ショッピング事業者は「Google もオークションに参加しなければならなくなった点を除き、何も変わっていない」「Google が利益の大半を奪っている」「ショッピング広告は比較ショッピングサイトを経由せず、検索利用者を直接販売業者に誘導するため、(比較ショッピングサイトの)価値を提示できない」といった主張をしており、「検索クエリとの関連性ではなくオークションベースで掲載位置が決まる現行システムを維持する限り、利益を得るのは Google だけで、その他すべての事業者は損をするだけだ」と EU競争当局に訴えている。

While rivals are compelled to bid away the vast majority of their profits, Google Shopping’s bids cost it nothing—its bids are just meaningless internal accounting, paid from one Google pocket into another. [Open Letter to Commissioner Vestager from 14 European CSSs]

なぜこのような状況になっているのか。その理由は、Google が提供する CSS Partners 制度と、期間限定で提供されているインセンティブプログラムが関係している。


CSSパートナープログラムと SpendMatchインセンティブが歪んだ競争環境を生み出す

Google は「すべての比較ショッピング事業者が”平等に競争”すること、この機会をよく知らない業者にも認識してもらう」ことを目的に CSS Partners プログラムを提供している。これは Google 認定 CSSパートナーとして、販売業者の広告運用するためのプログラムで、パートナー認定されると CSSパートナーバッジの掲載許可や、運用のためのトレーニングや情報を受けることができる。CSSパートナーは2018年12月10日時点で132社が認定されている。

Google はこの CSS の利用を促すためにパートナー向けにインセンティブプログラム(SpendMatch Incentive)を提供しており、一定の広告掲載条件をクリアしたパートナーには広告費用の一部がキャッシュバックされる仕組みになっている。これが更にオークションシステムへの参加を促している。現在提供されているインセンティブプログラムは2018年12月31日までだが、来年1月1日からまた新たなプログラムが提供される可能性がある。

旧来の比較ショッピング事業者からすると、この状況は到底受け入れることができない。第1に、Googleプログラムを通じて参加している CSSパートナーは、Googleショッピング掲載への入札を販売業者にの代理として行うことを主体としており、本来の”比較ショッピングサイト運営者”ではない。実際、CSSパートナーは一応公式サイトを持っているが、単に広告掲載している商品のリストを設置しているだけで、比較ショッピングサイトが通常用意するであろう価格一覧やレビュー、製品詳細などの情報を一切持っていない(例 shopping24.de の商品一覧ページ)。

彼ら(14社)からすれば、CSSパートナーは偽物の比較サイトであり、その偽物たちとショッピング広告掲載枠を争わなければならないため利益がほとんど出ないし、CSSパートナーはキャッシュバックを受けるのだから Google の内輪でお金を回しているだけで不公平だというわけだ。

SpendMatch Incentive はその14社にも適用されるので、努力して顧客を集めてくればいいではないかと考えるかもしれない。しかし、元来の比較ショッピングサービス事業者は自社の比較サイトに広告を掲載してもらうのがビジネスモデルであり、CSSパートナーのそれとは異なるため、顧客獲得が難しいか、利益を出せないという事情があるようだ。

欧州比較ショッピングサービスがMargrethe Vestager氏に宛てた公開書簡 Open Letter to Commissioner Vestager from 14 European CSSs
http://www.searchneutrality.org/google/comparison-shopping-services-open-letter-to-commissioner-vestager

CSS Partner - Grow your business with Google’s CSS Partner program
https://comparisonshoppingpartners.withgoogle.com/

About advertising with Comparison Shopping Services
https://support.google.com/merchants/answer/7558973?hl=en

CSS Partner 一覧
https://comparisonshoppingpartners.withgoogle.com/find_a_partner/?page=0&seed=7477022

Let’s partner up - Become a CSS Partner
https://comparisonshoppingpartners.withgoogle.com/become_a_partner/

Searchmetrics Google Shopping Study Reveals “Fake” Competition for Ads [Searchmetrics]
https://www.realwire.com/releases/Searchmetrics-Google-Shopping-Study-Reveals-Fake-Competition-for-Ads

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