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メディアが煽る「女の敵は女」企画が人気を呼ぶ理由

2018年12月06日 06時00分更新

文● 沼澤典史(ダイヤモンド・オンライン

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近年、日本のテレビ番組や雑誌では、“女が女をけなす”という趣旨の企画をよく目にする。しかし、不思議とこれの男性版を見かけることは少ない。なぜ「女の敵は女」企画だけがウケるのか。その理由についてカウンセリングサービス所属の心理カウンセラー・沼田みえ子氏に聞いた。(清談社 沼澤典史)

女同士の醜い争いは
高視聴率を連発

女同士の醜い争いは、なぜ視聴率を獲得できるのでしょうか?
女同士が罵り合う――そんなテレビ企画を好んで見る人が多いのはなぜか?男性、女性にそれぞれ、異なる心理的理由があるようです(写真はイメージです)

 セクシュアルハラスメントを告発する「#MeToo」運動、東京医科大による女子差別入試問題をはじめ、女性に対するセンシティブな問題が世間をにぎわせている。

 そんな時流とは逆行するかたちで、大手メディアでは、女性をいわば“見せ物”として扱うショーが繰り広げられている。その企画趣旨は、女性同士のマウンティングやけなし合い、ネガティブなランキング付けを視聴者・読者が楽しむというシンプルなものだ。

 例えば、2018年9月に行われた「週刊文春」恒例の「女が嫌いな女ランキング」(13回目)では、読者から2000超の回答が集まった。その際、SMAP分裂騒動のキーマンである木村拓哉の妻・工藤静香が堂々のトップを飾り、2位は松居一代、3位は嵐・二宮との色恋沙汰が報道された元フリーアナウンサー伊藤綾子が名を連ねた。例年の傾向としては、不倫や暴言で「悪目立ち」した女性が多い印象だ。

 テレビでも同様の企画は後を絶たない。女性芸能人たちが、「SNSでリア充アピールする女」「美人のくせに『自称おっさん』の女」など、嫌いなタイプの同性にケチを付ける「女が女に怒る夜」(日本テレビ系)。ゲストはイケメン俳優が多く、「こんなののしり合いを経験するのは初めてです」と、珍しいモノを見たような反応をするのがだいたいのパターンだ。

 あるいは、女性タレント10人が、お題に対して自分や出演者の順位を予想し、お互いの欠点や気に入らないところを言い合う「格付けしあう女たち」(テレビ朝日系「金曜★ロンドンハーツ」のコーナー)。99年の放送開始以来、現在まで100回近く行われ、18.3%という高視聴率を記録したこともある名物企画だ。

感情を軸に置く企画は
女性だから成立する?

 心理カウンセラーの沼田みえこ氏によると、こうした「女の敵は女」企画は、男女間で感情の認識や表現方法に違いがあるため成立しているという。

「心理学的に、男性と女性で感情の認識や表現はまったく異なります。特に日本では、男性は“泣くな、動じるな”などと幼い頃から言われ続け、感情を出すことがタブーとされています。そのように育った多くの男性は、感情を表現しないことによって『動じない冷静さ』という美学を体現しようとするのです。そのため、自分の感情が把握しづらくなり、感情表現も苦手な傾向にあります」

 このような文化的な環境のせいもあり、男性は自分の感情をあらわにする以前に理解すらできていない。したがって、男性にとってのコミュニケーションとは、あくまで“論理的”であることが大前提なのだ。

「一方、女性は“感情的”にコミュニケーションをとります。というのも、女性にとってコミュニケーションの軸は感情だからです。だからこそ女性は、自分の感情を把握しやすく、感情表現が男性よりも豊かといわれています」

 心理学的に見れば、女性にとって感情をあらわにすることは、普通のこと。老若問わず女性は、井戸端会議に興じ、夫や友人の愚痴に花を咲かせることもしばしばあるが、それもいわば“感情の共有”に近いものだろう。

「男性よりも女性の方が、怒りやねたみなどの感情に素直で、言葉にしやすいという特徴があります。もちろん男性にもそういう感情はありますが、男性は自己の中に抑制し、女性は発散するのです。女性のネガティブな感情は表に見える分、『女の敵は女』という構図が成立しやすいのかもしれません」

女性は憂さ晴らし
男性は高みの見物

「女の敵は女」企画が、視聴者や読者にウケる“理由”にも男女差がある。

「女性の場合は、同企画を見ることによって、“自分以外でも怒りの感情を覚えている人がいて良かった”という安心感と連帯感を得ることができます。一方で、男性と同じように、当然、女性も怒りなどのネガティブな感情が湧き上がってきたときには、自己嫌悪にさいなまれるものです。しかし、同企画を見ているときの女性は、憤慨している女性出演者に、自分が抱いている嫌悪感とストレスを転嫁できるため、楽な気持ちになる傾向もあるようです」

 つまり、女性にとって同性同士のののしり合いを見ることは、一種のガス抜きの作用もあるのだ。

 一方、男性は、自分たちが普段抑圧している感情をむき出しにする女性に対しては、一種の“エンターテインメント”として見ているようだ。

「男性にしてみれば、テレビの中で女性たちが言い合っている姿は、“対岸の火事”であり、別世界の出来事です。その感情表現に新鮮さを感じ、完全なるエンタメとして見ているのだと思います。同じ企画で男性出演者のバージョンがほとんどないのは、男性の感情の性質上、企画が成り立たないからでしょうね」

 感情表現が苦手な男性に対し、女性は豊かなため、いわば“テレビ(誌面)映え”するということだ。したがって、この手の企画はこれからも続いていくと沼田氏は予想する。

「感情の機微がわかりやすいので、これからもエンターテインメントとして成り立っていくでしょう。また、過剰な感情のぶつけ合いは日常生活では頻繁には起こらないので、一種の刺激物として視聴する層も一定数いるでしょうね。退屈な日常のスパイスとして不倫報道が続けられることと同じ構造です」

 制作側としても、女性タレントや素人を集めて、怒りエピソードなどを話すだけで成り立つため、コストが抑えられるという利点もある。手っ取り早く制作でき、視聴者男女の一定のニーズのもと、大外れしないという点では、“カタい”企画なのだろう。

 女性が女性をののしり、それを見た女性はストレス解消し、男性は対岸の火事としてほくそ笑む――。エンターテインメントの一形態ではあるものの、性をめぐる問題が“火薬庫”と化している現代においては、少々リスクの高い企画とはいえるのかもしれない。


※本記事はダイヤモンド・オンラインからの転載です。転載元はこちら

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