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仮想通貨流出のZaif、「SNS炎上後に立食パーティー延期」の顛末

2018年12月04日 06時00分更新

文● 週刊ダイヤモンド編集部,竹田幸平(ダイヤモンド・オンライン

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Photo:PIXTA

9月に70億円規模にのぼる仮想通貨の流出事件が起きたテックビューロの仮想通貨交換取引所「Zaif(ザイフ)」。フィスコグループは事業譲渡を受けた11月22日、盛大な立食パーティーを開く予定だったが、ツイッター上で批判が殺到したあげく、延期を決めた。事件間もない時期に華やかなイベントを開こうとする同社の姿勢に、“常識感覚”を疑う声が続出したのだ。(「週刊ダイヤモンド編集部」編集部 竹田幸平)

 フィスコグループが計画通り、テックビューロから仮想通貨交換事業「Zaif(ザイフ)」の譲渡を完了した11月22日に「新生Zaifの展望と仮想通貨、トークンエコノミーの未来を語る!」というタイトルで開かれるはずだったフィスコ主催の盛大な立食パーティーは結局、延期されることになった。

 Zaifといえば、9月に約70憶円にのぼる仮想通貨の流出事件が起こったばかり。45憶円にのぼる顧客資産の補償に向け、10月に金融支援の引受先としてフィスコ仮想通貨取引所への事業譲渡が発表された。これによって顧客補償には道筋をつけることができたとはいえ、ろくに顧客への説明もないまま事が運んだことに対して、利用者からは怒りの声が相次いでいた。

 そうして迎えた11月6日。フィスコはZaifの口座保有者(およそ73万口座)へ冒頭の立食パーティーの案内をメールで配信した。9日の朝10時までにアンケートに回答すれば応募ができ、応募多数の場合は抽選で参加者を決めるとした。また、イベント当日の会場は「都内近郊」とだけ記され、参加費は「無料」。仮想通貨に詳しい複数のゲストを迎えるとした上で、案内には次のような文が躍った。

「2018年11月22日。新たな歴史が幕を開ける。仮想通貨取引所Zaifとフィスコ仮想通貨取引所(FCCE)が手を取り合い、高みを目指す。ここまで支えてくださったお客さまに感謝の気持ちを直接お伝えしたい」

 だが、そんな“気持ち”も空回りしたかのように、ツイッター上では案内を受けた利用者らからすぐさま疑問の声が広がり、にわかに“炎上”する事態を招いた。

「事件間もない今、イベント開催しちゃう根性すごいですね…」
「え、今!?今リアルイベントやるの!?Zaif正気ですか!?」
「こんなの開いて大丈夫なの?主催者刺されるで…」

無神経さに疑問呈する投稿が殺到

 Zaif初のリアルイベントに「行きたい!行けるといいなぁ…」「楽しそうで良いね~(^-^;)」といった前向きな投稿もあった一方、上述のように事件が起こってからわずか2ヵ月ほどで盛大なイベントを開こうとする無神経さに疑問を呈する投稿が相次いだのだ。

 そして8日、フィスコは応募の締め切りである9日を待たずして、「リアルイベント開催延期のご案内」を出すに至った。その理由について、メールの文面では「極めてたくさんのお客さまにご応募をいただいたこと、そして『参加したいと思ったが直前だったので予定を合わせられない』というご意見を多数いただいております」などと釈明した。

 この延期理由に対しても、ネット上では懐疑的な声が殺到。ツイッターや掲示板などでは「相当苦情きたんだろな」「やってる場合かボケという意見多かったんだろうな」といった見方のほか、「パーティは完全に頭おかしくて笑える」「この期にパーチ―するとかいう頭のおかしな奴らだから、何しでかすかわからんよね」といった投稿が相次いだ。

 案内状には記載がなかったが、フィスコの担当者によると今回のパーティーについては事前に会場を押さえた上で、200人の定員を予定していた。これに対し、実際には7日昼前の段階で700人ほどの応募が集まった。会社としては「日程や定員に関する要望が多数集まったこともあり延期を決めた」としているが、ネット上では流出事件から間もない時期の開催に「批判が殺到したことでイベント中止に追い込まれたのでは」との憶測が広がった。

目立つ世間との“感覚”のズレ

 批判が集まったと類推できそうな根拠はある。主催側の開催趣旨の説明が都合よく“変転”したことだ。フィスコは延期の告知メールで、元々のイベントの趣旨について「これからのZaifの事業運営を少しでもお客様にご説明するとともに、直接お客様との交流より頂いたご意見をこれからのZaif事業運営に反映させていきたいとの思いがございました」としている。

 だが、当初の案内に記載されていた趣旨を見れば、「ZaifとFCCEが手を取り合うことを記念」して「パーティイベントを開催することを決定」したので「美味しい食事と交流を楽しみながら、仮想通貨が描く未来に想いを馳せてみませんか?」というお気楽なもの。開催案内と延期告知の両メールに記された趣旨の説明は随分とギャップがあり、批判を受けて軌道修正を図ったとみられても仕方がないのではないか。

 イベントを開くにしても、流出事件を経て事業譲渡を受けたフィスコが「顧客不安を緩和するため今後の運営方針を真摯に説明する」といった趣旨なら理解も得られそうなものだ。だが、当初からそのような説明だったわけではなかった上、流出をめぐる顧客の補償についても「すでに手続きがなされている」としてイベントで言及する予定はなかったという。

 こうした世間との“感覚のズレ”は、仮想通貨の扱いに腐心する金融庁にとっても耳の痛い話かもしれない。事業譲渡が完了したテックビューロは今後、解散に向けた手続きを行う予定だが、同社は金融庁が1年前の9月、「登録業者」としての認定を出していた存在でもある。今回のイベントの顛末からすると、そうして事業が引き継がれたフィスコでも、この先うまくハンドリングがなされていくか不安が募ると言わざるを得ない。

仮想通貨に吹き付ける寒風

 金融庁は登録業者や登録審査を受ける業者に対して「実効性のある経営管理体制」が築かれているのか、幅広い視点でチェックしているが、それができていれば今回のような事態は招かなかったのではないだろうか。

 フィスコ側はあくまでもイベントを「中止」ではなく「延期」したに過ぎない。次回の時期は未定だが、延期告知のメールでも「より公平な方法」で実現できるように「改めて企画させて頂く」としている。フィスコの担当者も「次回は都内だけでなく、もともとテックビューロの本社所在地でもある大阪でほぼ同時期に開催するなど、色々と展開の方法を考えていきたい」とやる気を見せる。

 ただ、SNS炎上を招いた今回のような事態を招いた後、再び「盛大なイベントを開きます」と仕切り直しても、利用者には丁寧な説明などを行わなければ受け入れてもらえないだろう。

 仮想通貨の相場に目を向ければ、イベント延期を決定後の日本時間11月16日、「ビットコインキャッシュ」のハードフォーク(仕様変更)が行われてから幅広い仮想通貨の相場が急落。足元ではやや底打ちの兆しも見せるものの、時価総額が最大であるビットコインの価格を見ても1年前の数分の一以下の水準に沈んでいる。

 仮想通貨の大元の技術であるブロックチェーン(分散型台帳)の有用性や将来性は誰もが一目置くところだが、開発者の分裂や規制強化への懸念など、最近の仮想通貨をめぐっては明るい材料に乏しいのが現状だ。今回のイベント延期を巡る騒動は、そんな寒風が吹き付ける業界の雰囲気を象徴するような出来事に映る。


※本記事はダイヤモンド・オンラインからの転載です。転載元はこちら

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