このページの本文へ

前へ 1 2 3 次へ

自社開発プロセッサーの新インスタンスをはじめ新発表多数

進化するAWSのインフラがユーザーに選択肢を与える

2018年11月27日 23時00分更新

文● 大谷イビサ/TECH.ASCII.jp

  • この記事をはてなブックマークに追加
  • 本文印刷

 2018年11月26日、Amazon Web Services(AWS)は年次イベントの「AWS re:Invent 2018」をラスベガスで開催した。恒例となったMonday Night Liveでは、インスタンスやネットワークにフォーカスされたさまざまな新発表が行なわれ、初の自社開発プロセッサーを採用した「Amazon EC2 A1インスタンス」もアナウンスされた。

生バンドのライブで始まったMonday Night Live

ニューノーマルになったからこそAZの定義を疑え

 AWS re:Inventは世界各国で行なわれるAWSのイベントの中でも、最大の規模を誇るフラグシップイベント。ここ数年、「Night Live」と呼ばれるセッションでインフラ系の技術解説が行なわれるのだが、今年は例年になく数多くのサービスが新発表された。

 Monday Night Liveに登壇したAWS グローバルインフラ統括のピーター・デサントス氏は、「昨年はビールがなかったが、今年は用意した」と第一声を上げ、まずはグローバルインフラの現状から説明をスタートさせた。

AWS グローバルインフラストラクチャー バイスプレジデント ピーター・デサントス氏

 現在、AWSのリージョンは19におよび、新たにバーレーン、ストックホルム(スウェーデン)、ケープタウン(南アフリカ)、ミラノ(イタリア)、香港の5つのリージョンが追加される予定となっている。これらのリージョンは、地理的に分散された複数のAZ(Availability Zone)から成り立っており、現在グローバルでは全部57のAZが用意されている。AZ自体も複数のデータセンターから構成されているため、高い可用性と耐障害性を実現している。「他のクラウドでは単一のデータセンターをリージョンと呼んだり、その一部をAZと呼んでいるが、われわれのAZには具体的な定義がある。ガートナーは高可用性を必要とするアプリケーションにAWSの利用を推奨している」とデサントス氏は語る。

 デサントス氏は、AZの定義と現状についてさらに説明を加える。最大のAZは14のデータセンターから構成されており、一部のデータセンターでは約30万台の物理サーバーを運用しているという。AZ同士は物理的にも離れており、大容量・低遅延なネットワークで接続されており、しかも冗長化されている。「最大のリージョンではAZ間を388本のユニークなファイバチャネルパスでつないでおり、4947Tbpsのキャパシティが提供されている」(デサントス氏)。

 また、低コスト化にも注力している。光ファイバによる伝送能力の向上には光波長多重が一般的に知られているが、両端に専用装置が必要になるため、どうしても高価になってしまう。そのため、AWSではケーブルコンジットに収納する光ファイバの芯線を物理的に増やすことで伝送能力を高めている。2016年は1つのコンジットに3456本の芯線を収めた例が披露されたが、現在では2倍となる6912本の芯線を収めたケーブルを導入しているという。

3456本から6912本により高密度化

 ここまでAZの構成や最新動向について説明してきたデサントス氏は、「AZはニューノーマル(新しい標準)になった。実際、多くのクラウド事業者は自らたちのサービスをゾーンという概念で話をしている。でも、真のAZを得られているという判断はどうすればいいだろうか?」と疑問を提示する。その上でデサントス氏は、AZの説明に「通常は」「たいていは」「ほとんどは」といったあいまいな表現を使うようなクラウド事業者は真のAZを提供しているのか疑うべきだと指摘した。

AWSのグローバルネットワークを活用する2つの新サービス

 リージョンとAZに続いてデサントス氏は、グローバルネットワークについて話を移す。現在、AWSはグローバルに150もの相互接続点(POP:Point of Interface)を提供しており、DirectConnectの接続点も89ポイントを用意している。これらのポイントを経由し、グローバルのAWSリージョンに接続できるという。

AWSのグローバルネットワーク

 デサントス氏は、AWSのグローバルネットワークについて「特定の目的にあわせて開発された最大のネットワーク」とアピールする。最近では、日米間をつなぐ「Jupiter」、香港・シンガポール・北米をつなぐ「Bay to Bay Express」など複数の海底ケーブルプロジェクトへの参画も発表し、大西洋、インド洋、アフリカなどへのネットワーク投資にも注力しているという。

 こうしたAWSのグローバルネットワークのユニークさを説明するため、デサントス氏はインターネットの概念図(出典:CAIDA)を披露。インターネットは競合する事業者間が協力しあうことで実現する分散型ネットワークとして今まで機能してきたが、接続先のプロバイダーの可視化が難しいため、輻輳や遅延という点で問題があると指摘した。「海底ケーブルが切れるといった事態が発生した場合、プロバイダーのルーターは近傍からさまざまな情報を得て、経路を再計算しなければならない。インターネットくらい巨大なネットワークの場合、大型ルーターでも数分かかり、輻輳も発生する。複数のプロバイダーが同じ経路を選んだ場合もやはり輻輳し、遅延につながってしまう」と説明した。

プロバイダー同士の相互接続で成り立つインターネット

 分散型のインターネットは信頼性も高く、コストも低廉だ。もちろん、遅延が発生しても多くのアプリケーションでは支障もない。しかし、音声・ビデオやゲーム、分散型のアプリケーションの通信など一部のアプリケーションはこうした遅延に敏感だ。その点、AWSのグローバルネットワークでは遅延やキャパシティ、利用率などさまざまなネットワーク属性に対して可視性を確保しており、障害時にでも同品質のネットワークに対してパケットを送り込む機能を備えているため、インターネットのデメリットを回避できるという。

 そして、こうしたAWSのグローバルネットワークで高い可用性とパフォーマンス向上を実現するのが、新サービスの「AWS Global Accelerator」になる。ユーザーのネットワークから最寄りのエッジを経由し、低遅延で高い可用性を誇るAWSのグローバルネットワークに接続。ユーザー自身がフォワーディングポリシーを設定することで、トラフィックを最適な形でエンドユーザーに送ることが可能になるという。

AWS Global Accerelator

 また、同じく新発表された「AWS Transit Gateway」では、AWS上のVPC、ユーザーのデータセンター、リモートオフィスなどを接続し、ハブ&スポーク型のネットワークトポロジーを構成するためのサービスになる。既存のCloudWatchやVPC FlowLogなどによるモニタリングや可視化も利用できるほか、コンプライアンスやセキュリティも確保。「すべてVPN接続でVPCへのトラフィックを分散することができる。オンデマンドでの帯域確保をオンデマンドでも、AWSクラウドでも実現する」とデサントス氏は語る。

前へ 1 2 3 次へ

ASCII.jp特設サイト

クラウド連載/すっきりわかった仮想化技術

ピックアップ