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中学生、kintoneとコミュニティの懐の深さを知る

kintone Café Japan 2018に親子で参戦してきた

2018年11月22日 11時00分更新

文● 重森大 写真●金春利幸

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 Cybozu Days 2018から1日空けて、kintone Café Japan 2018がサイボウズ日本橋オフィスで開催された。kintoneユーザーの勉強会であるkintone Caféの全国大会とも言うべきイベントで、全国からkintone好きが集まり交流を深め合う。今年は土曜日開催ということもあり、kintoneユーザーである次男を伴って参加してみた。中学生の目に、ITコミュニティはどのように映ったのか。

手厚いバックアップ体制でハンズオンの課題を進める次男

オフィスに入るだけでテンション上がりまくり

 重森 陽(しげもり はる)、13歳の中学2年生、筆者の次男である。愛機は、Lenovo社製のCore i7搭載4KノートPC。マインクラフトのレッドストーン回路にハマり、その後Scratchに少し触れた後、父親―つまり筆者―の仕事を手伝うためにkintoneユーザーに。将来の夢はエンジニア、高専受験を目指している。

 エンジニアを目指すならコミュニティ活動を体験しておくべきと、かねてから考えていた。本格的なプログラミングはまだ経験していないので、JAWS-UGのようなコミュニティではテクニカルすぎる。どこか近場で、週末に行ける場所があれば。そんな筆者の願いが届いたのか、kintone Café Japan 2018の開催日は11月10日土曜日。13時から20時と、中学生を連れて行っても遅くなりすぎない時間設定もよかった。誘ってみると次男はすぐに飛びついてきた。イベントページを検索して見つけ、参加登録をするところから自分でやらせた。

遊び要素いっぱいのサイボウズオフィスでテンションが高まる次男

 当日は、サイボウズ日本橋オフィスに到着する前からテンション高め。特急電車に乗っても東京から1時間かかる街で生活する中学生が、都内のオフィス街を歩く経験などほとんどない。シャトルエレベーターでオフィスエントランスへ行く。参加者宛てに事前に届いていたバーコードを読み取って、ゲスト用入館証を発行する。入館証をかざしてゲートを通り、エレベーターでオフィスのある27階へ。どれひとつとっても、中学生には新鮮で刺激的だったようだ。

gusuku Customineハンズオンで、カスタマイズの楽しさを知ってしまう

 今回のkintone Café Japanは、次男が楽しめそうなものを中心に参加メニューをチョイスした。まずは「ノーコーディングで簡単実現 gusuku Customineではじめての画面カスタマイズ」というハンズオンセッション。管理者権限を持つkintone環境が必要だったため、事前に開発者ライセンスを取得させておいた。無論、自力でCybozu Developer networkを見つけさせ、kintone開発者ライセンスの取得も自分でやってもらった。自分で手を動かすこと、自分で必要な情報にたどり着くこと。これらはエンジニアにとって大切な技能だと信じているからだ。

築山さんが指導してくれるgusuku Customineのハンズオンセッションに参加

 さて、自慢の愛機を広げてのgusuku Customineハンズオン。講師はセゾン情報システムズの築山 春木さんだ。gusuku Customineの説明からカスタマイズの実践まで進んでいく。アールスリーインスティテュートが提供するgusuku Customineは、本来JavaScriptを必要とするkintoneの画面カスタマイズを、「やること」と「条件」を指定するだけで実装できるサービスだ。

 ハンズオンでは一覧表の背景に色を付けるなど簡単なことからスタートし、次第に難易度の高い課題にチャレンジする。kintoneユーザーとはいえ、作成したアプリは数えるほど。コーディングの経験はもちろんない。そんな中学生でも、画面を自由にカスタマイズできることに喜びを覚えたようだ。「gusuku Customineをうちでも使いたい! kintoneのライセンス、ライトプランからスタンダードに変えようよ!」などと言い出した。簡単に言うけど、金額が全然違うんだぜ……。

 大人の集団に中学生が混じっているので、運営スタッフの方がとてもよく見てくださったこともあると思うが、次男は本当にすいすいと課題をクリアしていった。築山さんはじめ、ハンズオンに関わったスタッフのみなさんにはお礼を申し上げたい。本当は筆者が手伝ってやろうと思っていたのだが、次男の方が課題クリアが早く、「お父さん、まだできてないの?」と言われる始末(笑)。新しいものの吸収は若者に勝てないのかと痛感したのだった。

ビジネスが分からなくても、ユーザー事例やLTは楽しめる

 続いて参加したのは、参加者からの質問に答える形式で進む「kintoneユーザー座談会」。モデレーターはkintoneプロダクトマネージャーの伊佐 政隆さん、質問に答えるパネリストとしてkintone Café広島の前田 浩幸さんと、サイボウズ式 第2編集部の中村 有輝士さんが並んだ。ビジネス寄りな話題やテクニカルな話題が多く、さすがに中学生には難しかった。とにかくいろいろな使い方ができるんだな、ということだけは伝わったようだ。

ビジネス課題に直結するQ&Aが中心となった座談会は学びどころ豊富ながら、中学生にはやはり難しい

 座談会のあとは、懇親会。大人ばかりの懇親会に中学生を連れて行って面白いものかどうかはさておき、コミュニティ活動において懇親会は大きなウェイトを占めているので、これを体験せずして、コミュニティイベントに参加したとは言えないだろう。しかもkintone Café Japanでは懇親会の最中にLTの時間が設けられている。

 LT、ライトニングトークというものを、中学生は知らない。「自分が試してみたことなんかを、5分で簡単に紹介するんだよ」と教えておいたのだが……今回のLTのトップバッター、M-SOLUTIONSの植草 学さんが用意したスライドはなんと45枚! 1分辺り9枚というハイペースで濃密なトークは「簡単に紹介するんだよ」なんて枠では語りきれないパワーを会場に放ったのだった。これには次男もタジタジかと思いきや、「一番印象に残ったLTは島田商業高校の鈴木 滋さん、次は45枚のスライドを5分で使い切った植草さん」と言っていたので、パワーは伝わったのだろう。

 さて、次男がもっとも印象に残ったLTと語った鈴木さんのLT。「プログラミング学習をしていない生徒がkintoneを使ってアプリを作成」と題して、日直が付ける日誌などをアプリ化した事例を紹介してくれた。鈴木先生は数年前から、オープンデータを使って高校生にモバイルアプリを作らせるなど実践的なIT教育をしており、次世代育成という観点で筆者も注目している人物のひとりだ。

 LTにおいても、やはりビジネス寄りの話題は出てくる。アポロ販売の松永 直人さんのLTでは、Garoonとの連携により業務が効率化された事例が紹介された。こちらも中学生には難しい話。それでも、「仕事で本当にkintoneって役立ってて、毎月何十時間も仕事の時間を短縮する力を持っているんだってことはわかった」とのこと。自分が触れているものと同じkintoneが、ビジネスの現場でも活躍する力を持っていると知り、喜んでいた。また、筆者がライトプランで契約していることもあり、彼はプラグインやAPIの存在も知らなかった。新妻 正夫さんのLTではカスタムコネクタを作って他のアプリとつなげることができると知ったし、アールスリーインスティテュートの沖 安隆さんのLTでは標準機能にこだわってみるというアプローチがあるくらいプラグインの存在が大きいことも感じ取ったようだ。

エンジニアを目指すなら、中学生であってもコミュニティは楽しく学びの多い場所

 13時から20時まで、約7時間。次男が途中で飽きるかもしれないという覚悟も持って臨んだkintone Café Japan 2018だが、まったくの杞憂だったようだ。ハンズオンに始まり、懇親会での交流までしっかり楽しんだ次男は、「ITコミュニティって初めて来たけど、和気あいあいとしてるし、優しい人が多くて居心地がいい」と言っていた。同じものを愛する人たちが集って、皆がそれぞれに居心地のいい場所にしようと努力しているから、そういう場所ができあがっているんだよと答えた。加えて、楽しいと思ったのならもっと積極的に参加する側にまわってみるといいよとアドバイスした。すると返ってきたのは、「どこかのkintone Caféで僕もLTやってみたい」という言葉。

懇親会では料理も交流もしっかり楽しめた様子(上着を脱いだのでボーダーになった次男)

 プログラミング教育だけではなく、こういう場に放つのも、IT教育のひとつのアプローチだと思っているので、これはなかなか良い方に向いたのではないかと思っている。それもこれも、初めてのコミュニティ参加がkintone Café Japanという濃い場で、なおかつよいメンバーに支えられているからだと感謝の気持ちで一杯だ。しかし、悩みも残った。あの日以来、ことあるごとに次男に言われるのだ。

「お父さん、やっぱりスタンダードプランにしようよ。プラグインとか使ってみたいし、gusuku Customineでもっといろいろなことをやってみたい」

 kintone利用コスト、倍増待ったなし。

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