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業務を変えるkintoneユーザー事例 ― 第39回

全国のkintone hiveを勝ち残ったファイナリスト5社が勢揃い

グランプリを巡る熱いプレゼンバトル「kintone AWARD 2018」が開催

2018年11月14日 10時30分更新

文● 柳谷智宣 編集●大谷イビサ

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 2018年11月7~8日、幕張メッセにて「Cybozu Days 2018」が開催され、その中の「kintone AWARD 2018」に参加してきた。kintone AWARDとは、kintoneを業務に活用した事例を発表するkintone hiveに登壇したユーザーの中からファイナリストが集まり、グランプリを決定するイベントのこと。ファイナリストは、鹿児島、福島、愛知、奈良、長野から集まった精鋭5社だ。

ファイナリストたちが集まった今年のkintone AWARD

選ばれたファイナリストたちが、いま幕張メッセのステージに立つ

 kintoneの業務改善ノウハウをユーザー同士が共有する交流型イベントの「kintone hive」は、今年3月の福岡を皮切りに、仙台、名古屋、大阪、東京の5か所で開催された。そこでファイナリストに選ばれた企業が、「kintone AWARD 2018」に集結しグランプリが選ばれるのだ。会場の参加者は気に入ったプレゼンにスマホ経由で投票することでグランプリが確定する。

kintone AWARDについて説明するサイボウズ kintoneプロダクトマネージャー 伊佐政隆氏

 筆者はこの夏、ファイナリストすべての企業にお伺いし、登壇する全員に取材する機会に恵まれた。日本中を飛び回り、kintoneの活用事例を伺ったのだが、小手先のテクニックと言うより、ともかく熱い想いに打たれてしまった。取材するたびに、グランプリはどこが獲るのだろう? と妄想が膨らんでいたものだった。

 今回は、個人的にも注目していた「kintone AWARD 2018」の様子を細かくご紹介しよう。

アプリを使いやすくすることで現場の活用を推進したカクイックス

 まずは、1社目。鹿児島県と宮崎県を中心に九州でサービスを展開しているカクイックス。プレゼンは管理部 情報システム化 主任 福里直也氏が行なった。

カクイックス 管理部 情報システム化 主任 福里直也氏

 最初、鹿児島弁の挨拶でつかみはOK。カクイックスは創業55年を迎える企業で、鹿児島に本社を置いている。医療関係の法人向けにリネンサプライやアメニティ、テレビなどをレンタルするサービスと、個人向けに入院セットサービスを提供している。kintoneはこの入院セットサービスで活用している。

 病気や事故などで突発的に入院する際、パジャマやタオル、歯ブラシやコップなどを買いそろえる必要がある。家族などが持っていかなければいけないし、洗濯も発生する。入院セットサービスとは、ここをレンタルでサポートしてくれるサービスとなる。

 2016年4月に本格的に始動したのだが、福里氏に話が来たのは3ヶ月前の1月と差し迫っていた。

「その時、まずは入院セットで本当にやりたいことってなんだろうとと考えました。そして、kintoneを使うためのルールを定めました。1つ目は、すべてのアプリ、スレッドを利用すること。2つ目は、ハードルを徹底的に下げるということです」(福里氏)

 1つ目は、一切無駄なアプリやスレッドを作らないという意味。極限まで不要な情報を減らし、必要不可欠なものだけを管理しようというスタイルだ。2つ目は、「~すればいいだけ」というところまで作業を最低限に抑えた。さらに、何か困ったらすべてスレッドに「言ってくれ」と伝えたそう。そのおかげで、ITが苦手な人たちでも利用してくれるシステムができあがった。

 2016年4月と比べると、2018年8月時点で入院セットサービスの月間利用者数は20倍に増えたそう。社内のコミュニケーションも活発化し、業務改善提案がよく上がってくるようになった。さらに、新しいサービスの提案をしたり、コンシェルジュと病院の職員とkintoneの勉強会を自発的にするようになったそう。今後は、OCRやRPA、デジタルペーパーといった最新技術も活用しながら業務改善を進めていくとのことだ。

RPAやデジタルペーパーで業務改善をより推進する

常識を入れ替えて新規事業を成功に導いた矢内石油

 2社目は福島県で2番目に小さい村で唯一のガソリンスタンドを経営する矢内石油。プレゼンターは専務取締役の矢内哲氏が務めた。「福島県中島村の人口は5000人、会場の幕張メッセにある駐車場が5500台なので、村民全員が出てきてもまだ余る」という規模感だ。

矢内石油 専務取締役 矢内哲氏

 矢内石油は、7年前までガソリンスタンドとプロパンガス、灯油の配送などを行なっていた。2009年父親が病気になり、札幌で会社勤めをしていた矢内氏が戻ってきた。しかし、毎日店頭に立ったり、灯油の配送をするようになった。

「毎日が面白くないんです。朝7時に起きて夜の8時まで仕事して、同じような閉店作業をしていると退屈になるんです。顧客情報は母がAIのように覚えていたのですが、我々が30年かけて自分をAIにしていくのか? と考えた時に、このままでは社員を採用できないな、と考えたのです」(矢内氏)

 そんな時、あるお婆さんから「足を伸ばしてお風呂に入りたい」と相談を受ける。矢内氏はリフォームの経験はなかったが、チャレンジしてみた。すると「ありがとう」と言われ、驚いた。ガソリンや灯油を売っても、当たり前だと思われているので、感謝されることはないからだ。そこで、矢内氏は住宅リフォームで事業を伸ばし、仲間を作ろうと決意した。

 最初は、矢内氏と奥さんの二人だったが、4年後さらに2人雇うことになった。しかし、2人だと、コミュニケーションのラインは1本だが、4人だと6本になる。GmailやExcel、サイボウズLiveなどを使っていたが情報共有がうまくいかず、kintoneを導入することになった。顧客管理などのアプリを作り、うまく稼働したそう。しかし、矢内氏はその成功を機に次々とアプリを作るようなことはしなかった。

「今やっているいろいろなことをやめるために、kintoneを使おうと思ったのです。当時の私は暇は悪、忙しいのが正義と思っていました。でも違うんです。余裕があるから緊急対応ができたり、プランが作れたり、いい仕事ができるんです」(矢内氏)

余裕があるからいい仕事ができる

 たとえばkintoneとFAXをつないで発注できるようにすれば、事務所に戻らなくても営業が外でも作業できるようになる。メモをしたらそのままkintoneに登録される打ち合わせの記録アプリを入れたら、書類の山がなくなった。

「お伝えしたいキーワードは諦めましょうです。ネガティブに聞こえるので、別の言い方にすると、常識の入れ替えです。忙しいが正義、暇が悪という常識の入れ替えから始めました。誰の幸せのために何をやめるのか、というのを全員で一緒に考えないと、本当の業務改善ができないと感じています」(矢内氏)

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