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日本MSと協業、NTT西の地域データセンターに「Azure Stack」を設置

NTT西日本が自治体向けにオンプレからAzureサービスを提供

2018年11月12日 11時30分更新

文● 阿久津良和 編集 ● 羽野/TECH.ASCII.jp

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 日本マイクロソフト、NTT西日本は2018年11月8日、自治体向けクラウド事業「地域創生クラウド」の推進に向けて協業することを発表した。NTT西日本の本社ビルで開催された協業記者発表会で、日本マイクロソフト 執行役員 常務 パブリックセクター事業本部長 佐藤知成氏は、「地域に根ざしたクラウド提供において、(NTT西日本から)共に歩もうと言って頂いた。日本の生活をデジタル技術で変革させる」と取り組みに対する意気込みを語った。

左から鳥取県情報センター 代表取締役社長 湊政彦氏、NTT西日本 代表取締役社長 小林充佳氏、日本マイクロソフト 執行役員 常務 パブリックセクター事業本部長 佐藤知成氏、トーテックアメニティ 代表取締役社長 坂井幸治氏

 地方自治体の大半は、労働人口の減少やインフラの老朽化など多くの課題を抱えており、それらを打開するためのアイデアが求められている。政府もこれらの課題に注目し、政府情報システムのクラウド化を目指す「クラウド・バイ・デフォルト原則」(2018年6月)、データに基づく行政などの改革を法整備化した「官民データ活用推進基本法」(2016年12月)を策定した。そして自治体サービスのデジタル化で効率化を図る「デジタルファースト法案(仮)」が今国会で策定中である。

 だが、法整備が進んでも疲弊した地方の現場に自発的対応を求めるのは難しく、デジタル化の推進を相談する相手もおらず、サポート体制も整備されていない。このような背景から、2018年6月にNTT西日本取締役社長に就任した小林充佳氏は、地域活性化の栄養剤になるべく、地域を元気にする「ソーシャルICTパイオニア」を目指すと就任時に表明していた。今回の地域創生クラウド構想もその一環である。

NTT西日本 小林氏

 今回の協業では、市民・県民などの個人情報など、データの保管場所を市内・県内に限定する地方自治体なども多い背景を踏まえ、NTT西日本の地域データセンターにオンプレミス版Microsoft Azure「Azure Stack」を設置し、西日本エリアの30府県自治体にパブリッククラウドのサービスメニューをオンプレミスから提供する。これにより、エリア内の自治体は、3つのメリットを享受できるとNTT西日本は説明する。

 「(Azure Stackはプライベートクラウドとして稼働するため)セキュリティの問題は解消する。インフラなどの資産も各県に有しているので、低レイテンシーでシステムを提供できる。そして、NTT西日本の220カ所の営業やサポート部隊でトータルサポートできる」(小林氏)。同社は今後5年間で、1000~1750億円規模の売り上げを目標にしている。

今回の協業体制について

 日本マイクロソフトは2018年10月に、政府・自治体、教育、医療などの公共機関におけるクラウドサービスの導入・移行・利用促進をうながす「マイクロソフト 公共機関向けクラウド利用促進プログラム」を開始している。今回の協業では、同プログラムのメニューである公共機関向けパブリッククラウド活用セミナーや、クラウド技術に関する実習型セミナー、AI/IoT活用トレーニングの提供を通じて技術者育成・技術支援を行う。さらに、パートナー企業への同プログラムの無償提供や、自治体向けソリューション開発・提供の支援を行い、今後1年で住民支援サービスなど50のパートナーソリューションの開発を目指す。

日本マイクロソフト 佐藤氏

 さらに米Microsoftと連携したハイブリッドクラウドに関するグローバル動向の情報提供や技術支援も行っていくとする。「自治体は独自のオンプレミス環境のため、一気にクラウドへ移行する判断を下すのは難しい。現在抱えている資産を段階的にクラウドへ移行するため、ハイブリッドクラウドから提案する」(日本マイクロソフト)。

 NTT西日本側も、今後の展望として「Webサービスなど公開情報はパブリッククラウドで活用するシーンも想定できる」(小林氏)と語っており、Microsoft AzureとAzure Stackによる地方自治体のハイブリッドクラウド展開を滲ませた。「文教や金融、観光など各サービスが(地域創生クラウドに)集まると、多様なデータを通じた新たなビジネスやサービスの可能性が生まれる。地域版データ流通モデルで地域活性化につながることを望みたい」(小林氏)。

地域創生クラウドの概要

 今回のプロジェクトには、鳥取県情報センター、トーテックアメニティの2社のパートナー企業が参画した。「地方自治体からクラウドに対する要望・要請を頂いているが、コストやセキュリティなど条件が合致せず、ジレンマに陥っていた。本プロジェクトが地方自治体の抱えるクラウドサービスの課題解決策だと確信している。クラウド人材育成に微力ながら協力したい」(鳥取県情報センター 代表取締役社長 湊政彦氏)。「東海地方でNTT西日本と協業しながら、地方自治体の基幹業務やデータ管理のクラウド展開を進めてきた。本プロジェクトが各社の強みを生かして進むことに期待している。クラウドを積極的に活用し、地方の課題解決に貢献したい」(トーテックアメニティ 代表取締役社長 坂井幸治氏)。

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