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「avenue jam」特別対談第31回

対談・Planetway CEO 平尾憲映×SELTECH元代表 江川将偉 第1回

江川社長、SELTECHやめるってよ プラネットウェイ電撃移籍のワケ

2018年12月04日 12時00分更新

文● 盛田 諒(Ryo Morita)編集●ASCII

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 SELTECH代表取締役の江川将偉社長が年内に会社を畳み、プラネットウェイに入社する──報せはセキュリティ業界のあいだでちょっとした騒ぎになった。江川社長はAI・IoT領域におけるセキュリティの若き俊英だ。2017年にはG7イノベーター会議(I7)に日本代表として出席している。業界での信頼は篤く、「セキュリティ業界の守護神」と呼ばれたこともある。

 一方、プラネットウェイはエストニア生まれの情報インフラを扱うスタートアップ。保険会社と医療機関のような企業同士が機密情報や個人情報を安全にやりとりするためのセキュリティ対策を得意とする。なぜ江川社長は会社の看板をおろしてまでプラネットウェイへの入社決めたのか。理由はプラネットウェイ平尾憲映代表が「同じ山」に登っていることに気づいたからだという。(全3回)

Speaker:
プラネットウェイ 代表取締役CEO
平尾憲映

1983年生まれ。エンタメ、半導体、IoT分野で3度の起業と1度の会社清算を経験する。学生時代、米国にて宇宙工学、有機化学、マーケティングと多岐にわたる領域を学び、学生ベンチャーとしてハリウッド映画および家庭用ゲーム機向けコンテンツ制作会社の創業に従事。在学時に共同執筆したマーケィングペーパーを国際学会で発表。会社員時代には情報通信、ハードウェアなどの業界で数々の事業開発やデータ解析事業などに従事。

SELTECH 元代表取締役社長
江川将偉

1977年生まれ、カリフォルニア州立大学にて、航空宇宙工学専攻。半導体商社のエンジニア、セールス及びマーケティング職を経て、2009年株式会社SELTECH創業し代表取締役に就任。

やめたといっても、何かをあきらめたわけではなく、登り方を変えただけ

平尾 きっかけはうちに入ってくれた伊藤さんですよね※。彼がプラネットウェイ に入社する前、1年ぶりくらいに「ある会社の社長を紹介したい」と連絡があった。共同(経営)を含めて相談されて、伊藤さん経由で江川さんにお会いして。会ったとき、いつもどおり直球で「こういうことやりたいんです、プラネットウェイはこういう会社なんです」と話をしたら、江川さんもおなじようなことをやろうとしていたとわかったんです。

※ 元サーコム・ジャパン伊藤信久氏。現プラネットウェイ・ジャパン取締役COO。平尾憲映代表もサーコム出身

江川 昨年末くらいに、エストニアと日本政府が何かやっているというニュースをぽつぽつ見ている中でプラネットウェイを見かけたんですね。社長はどんな人だろうと見てみると、経歴にサーコムと書いてあった。サーコムの伊藤さんは知っていたので「平尾さんってどんな人?」と聞いてみた。メディアのインタビューなんかを見ていると「自分に近い感性の人かな」と思えたから、会ってみたいと思ったんです。

 今年春頃はSELTECHをどうするかと考えていた矢先に株主と経営方針にギャップが出始めてて悩んでいるタイミングで平尾さんと会えたんです。株主とのギャップを考えれば、SELTECHの代表を退いてもと思っていた中、同じ夢を持っている人との出会いは大きかったです。大学(専攻)、将来ビジョンなど共通項も非常に多かったのはびっくりしました。

 はじめてお会いした時は資本業務提携の話から始まり、夢や考え方を飲みの中で話しているうちに、SELTECHの代表を退き平尾さんを支えていたいと思い始めてました。平尾さんとの飲みの中でなんとなく「江川さんだけでもおいでよ」的な話になり、「それも悪くはないし」ということでやろうかなと。

平尾 「SELTECHと資本提携する」「部分的に事業譲渡して、残りは別会社として生かす」みたいな選択肢もあったんですよね。でもそこで「いやぼくはSELTECHというか江川さんがほしいんですよね」と投げ返したら、2週間くらいで「(会社を)精算しますわ」と決めてきてくれたので、すごいなと。セキュリティ業界の守護神とも言われている方でありながら。

江川 SELTECHをやめたといっても、何かをあきらめたわけではなくて、登り方を変えただけなんですよ。「個人データ主権」に向かっている道は平尾さんも一緒だと思うんですよ。去年のI7でも「インフォメーション・ベネフィット・コントロール」という言葉で説明したんですけど、いろんなAIのサービスができたとき、個人情報をたれ流していいわけがないよねと。利用者がちゃんと理解した上で情報を「出す」「出さない」をコントロールできるプラットフォームを作って、セキュリティも作っていかないといけない。それって平尾さんが言っていたこととニアリーイコールじゃないですか。だったらわたしの夢は平尾さんに託してしまっていいんじゃないかと思ったんです。

「日本の産業に強くなってほしい」という思いからセキュリティ業界へ

平尾 そもそも江川さんはどういうきっかけでSELTECHを立ち上げたんですか?

江川 2008年にリーマンショックが起きたとき「日本の産業がなくなっていく、これを止めるには真似されないソフトウェアレイヤーを作らないといけない」というのでSELTECHをつくったんです。それから約9年10期やりました。セキュリティIoTアライアンスを作ったり、重要生活機器連携セキュリティ協議会(CCDS)という団体に入って、セキュリティの主査をやったりもしました。

 なぜセキュリティかといえば、日本企業が魂こめてモノを作っているにも関わらず、セキュリティに脆弱性があることで「中国製と変わらないじゃん」という扱いになるのがもったいないと思ったからなんですよね。「日本の産業に強くなってほしい」というのが会社をスタートさせたときに大きかったところなので、まずは日本企業がよくならないと地域企業に貢献できないだろうと。

 一方、セキュリティって何なのと言うと答えられない人がほとんどじゃないですか。講演会でさんざんしゃべってきましたけど、セキュリティと一口に言っても、レイヤーごとに違うものがいろいろあり、どれを選べばセキュリティと呼べるのか答えられる人はほとんどいない。これは誰かが叫ばないといけないなと。ぼくは叫びつづけて声が枯れてきたから、平尾さんやってもらえませんかと(笑)。

平尾 1つのソリューションだけ展開して「セキュリティをやっている」と言っている有象無象が多すぎますよね。セキュリティって、街で言うなら、つくっているのが道路なのか、信号機なのか、ビルなのかで分かれるじゃないですか。その意味では、ぼくは道路をつくっていて、江川さんは信号機をつくっているけど、江川さんは街の全体の設計図が頭に入っていた。ぼく自身、そういう人に会ったことがほとんどなかったんですよね。

江川 セキュリティって絶対に一社ではまかなえないですからね。どれだけいいパートナーと組めるか、それが理解されていない。でも、やがてその考え方を世の中の人たち全員が理解しなければならない日が来る。サービスを受ける・受けないを自分で判断できるかどうか、安全に情報を出せることを担保されるかどうかが、これから大きく問題になる。たとえば、みんながFacebookを使っているから安全だと思っていたのに個人情報が流出しちゃったり。でも、個人情報を渡すよってボタンを押したのは自分でしょうと言われてしまう。これが情報過多になればなるほどもっとひどい状態になっていく。だからこそ、プラネットクロスやプラネットIDみたいなプラネットウェイの仕組みに期待しているところが大きいんですよ。

第2回につづく

(提供:プラネットウェイ)

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