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個別医療時代の幕開け、米国で1人の子どものための遺伝子療法が開発

2018年10月24日 06時59分更新

文● Antonio Regalado

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1人の子どもが、自身の細胞内の珍しいDNAの変異を修復するためにカスタマイズされた遺伝子治療を受けている。史上初の興味深い事例だ。

スキーやサイクリングが大好きな女の子だったミラ・ヴィタレロ(上掲の写真)は、脳障害を引き起こす極めて珍しいタイプのバッテン病にかかった。6歳の女の子であるミラに健康問題を引き起こす珍しい遺伝子のエラーが見つかった後、米ボストン小児病院の研究者であるティモシー・ユー博士は、ミラの遺伝子エラーを修復するための治療法を開発できると考えた。

ユー博士が選んだのはアンチセンスという治療薬だ。アンチセンスは、遺伝子の発現方法を変えられる遺伝子の分子で、注射で投与される。

ほとんどの医薬品は、大規模な研究をして長年かけて開発され、最終的に多くの人々に利益をもたらす可能性がある。しかし、ユー博士の治療薬はそうではない。博士たちは1年足らずのうちにミラのためだけの治療法を開発した。彼女の名にちなみ「ミラセン」と呼んでいる治療法は、事実上、1人だけを対象にした治験となる。

現在、約7000種類の希少な遺伝性疾患および極めて希少な遺伝性疾患の存在が知られている。一握りの子どもだけが患っているものもあれば、患者がたった1人しかいないものもある。今回のユー博士の研究は、DNAシーケンシングにより遺伝子のエラーが見つかった場合、それに合った治療法を迅速に開発できることを示している。

この治療について取り上げたサイエンス誌に対し、米テキサス州ダラスにあるテキサス大学医療センターのスティーブン・グレイ博士は、「個別医療が実際に役立つ可能性があることをこれほど強く示す例はないでしょう」と述べた。

ミラの病気は治っていない(彼女は盲目であり話すこともできない)。しかし、治療薬は役に立っているようだ。「私には不治の病を患う娘がいます。この治療は希望であり闘いです」とミラの母親であるジュリア・ヴィタレロは述べた。

ユー博士らは今回の研究にかかった費用について明らかにしていない。だが、保険が適用されないこのようなオーダーメイド治療にとって、費用は大きな問題である。自らが設立した基金で300万ドル近くを調達したミラの家族は、集まった募金から研究費用の一部を支払った。ミラの治療に関する詳細な記事は10月22日付けのスタットで読むことができる。

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