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「中国人東大生ママ」の教育法、日本のガミガミタイプとの大きな違い

2018年10月12日 06時00分更新

文● 東方新報(ダイヤモンド・オンライン

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日本人よりも中国人にとって入学のハードルが高い東京大学 
中国人にとって、日本人よりも入学のハードルが高い東京大学 

東京大学。言わずと知れた日本最高峰で、全国のトップクラスの学生たちが目標とする大学だ。それだけに、日本で生活する中国人にとっては、さらに高いハードルであることは想像に難くない。そこで、中国語と日本語2ヵ国語の新聞を発行している『東方新報』が、東大に子どもを入学させた「中国人東大生ママ」たちの実態を取材した。(『東方新報』取材班)

米国の小学校で
英語と数学の基礎を築く

 日本生活14年目を迎える専業主婦の陳さんには、2人の子どもがいる。熱心な教育の下、長男は開成中学・開成高校を卒業後、東大工学部へと入学。次男は現在、早稲田大学の付属中学に通う。

 陳さんは、中国の西安交通大学で学士と修士を取得、夫も学士、修士、博士の全てを取得しているエリート夫婦だ。大学卒業後、陳さんの夫はオランダの大学に留学、2年後陳さんの夫は招へいを受けて来日するも、さらにその2年後には会社から米国駐在の任を受け、陳さん一家は米国で4年余り生活した。そして子どもが9歳になったとき、陳さん家族は夫の仕事の関係でまた日本に移り住むことになった。

 2002年から06年までの間、夫の仕事の関係で家族は米国で生活をしており、長男は米国の小学校に通った。

「米国の小学校で、英語教育と数学教育を受けて基礎を築き上げたことが、日本での大きなメリットになった」と陳さんは話す。

 実のところ、陳さんは子どもに「勉強しろ」と厳しく当たるのではなく、趣味や興味・関心があることを重視し、ピアノやバイオリンなどを学ばせた。そこで徐々に才能を開花させ始めた長男は、当時の米国の先生からIQテストを受けるよう勧められる。

陳さんの長男は、東大に入学後、東大の大学院に進んでいる
陳さんの長男は、東大に入学後、東大の大学院に進んでいる ©東方新報

 その結果、素晴らしい潜在能力があることが分かった長男は、学校の判断で「飛び級」し、博士によるマンツーマンの補修授業も受けられるようになった。「個性化教育」を重視する米国の小学校ならではだ。

 日本に移り住んできてから、長男は日本の小学校を卒業後、東大合格者でトップクラスを誇る開成中学に入学。その後も順風満帆に進んで東大に合格し、現在は東大の大学院生となっている。

 子どもに「創造的思考や自分の考え方を持った人間になってほしい」と思っていた陳さんは、「絶対、東大に行け!」などと押しつけるようなことはしなかったという。それよりも、自分の興味あることを学び、楽しく成長してもらうことを優先させたという。

 それは弟の成長を見れば分かる。一般的にみれば、兄弟ともに才能があり、兄が東大に入ったとなれば、当然、弟もとなりそうなもの。しかし、弟は早稲田大学の付属中学でコンピュータプログラミングに熱中し、友達も多く楽しい学園生活を送っている。このままいけば弟は、進路を早稲田大学に決める可能性が高い。陳さんは「本人が楽しればそれでいい」と話す。

小さいころから英語のアニメを見せ
中国の自宅で使う言葉は日本語限定に

 一見、ごくありふれた若い主婦にしか見えない黄さん。愛想もよく、ユーモアを交えながら話す姿からは明るい人柄がうかがえる。しかし、子どもの話題になると、その眼は自信に満ち溢れ、プライドすら漂う。

 日本生活29年目を迎える黄さんは、中国の大学を卒業した後に来日。日本の貿易会社に就職し、自動車部品などの取引に携わっていた。夫も中国人だ。

 黄さんは、2人の子どもを育て、ともに東大への入学を果たした。長男は現在大学院2年生で複雑理工学を専攻し、次男は工学部に所属している。

東大の合格発表の日、自分の受験番号を見つけた黄さんの子ども
東大の合格発表の日、自分の受験番号を見つけた黄さんの子ども ©東方新報

 子どもたちは、学校と自宅で基礎的な部分を学び、塾では東大など難関大学に合格するための専門コースで勉強。いずれも成績上位を維持し続けたという。

 2人の学習環境を作るのは、苦心惨憺(くしんさんたん)たるものだったと黄さんは振り返る。「まずは言語の取得が重要で、そのためには環境が最も重要だ」と言う黄さんは、2人の子どもに小さい頃からテレビで英語のアニメを見せていた。「たとえ真面目に見ていなかったとしても、子どもたちの記憶には自然と見聞きしたことが残っているから」と黄さんは話す。

 長男が小学校1年生になったときには、中国語を忘れさせないようにと、夫を置いて子どもとともに中国へ帰国。次男が生まれたこともあり、都合8年中国にとどまった。だが、その間も日本語をおろそかにさせないため、家の中では日本語でしか話さないようにした。日本に帰国した後は逆のことを行ったというが、こうした努力によって、子どもたちの中国語と日本語のレベルは向上した。

勉強嫌いを克服するために
家庭教師に大学の魅力を教えてもらう

 周さん(仮名)は、日本の筑波大学を研究生として卒業して以来、日本で仕事を続けている。中国人の夫は日本のIT企業に勤務し、あっという間に27年の月日が経過した。

 周さん曰く、周さんの子どもは小さいころから気が強く、自分の決めたことは誰が何と言おうと聞かない性格だったという。そして何より、小さいころから大の勉強嫌いだったという。

 そのため、塾に通っていたものの、「授業がつまらない」との理由で数ヵ月で行かなくなってしまった。そこで周さんは、大学での勉強と生活とはどのようなものなのかを認識させるとともに、明確な目標を持たせようと、知り合いに紹介してもらった家庭教師をつけた。

 家庭教師は、東京工業大学に在学中の学生。子どもが物理や幾何学に興味を持っていたこともあり、家庭教師の話を聞くにつれ、大学での勉強に興味を持ち始めたという。そして決め手となったのは、家庭教師に誘われて足を運んだ東工大の学園祭。興味のあった物理実験を見て、「大学に行って自分もやってみたい」と決意を固めたのだというのだ。

 高校3年生に進級した際には、担任の教師から「こんなところで毎日遊んでても何も面白いことはないよ。本当に面白いのは大学に行ってからだよ。大学に入るのが1年遅くなったら1年の損失だよ」と後押しされて、頭はいいものの勉強嫌いな子どもたちのやる気を出させるために作られた、東大合格を目指す「東大クラス」に編入。一緒に参加した他の生徒との仲間意識も生まれ、懸命に勉強したという。

 周さんは、「無理をせず、本人が楽しさえすれば」というスタンスだったが、将来、自分の努力でしっかりとした判断ができるような子どもに育てたかったと話す。そんな周さんの子どもは、最終的に唯一志願書を提出した東大の工学部に合格したのである。

 中国人は子どもの教育を重視しているため、教育熱心で非常に厳しく、「虎媽(米国でいうタイガーマザー)」と呼ばれる教育ママたちが数多くいる。

 しかし、今回取材した「東大生ママ」たちの教育は、「虎媽」をイメージさせるような「過酷さ」や「粗暴さ」はない。確かに皆、高学歴で教育を重視しているものの、子どもの立場に立って、まるで友達のように子どもと接している。

 その上で、子どもに多くの友達を作らせ、勉強や大学に対する正確な知識を持たせることで、最も良い状況を作り上げ、東大の試験に臨ませている。そこには、日本でいうガミガミタイプの教育ママとはかけ離れた姿があった。

※『東方新報』は、1995年に日本で創刊された日本語と中国語の新聞です。


※本記事はダイヤモンド・オンラインからの転載です。転載元はこちら

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