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日本生命が過熱する節税保険競争から「一抜け」した真相

2018年10月10日 06時00分更新

文● 週刊ダイヤモンド編集部(ダイヤモンド・オンライン

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生命保険会社による販売が過熱している経営者向けの「節税保険」。各社が競うようにして返戻率を引き上げる中で、火付け役だった日本生命保険が競争からあえて距離を置くような商品改定に踏み切り、業界がさざ波立っている。(「週刊ダイヤモンド」編集部 中村正毅)

生命保険会社による販売が過熱している経営者向けの「節税保険」
「節税保険」をめぐる返戻率競争の行き着く先は、利益なき繁忙と営業現場の荒廃だ Photo:DW

「この保険商品は保険料が『全損』扱いできますので、節税が可能です。御社の決算対策に必ずお役に立つと思います」

 そうしたセールストークと節税効果の高さに引き寄せられ、昨年4月の発売以降、全国の中小企業オーナーが飛び付くように契約した日本生命保険の経営者保険「プラチナフェニックス」。

 この保険商品が市場を瞬く間に席巻するさまを見て、生保各社は相次いで追随商品を投入。そうした中、日生は今年10月、満を持して商品改定に踏み切った。

 各社が注目していたのは、改定後の解約返戻金の料率だ。後発商品ほど返戻率を高く設定するのが通例のため、火付け役となった日生が、果たしてどのくらい高い返戻率を提示してくるのか──。生保各社は戦々恐々としながら見ていたわけだ。

 ところが、だ。日生が設定したピーク時の返戻率は、配当金を含めても86.2%(下表参照)。ランキングトップどころか、上位3位にも入らない水準だったのだ。


* 経過年数は10年。各社の営業資料などを基に本誌編集部作成
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 商品設計上、返戻率で他社を上回ることは十分可能だったにもかかわらず、なぜ日生は競争から距離を置くような道を選んだのか。

 各社が真意を図りかねてざわつく中、その舞台裏を探る過程で浮かんできたのは、日生の戦略上の「誤算」だ。

 日生はむろん、プラチナフェニックス発売当初から他社の追随を予想していた。その上で、返戻率で後発商品に多少見劣りしたとしても、先行者利益を十分に取り切れるとそろばんをはじいていた。

 しかし今年3月、第一生命グループ傘下のネオファースト生命保険の「ネオdeきぎょう」の登場で、その計算は狂ってしまう。日生はじめ多くの生保が(第1保険期間における)返戻率のピークを10年に設定する中、ネオは期間を最短5年に短縮することで、基本となる返戻率で日生をはじめ他社を圧倒してきたのだ。

 改正保険業法下では比較推奨販売義務が課されている上、さほど保障内容に差がない経営者保険は、返戻率の高さこそが優劣を決める。

 税負担を考慮した「実質返戻率」では5ポイント以上もの差がついてしまい、3月に決算期末を迎えた多くの企業が、ネオに怒濤のごとく流れていった。

 年間を通じて最も売れる時期に第一の後塵を拝した日生。プラチナフェニックスを改定するのではといううわさが立ち始めたのは、このころからだ。

 当初は、返戻率をいかに引き上げるかに改定の照準を合わせていたようだが、その後急速にトーンダウン。その要因は、関係者の話を総合すると大きく二つある。

 一つ目は、生保の経営を監督する金融庁の“指導”だ。

 金融庁は今年6月、経営者保険の販売が過熱し、新たな商品認可の申請が相次ぐ事態を受けて、業界をけん制する狙いで、商品の販売実態と付加保険料の設定について調査に着手している。

 庁内でも「脱税保険」などとやゆする声がある中で、火付け役となった日生が、競争をさらに煽るような商品の改定をすることは看過できず、監督当局としての意向を定期的な対話の中でそれとなく伝えていたようだ。

経営者保険がもたらす
利益なき繁忙

 二つ目は、収益性だ。経営者保険は保険料の大半を解約返戻金として返すため、他の生保商品と比べて収益性が低い。にもかかわらず、返戻率をやみくもに引き上げてしまえば、さらに収益性が悪化し「解約のタイミングによっては、費差益がマイナスになってしまう」(大手生保幹部)という。

 日生は今春以降、プラチナフェニックスの挽回を狙うかのように、他社の2倍近い水準の販売手数料を一部代理店に支払っている。そのため、商品改定に伴ってさらにコストを掛けるような施策を取ることになれば、「利益なき繁忙」に陥ってしまうというリスクもあったのだ。

 中途半端な改定しかできないのであれば、いっそのこと改定しないという選択肢もあった。それでも、返戻率をネオの商品よりわずかながら上回る水準で改定してきたあたりに、ガリバー日生の意地とプライドがにじみ出ている。

 節税効果をうたう経営者保険をめぐっては、6月にメットライフ生命保険が初の外貨建て商品を発売したほか、11月にはオリックス生命保険も、業界最高水準の返戻率を誇る商品の投入を予定するなど、販売競争は足元で一段と過熱しているのが現状だ。

 その競争から日生がフェードアウトするのと相前後するように、国税当局が全損の根拠となる法人税基本通達の見直しに向けて、早くも動き始めたとの観測が今、業界で広がり始めている。


※本記事はダイヤモンド・オンラインからの転載です。転載元はこちら

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