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ミス連発や逆ギレの意外な原因、「自己肯定感」の低さにあった

2018年10月10日 06時00分更新

文● 真島加代(ダイヤモンド・オンライン

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「自己肯定感」という言葉を耳にしたことがあるだろうか。人は、さまざまな経験を経て自分自身の存在を受け入れ、「自己肯定感」を高めていく。しかし、自分を受け入れられず自己肯定感が低いまま社会人になり、行き詰まりを感じる若者が少なくないという。(清談社 真島加代)

ケアレスミスを連発する人の
自己肯定感が低い理由

自己肯定感の低い上司が、ささいなことで部下を叱りつける
若者だけでなく、中高年でも自己肯定感の低さが問題となるケースは多くある。些細なミスで部下を怒鳴りつける上司も、実は自己肯定感が低いのだ Photo:PIXTA

「自己肯定感は、読んで字のごとく自分自身の存在を受け入れることを指します。心理学用語として『I am OK』と表現されることもありますね」

 そう話すのは、全国心理業連合会公認上級プロフェッショナル心理カウンセラーの浮世満理子氏(ホームページはこちら)。

「自己肯定感が低いと聞くと『自信がなくておとなしい人』をイメージしがちですが、それはあくまで個人の性格なので、あまり関係ありません。実際には、プライドが高くて失敗を恐れるのが自己肯定感の低い人の特徴です」

 若者の特権とも言える「失敗からの成長」や「挑戦すること」を放棄している若い人が身近にいれば、その人は自己肯定感が低い可能性があるそう。浮世氏によれば、自己肯定感の低さが招く特徴はほかにもある。

「見落としがちなのがミスの多さです。何度も同じようなミスをする、誤字脱字などケアレスミスを何度もする人は、“自分が仕事で成功するイメージ”を抱けていない可能性が高いです。『自分はミスをするのが当たり前』と、無意識のうちに思い込んでいるため、ミスを防ぐためのチェックをせずに何度も同じ失敗をする、という特徴があるんです」

 なかには、ミスを指摘されると「ミスをする自分に仕事を任せるほうが悪い」と、開き直って言い訳をするというケースもあるそう。自己肯定感の低さと、仕事のミスが深く関わっているとは驚きだ。

自己肯定感の醸成には
親との関係性が影響する

浮世満理子(うきよ・まりこ)/上級プロフェッショナル心理カウンセラー、メンタルトレーナー、株式会社アイディアヒューマンサポートサービス代表取締役。プロスポーツ選手や芸能人、企業経営者などのメンタルトレーニングを行うかたわら、多くの人にカウンセリングを学んでほしいと、教育部門アカデミーを設立。心のケアの専門家育成に尽力している

 チャレンジ精神の欠如や、繰り返されるミス…なぜ彼らの自己肯定感は低くなってしまったのだろうか。

「自己肯定感は成長する過程で向上していくはずなのですが、誰もが十分に高められるとはかぎりません。たとえば、親に『あなたはできない子』と言われて育てられれば、自己肯定感は低いまま大人になります。また、今の親世代は条件付きの『OK』を出して子育てをする傾向があり、子どもの自己肯定感が上がりにくい環境を作っているケースがあります」

 たとえば「お母さんは、勉強ができる○○くんが好きだよ」といった発言は、子どものすべてを受け入れているわけでなく「勉強ができる」という条件付きで子どもの存在を肯定しているにすぎない。そして、条件付きで育てられた子どもは「勉強ができなくなったら親に愛されなくなる」というプレッシャーの中で育つことになる。

「本来の自己肯定感は、条件に基づかず、自分の存在そのものを素晴らしいと認識することです。自分を受け入れるためには、まず身近にいる親が子どもの存在を無条件に認めてあげる必要があります。しかし、条件付きで親に受け入れられた子どもは、条件が満たせなくなれば価値がないと考え、自分を肯定できないまま大人になってしまうのです」

 自己肯定感には、親の育て方や価値観がダイレクトに影響するのだ。そのため、近年の子育てシーンでは“自己肯定感”がキーワードとなっているという。また、自己肯定感の低さに悩まされるのは若手社員だけではない、と浮世氏。

「上司の立場にありながら、余裕がない人も自己肯定感が低いといえます。たとえば、部下がミスをした際に、『バカにされた』と勝手に感じて部下を大声で怒鳴りつける上司がいます。本来、部下の失敗と上司は何の関係もないのですが、上司自身の自己肯定感が低いために、バカにされたなどと曲解してしまうのです」

 上司に強く叱られた部下の自己肯定感はさらに下降し、職場全体の雰囲気も悪化する。自己肯定感の低さが伝染病のように蔓延する、まさに地獄絵図だ。こうした状況からも「自己肯定感が低いことにメリットはない」と浮世氏は指摘する。

「若手にチャレンジ精神がない企業は成長が見込めない上、怒鳴る上司がいれば職場やチームの士気も下がります。生産性も下がり、企業にとってデメリットでしかありません」

自己肯定感の低い部下でも
声かけ次第で育てられる

 親との関係性に問題があると聞くと、「もう一生直らないのか」と思いがちだが、浮世氏は「大人になっても自己肯定感を上げることはできる」と話す。特に自己肯定感の低い部下を持っている上司には、できることがある。

「上司の立場で部下を怒鳴らないのは大前提。怒鳴り声は、叱られる本人だけでなくその場にいる人すべてのストレスになり、チーム全体の力を弱めます。部下のミスは冷静に指摘し『このミスは、あなたらしくない』という言葉を付け加えましょう。特にプライドが高くて自己肯定感が低いタイプの人は、強く叱ると開き直る可能性があるので『上司としてあなたを認めている』『あなたならできるはず』という承認の言葉を加えるだけでも、印象は変わります」

 もちろん、部下の仕事が成功したときは「すごくよくできていて、助かったよ」などのお礼の言葉をしっかり伝える必要がある。承認の言葉を受けた相手は、周囲から認められていることを感じ、それと同時に達成感を得る。そうすることで自己肯定感を引き上げられるという。

「ただ甘やかすだけでは自己肯定感は上がりません。自分自身の仕事ぶりに達成感を得たときに、はじめて自己肯定感が上がるのです。下を育てる立場にあるリーダーは、積極的に承認の言葉を使っていけば、部下はもちろんチーム全体の力を底上げすることにつながるはずです」

 浮世氏によれば、一人ひとりの自己肯定感が高いチームは、生産性が上がり、いざというときに「勝ち」を取りに行くだけのタフさがあるという。できる、できないは「能力の問題」「頭脳の問題」と単純化される傾向があるが、メンタル面のテーマである「自己肯定感」も大きく関係してくるのだ。部下の自己肯定感の向上にまで目を向けられているリーダーは、一体どれくらいいるのだろうか。

スポーツの世界では
自己肯定感が重要視されている

 浮世氏は、多くのトップアスリートにメンタルトレーニングを行っている。彼女が仕事を通して感じるのは「自己肯定感の高さ」だという。

「トップアスリートのなかには、ビッグマウスの人もいればシャイな性格の人もいます。それでも、全員に共通するのは自己肯定感の高さ。トップアスリートは、周囲の期待やプレッシャーを強く感じながら本番に臨まなければならないのに『自分はミスをする人間だ』と思い込んでいては、大切な場面でミスをするかもしれない。そうしたストレスに打ち勝つために必要なのが、自己肯定感なんです」

 もちろん、アスリートにも自己肯定感が低い人はいる。そうした場合には、浮世氏のようなプロのメンタルトレーナーが自己肯定感を上げるトレーニングを施すという。スポーツ界では選手の自己肯定感が勝負を左右することもあるため、とても重視されているトレーニングなのだ。

 これまで浮世氏が出会ったなかでも、かなり高い自己肯定感を持つひとりのアスリートのエピソードを聞かせてくれた。

「彼は大ベテランのサッカー選手として、今も現役で活躍しています。そのため、自分よりもはるかに年下のチームメイトとプレーをしています。技術的にも、精神的にも未熟なチームメイトも当然いるはず。そういう状況でイラッとしたらどのような対処をしているのかを聞いてみると、彼は『これまで一度も、チームメイトに対して声を荒らげたことがない』と答えたんです」

 彼は、試合の大事な場面で思わぬミスをする選手や、やる気が感じられない選手に対しても「こうしたほうがいいよ」という的確なアドバイスをするのみで、怒りをぶつけることはない、と語ったという。

「怒鳴らない理由を聞くと『相手を否定してもいい結果につながらないことを、僕は知っているんですよ』と答えました。自分の発言がチーム全体に与える影響の大きさを十分理解し、チームメイトとチーム全体の士気を下げないことを優先しての行動。彼がこれほどまで冷静にチームメイトに関われるのは、強い自己肯定感があってこそできることだと感じました」

 彼の言葉はそのままビジネスシーンにも当てはめられるはず、と浮世氏は主張する。今後、上に立つ者として部下の自己肯定感を上げられるか否かは、重要な管理職スキルとなるかもしれない。


<プロフィール>
浮世満理子(うきよ・まりこ)
上級プロフェッショナル心理カウンセラー、メンタルトレーナー、株式会社アイディアヒューマンサポートサービス代表取締役。プロスポーツ選手や芸能人、企業経営者などのメンタルトレーニングを行うかたわら、多くの人にカウンセリングを学んでほしいと、教育部門アカデミーを設立。心のケアの専門家育成に尽力している。


※本記事はダイヤモンド・オンラインからの転載です。転載元はこちら

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