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JR東傘下入りの旧東急車輛製造、1両1000万円のコスト減に成功した秘策

2018年10月09日 06時00分更新

文● 週刊ダイヤモンド編集部(ダイヤモンド・オンライン

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次世代ステンレス車両「sustina(サスティナ)」
JR山手線(左)も東急田園都市線(右)も同じサスティナブランドの車両だが、見た目はだいぶ違う Photo:PIXTA

 東日本旅客鉄道(JR東日本)100%子会社の車両メーカー、総合車両製作所(J-TREC)には今、思わず笑みがこぼれる商品がある。次世代ステンレス車両「sustina(サスティナ)」だ。

 2012年9月にブランドを立ち上げて以来、JR山手線や東急田園都市線、都営浅草線などの新型車両に採用が拡大。16年度に50両超、17年度に250両超と、車両製造数を急増させているのだ。

 9月4日にJR東日本が発表した横須賀・総武快速線用の745両の新造車両にも採用が見込まれており、製造数は18年度以降もしばらく順調に伸びそうである。

 実はこのサスティナ、電車界の常識を打ち破る商品だ。

 電車には、飛行機や自動車と違って、長らく当たり前ではなかったことがある。製造における共通プラットフォームの構築だ。電車は、各鉄道会社で差別化へのこだわりが強い。そのため、顧客ごとのニーズに細かく対応することこそ車両メーカーの使命とされ、なかなか実現に至っていなかった。

 オーダーメードでも、利益さえ出れば車両メーカーとしては問題ない。しかし、電車は1モデルにつき数両の発注もあり得る典型的な多品種少量生産の製品で、もともと量産効果を出しにくい。何より、国内の車両メーカーの合計供給能力が需要の約1.5倍に上り、価格競争が激化していた。

差別化にもきちんと対応

「過当競争をどう勝ち抜くか」(宮下直人・J-TREC社長)。この状況に風穴をあけるための戦略ブランドこそサスティナなのだ。

 誕生のきっかけは、J-TRECの前身である東急車輛製造のJR東日本傘下入りだ。JR東日本の在来線は、JR発足後に導入した新型車両だけで約8000両もある。この大量の車両製造を担うとともに、私鉄の車両も受注。それらに共通のプラットフォームを敷けば、部品の共通化により製造コストを大幅削減できるはず──。この思惑を形にしたわけだ。

 実際にサスティナの車両は、ボディーや制御装置などを共通化することで、オーダーメード車両より1車両当たりおおむね1000万円も安く造れるというからコスト効果はばかにできない。モデルごとの差別化は、車両の“顔”と、ボディーのラッピングを変えることで対応。内装もオプションでパーツ等の変更を可能にした。

 こうすることで、鉄道会社は差別化された車両を安値で調達できるし、部品メーカーは共通部品を大量納入できる。J-TRECの生産効率も著しく上がった。同型車両を造り続ければいいので工場の仕様変更の必要がない上、習熟度が上がりやすいからだ。

 競合メーカーによる安値攻勢は熾烈化するばかりだが、鉄道製造に“共通化”を持ち込んだJ-TRECは一つの解を見つけたともいえる。

(「週刊ダイヤモンド」編集部 新井美江子)


※本記事はダイヤモンド・オンラインからの転載です。転載元はこちら

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