今回のテストはOSの差を見るのが目的なので、もWindows版とLinux版が用意されているアプリに絞って検証した。また、この条件をクリアーしても、Windows版とLinux版で設定の同一性が確認できないものや、同一でもエラーが出てしまうアプリは排除している。
まず2990WXレビュー時に判明したのは、Threadripperはレンダリングに滅法強いということだった。まず最初に「V-Ray Benchmark」のCPUレンダリング時間を比較する。
WindowsとLinuxでタイムは同じ。CGレンダリングはWindowsでも十分なパフォーマンスが出るということが示唆される結果となった。
ただし、CGレンダリングもアプリによって実装方法が違う。別のテストでの検証も必要だろう。そこで「Blender」のレンダリング時間を比べてみよう。現在Blenderにはベンチマーク専用アプリが開発中だが、今回はそれは使わず、公式ブログよりDLできる“Berbershop_Interior”をCPUでレンダリングするときの時間を比較する。
V-Rayと違い、BlenderではLinuxの方が30秒ほど早く終了した。どちらのOSでもCPU占有率はほぼ100%だったが、Linuxの方がより効率よく2990WXを使えるということだろうか。
次に動画エンコード系の処理で検証する。WindowsとLinux共通のソースから派生したエンコードツールとして「FFmpeg」を利用する。素材は再生時間約2分の4K H.264動画(M4V)であり、これをフルHDにダウンサイズしながらMP4ファイルに書き出す。コーデックはH.264とH.265の2通りで検証した。パラメーターは以下の通りとなる。
なお、Linux版のFFmpegはFFmpeg公式からダウンロードできるstatic版(必要なライブラリー等を組み込み済みのバイナリー)を利用している。
【H.264】
ffmpeg -i path/to/file/source.m4v -b:a 300k -preset veryslow -tune film -movflags +faststart -y path/to/file/out.mp4
【H.265】
ffmpeg -i path/to/file/source.m4v -vcodec hevc -b:a 300k -preset veryslow -movflags +faststart -y path/to/file/out.mp4
OSがCPUのパワーを左右することがあるか?という問いに見事に答えてくれた結果といえるだろう。特にH.264の場合Windows環境の約半分の時間で処理を終えている。H.265を使うとその差は大分縮まるが、やはりLinux環境の方が2990WXの性能をより引き出せていると結論付けられる。
次に示す図は、FFmpegでH.264によるエンコードを検証している際にCPU占有率がどの程度あるのか比較したものである。CPU負荷は刻々と変化するため、スクリーンショット1枚きりで比べるのはかなり強引ではあるが、経時変化を観察し、可能な限り“よくある負荷分布”になったときの状態を比較するように努めた。
Windowsは特定の論理コアの占有率が100%になる反面、それ以外の論理コアの負荷はほとんどかからないことが多い。今回の検証環境とFFmpegの場合、前掲のタスクマネージャーで2段め〜3段目(32コア分)処理が集中するのに対し、Linuxは負荷がバラける傾向にある。このCPUリソースの使い方の差が処理時間の差となって現れたといえる。 ちなみに、各OSにおけるCPU占有率を単純に足し合わせた合計(64コアが100%フル稼働なら6400になる)は、Linuxが3944.7に対しWindows 10が3969と、そう大きな違いはない。特定コアにだけ負荷をかけるWindowsのスタイルを改善する必要がありそうだ。
次は同じ動画エンコーダーでもGUIのついた「Handbrake」で検証する。ソースの動画はFFmpegと共通のものを使い、H.264およびH.265での処理時間を比較する。H.264の画質設定はプリセットの「HQ 1080p30 Surround」を使用し、H.265はH.264の条件をそのまま継承したものとなる。
FFmpegとは傾向が違うことがひと目でわかる。H.264に関してはLinuxの方がやや速いが、H.265についてはWindows 10の方がタッチの差で勝利。この程度なら誤差の範囲とも言えるが、必ずしもLinuxが2990WXのパワーを引き出せるという訳ではない。OSはあくまでベースで、その上で動作するアプリの対応も必要だ、ということになる。
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