このページの本文へ

前へ 1 2 次へ

iPhone XS&iPhone XR、ASCII徹底大特集! 第113回

スモールスクリーンの世界に住み続けたい:

さよならiPhone SE バッテリー交換はお早めに

2018年10月04日 16時00分更新

文● 盛田 諒(Ryo Morita)

  • この記事をはてなブックマークに追加
  • 本文印刷

●長く使えるコンピューター

 今のiPhoneは高級なスマートフォンで、今のアップルは高級ブランドです。高級品を出す理由はスマートフォン市場が頭打ちだからだと思います。BCN調査によればiPhoneの初速はiPhone 6s以降落ちています。大量に売れないものの売上を伸ばすには高級化の道しかありません。そこで高級化にあたってアップルはハイスペック化でなくブランド力を強める方針にしたのだろうと解釈しています。最新技術トレンドを追うのではなく、安心と信頼を売りとして、「高いけど買えばまあ失敗しないだろう」と思わせる、そういう方向に進んだものと想像しています。

 ティム・クックCEO時代のアップルは持続可能性や地球環境に言及することが多いですが、エコロジカルなメッセージも「安心して長く使えるアップルという高級ブランド」に寄与するところが大きいのではないかと考えています。

 そこでアフターケアですが、高級ブランドは一般に高いものを売るだけではなく、お客さんのごひいきになるためアフターケアにも力を入れています。「お求めいただいたお品は古くなっても修理に出すことで末永くお使いいただけます」と「長い目で見ればコスパが良い」系統の説明で製品を売り、ほかのブランドに浮気をさせないようにしています。高級ブランドがよくやる顧客囲い込みの手口です。アップルはこうしたブランド戦略をなぞっているのではないかと感じます。

 また最新OSが動けば、おなじアプリも動き、アップルはApp Storeからの収益を得られます。端末によってアプリの体感が違っても課金額はおなじ。これもiPhoneをたくさん売れなくなったとき業績を下支えするものと理解できます。

 スマートフォンは一般にOSや半導体が新しくなるたびバージョンが古くなり買い替えをうながされます。特にAndroidはベースとなるOSを作っているのがグーグルなのでメーカーが5年以上前のモデルをサポートするのは難しく、2~3年でOSのバージョンアップが打ち切られてしまう製品も多いです。一方アップルは製造(組み立て)こそ台湾のホンハイに外注しているもののチップやOSは自前で作っているため、比較的調整をしやすくなるという理屈があるように思います。

 振り返ると、アップルはiPhone 5sを出したときから長く使うことを前提に設計してきたのではないかとも感じます。5年前の2013年9月に発売したiPhone 5sは64ビット版モバイルARMをチップ(SoC)に使った初めてのiPhoneで、iPhone 5までとはOSの構造が変わっています。最新モデルiPhone XSもSoCはやはり64ビット版モバイルARMベースで、iPhone 5sとおなじOSが使える仕組みです。

 まとめると、スマートフォン市場が縮小する中、アップルは最新のiPhoneを高くすることで売上を伸ばし、App Storeからの収益を減らさないため昔のiPhoneは使い続けてほしいと考えた。そこで高級ブランドと同じ戦略を強めることにした。サポートやアフターケアも戦略のうちではないかという想像です。

 変化の速さを代表するコンピューターの世界で「長く使える」というのは語義矛盾のようですが、それこそ今のアップルが挑戦している部分なのかもと感じます。個人的には、気に入らない仕様や製品ラインナップをポンポン捨ててしまうアップルの高慢さは好きではなく、いまだに小型高性能のiPhone SE2を出してほしいという気持ちは変わらないのですが、なんだかんだでiPhoneは使いやすいしサポートもあるならまあ妥協するかなあ……くらいの気持ちでいます。余談でした。



書いた人──盛田 諒(Ryo Morita)

1983年生まれ、家事が趣味。赤ちゃんの父をやっています。育児コラム「男子育休に入る」連載。Facebookでおたより募集中

人気の記事:
育児はすごい、地獄と幸せが同居している」「スマホどうぶつの森が地獄でした」「谷川俊太郎さん オタクな素顔

前へ 1 2 次へ

カテゴリートップへ

この連載の記事

ASCII.jp RSS2.0 配信中