メルマガはこちらから

PAGE
TOP

技術の寄せ集めでは、社会課題は解決できない、NTTデータが世界のスタートアップを探す理由

第9回 豊洲の港から presents グローバルオープンイノベーションコンテストの応募開始

特集
「NTTデータ 豊洲の港から」イベントレポート

提供: NTTデータ

1 2 3 4

ソーシャルメディアの使い方が、日本と欧米では大きく違っていた

 しかし日本と欧米では社会が抱える課題には差がある。言語の壁や文化の壁もある。協業への障壁にならないのだろうか?

高野 「ソーシャルコインはスペインの企業です。日本でビジネスを展開しようとした場合、『言語という大きな壁』があります。しかし彼らの強みであるAI技術は言語によらない設計です」

盛り上がっているトピックの代表的なツイートもチェック可能

 困難に感じるのは技術的な側面よりも、むしろ文化的な差異だという。

高野 「ソーシャルコインは、スペインやニューヨークでPoC(概念実証)は回していて、一定の成果を上げています。ならば、日本でも同じことができるはずだと実験してみたのですが、ここで日本人のソーシャルメディアの使い方が、欧米とはかけ離れたものだと痛感しました。他国では自身のブランディングとして意味のあるコメントを投稿する人が多いのに対して、日本人はライフログで埋め尽くされています。意味のあるコメントも存在しますが、課題発見とは無関係なライフログに埋もれてしまい、課題を導くために重要な情報を抽出していくのが難しいのです」

 しかし様々な人のツイートや書き込みを見ることは、今までにない課題を発見するための視点を与えてくれた。困難を超えるだけの意味がある取り組みだ。

高野 「都市の課題を見つけようと思った場合、いままでは『少子高齢化』が問題になっているから、その軸で仮説を立ててデータを眺めてみようといった手法になりがちでした。例えば、秋田県は高齢化率が日本一だからきっと『高齢化が問題になっているはずだ』と考えがちです。しかし、実際に秋田県で暮らす市民の声を分析すると『電力と環境の問題』だったり、『交通の問題』のほうが市民の間で多く会話されているということが見えてきます。

 これはマスコミの報道や統計データなど、マスの情報だけでは分からないことです。しかしTwitterをはじめとしたソーシャルメディア上の市民の会話データをみれば、そこに住む市民がどのような課題に直面しているかが分かるようになります」

 両者の協業はビジネス面でも、具体的な成果を上げつつある。

高野 「潜在的なニーズはある分野でした。政府や自治体などから何件か受注が取れています。事例としては国が『国民の困りごと・直面しているリスク』を知りたいというもの。ほかには災害対策やインバウンド訪日客の課題を明確化するといったものがあります。日本語の書き込みだけでなく、外国語での書き込みも分析しています。

把握したいテーマに関わるトピックをAIが拾ってダッシュボードに表示

 クライアントにはツールを提供するだけでなく、『市民の不安ごとの背景や、課題を解決する上での対策案』といったことをインサイトレポートとして報告しています。今後は、地域課題発見の成功事例を自治体向けに横展開するとともに、実際にその課題を解決するために市民の社会活動参画を促す仕組みへとソリューションを発展させていきたいと考えています」

あくまでも対等な関係として、エコシステムを広げる

 大企業とスタートアップの連携と聞くと、資本や技術的な面での支援を想像しがちだ。しかしNTTデータとソーシャルコインは、そのイメージとは異なる。あくまでも対等な関係でビジネスを立ち上げているという。

高野 「技術協力に加えて、当然ながら日本市場に展開していく上でのセールス(営業)もわれわれが担当しています。セールスのための要員をあて、一緒に技術を広めていこうとしています。見つけ出した『社会の課題』に沿って市民を動かし、社会を改善するという最終目標を日本に適用させるには、どういう仕組みにすればいいか。その議論をするために彼らとは2週間に1回テレカンで話し、3ヵ月に1度は対面でミーティングをしながら関係を作っています」

3ヶ月に1回は顔を合わせて開発からマーケティング、成長戦略まで広く議論

 一方からの支援というよりは協力関係にある両社だが、規模も考え方も異なる2社が協業することに難しさはないのだろうか?

高野 「スタートアップ企業は、大きなビジョンを掲げる一方で、プロダクトには未成熟な部分も残っています。しかし、プロダクトが未成熟である点は、新しいこと・新しいマーケットに対してチャレンジしている以上、仕方がないことだと思っています。スタートアップと連携する上で、まずは目的地に向かってまず進むことが重要です。目的地に向かうために初めから自動車を作るのではなく、スケートボードを足で漕ぐところから初めて、進みながら自転車やバイクなど速く走れるものに変えていくという考え方が必要です。この考え方はシステムという「完成品」を納品するNTTデータの文化とは相反する部分があります。そのため、完成したものを求めるお客様や社内関係者と、新しい価値創造にチャレンジを形にしようとしているスタートアップの間に生じる期待値の乖離をうまく埋めながら、案件につなげていくことに常に気を使っています」

1 2 3 4

合わせて読みたい編集者オススメ記事

バックナンバー