軍の防空管制システムで
性能よりも信頼性を高めたことが功を奏する
軍との関係も相変わらず悪くなく、1958年にはSAGE(Semi-Automatic Ground Environment:半自動式防空管制組織)という北米の防空システム向けにAN/FSQ-7 CDC(Combat Direction Central)という巨大なシステムを納入している。
画像の出典は、Internet Archive上のMITRE CorporationのMITRE History
旧ソビエト連邦との冷戦状態、1955~1958年は雪解けの時代などと評されているが、1958年のベルリン危機をきっかけに緊張が急速に高まり、1958~1962年までは危機の時代と呼ばれていた。
軍部としては、雪解けの時代にあっても「急に状況が変わっても対応できる」ように備えるのは当然であるが、この当時では核爆弾を積んだ爆撃機が米国に侵入されそうになっても、それを検知して対応するのが難しかった。全米ともなるとなにしろ海岸線も長いため、レーダーを使って検知するにしても、複数のレーダーサイトで連携をする必要がある。
ところがそのレーダーからの検知情報を電話で伝えているという状況では、仮に爆撃機を検知したとしても、それがどこから侵入してどこに向かっているのかを判断するのは難しい(人手で計算していたら間に合わない)という状況になっていた。
そこで、レーダーサイトからの情報を元に、侵入した爆撃機の進路を予測し、これに対して迎撃をかけるという一連の作業を半自動化する必要があると判断された。ということで、レーダーからの情報を元に爆撃機の進路を予想し、これを基に迎撃機あるいは迎撃ミサイルに指示を出すという計算を行なうための巨大なマシンが必要になった。
これがAN/FSQ-7で、当初RCAに発注されたものの、後にIBMに変更されている。ちなみにAN/FSQ-7のベースとなるのはマサチューセッツ工科大学で開発されていたWhirlwindというマシンであるが、メモリーとして磁気コアメモリーを利用することで、この当時としては最速のプロセッサーであった。
ただ実用化にあたっては、AN/FSQ-7はプロセッサー2台を一組としてホットスタンバイ構成を取ることで冗長性を高めたほか、性能よりも信頼性を高めるべく真空管の動作電圧を下げるなどの対策をとることで、この時期のシステムとしては驚異的ながら、99%を超える稼働率を実現したという話もある。
SAGEシステムがどこまで実用的だったのかという話はいろいろある(*1)のだが、大規模な航空交通管制システムとしてのSAGEの価値は疑いようがなく、これはのちの民間航空機の管制システムなどに大きな影響を与えたし、IBMはこの経験を元にアメリカン航空のSABREという旅客機の座席予約システムを開発したりしている。
(*1)ソビエト連邦は最初のICBMであるR-7を1959年2月に実戦配備しているが、SAGEはICBMへの対応ができなかったと言われている。
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