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ルネサスが7000億円の大型買収、狙いは米大手との衝突回避

2018年09月26日 06時00分更新

文● 週刊ダイヤモンド編集部(ダイヤモンド・オンライン

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9月11日、IDTの買収について記者会見したルネサスの呉文精社長は「インターシルもIDTも、ルネサスと非常に企業文化が近い」と指摘し、統合作業に自信を示した Photo:REUTERS/アフロ

「エヌビディアとぶつからずに済んでよかったよ」──。国内の半導体業界から漏れたのは安堵の声だった。

 半導体大手ルネサスエレクトロニクスが、米同業のインテグレーテッド・デバイス・テクノロジー(IDT)を7330億円で買収すると発表した。来年1~6月期に買収を完了する予定で、2017年に約3200億円で買収した米インターシルに続く大型買収だ。

 世界の半導体再編に目を転じると、インテルのモービルアイ買収やNXPによるフリースケール買収に加えて、クアルコムがNXPを買収しようとしたことも含め、全てはルネサスが強みを持つ自動車用半導体の市場で起こった。

 さらに、米エヌビディアは、自動運転の「頭脳」に当たる半導体で、自動車メーカーとの提携を広げており、ルネサスの事業領域に攻め込んできている。

 これを迎え撃つルネサスが買収先として選んだのがIDT。ただ、IDTの事業領域はアナログ半導体で、データセンターや通信機器向けが大半であり、自動車向けは10%程度にすぎない。インターシルも汎用のアナログ半導体が主力事業で、自動車向けの売り上げは小さく、いずれもルネサスにとっては「飛び地」の領域だ。

 つまり、この2社の買収が意味するのは、インテルやエヌビディアの半導体大手がしのぎを削る自動運転の激戦地から距離を置き、競争の少ないニッチな分野にかじを切ったということ。自動運転の頭脳をめぐる戦いを回避したルネサスが今後、自動車市場やIoTの分野で、アナログ半導体事業を強化する構えを鮮明にしたのだ。

1兆円規模の無形資産がリスク

 だが、インターシルとIDTの売上高を単純合計しても1500億円規模にすぎず、合わせて1兆円を超える買収額で得られる事業としてはあまりに小さい。むしろ懸念が高まっているのが、買収額と純資産の差額に当たる「のれん代」だ。

 ルネサスによると、2社を合わせた無形固定資産の合計は9400億円程度になる見込みという。このうち、のれん代は、およそ7000億~8000億円程度とみられるが、ルネサスは18年12月期の決算からIFRS(国際会計基準)の任意適用を始める予定で、買収後の収益悪化は、のれん代の巨額減損になりかねない。

 ルネサスがIDTと協議を始めたのは6月からで、3カ月でのスピード決着だった。関係者によると、それより前から複数のアナログ半導体メーカーを候補に検討を始めていたが、いずれも半導体再編で価格が1兆円を超えて高騰し、手が出せなかったという。

 その中でつかんだIDTも、純資産が5700億円規模のルネサスにとって巨大なことに変わりない。まずは、このリスクに耐えて戦い抜くことが課題になる。

(「週刊ダイヤモンド」委嘱記者 村井令二)


※本記事はダイヤモンド・オンラインからの転載です。転載元はこちら

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