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「ブロックチェーンは世界を救う」WEFがぶち上げた構想の現実味

2018年09月20日 12時28分更新

文● Mike Orcutt

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世界経済フォーラム(World Economic Forum:WEF)は、ブロックチェーン技術が世界を救う助けになると主張している。

WEFが発行した新たな報告書は、 気候変動はもちろんのこと、自然災害や水不足といった環境問題を解決するためにブロックチェーンを活用できる65の「現在適用中または今後適用予定の活用例」を紹介している。ピアツー・ピア(P2P)のエネルギー取引 といったコンセプトが、送電網にさらなる効率性と弾力性をもたらす一方、非中央集権型システムは災害後に重要情報を広めることに役立つだろう。温室効果ガスの排出抑制についてはどうだろうか?「暗号トークン化された」二酸化炭素排出権(炭素クレジット)が役に立つだろう。

WEFの主張は正しいかもしれない。しかし、現実に目を向けると、報告書も認めているように、紹介されているアイデアの大半は、単なる構想もしくは試験的なものに過ぎない。また、ブロックチェーン・ネットワークは、それ自体が環境問題を引き起こす可能性も持っている。最も普及しているブロックチェーンにいたっては、共有台帳内の情報が正確であるという合意に到達するために参加者が用いるプルーフオブワーク(proof-of-work)と呼ばれるプロセスを実行するために、小さな国1つ分もの電力を消費するのだ。

今後、エネルギー効率の高い合意メカニズムが現れ、大きな成功を収めるかもしれない。しかし、合意メカニズムの持つ技術的障害を取り繕うことはできない。スケーラビリティや環境の持続可能性に関連する課題については、参加者に自分自身を識別させることを義務付けるブロックチェーン・ネットワークへと方向転換することで克服できる可能性がある。これにより、ネットワークの他の人々に自分たちが信用に足ると納得させるためにかかるコストが削減される(そうした構造は、ブロックチェーンの匿名性という根幹的な考えを弱体化させると多くの人が主張するかもしれないが)。向かう先がどのような道であれ、地球の環境問題に対処する以前に、ブロックチェーン・ネットワークは自らの環境上の課題に対処しなければならない。

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