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IoT&H/W BIZ DAY 6 by ASCII STARTUP 第31回

IoT&H/W BIZ DAY 6 by ASCII STARTUP基調講演:

日本はIoTで世界一になれる

2018年09月18日 12時00分更新

文● 盛田 諒(Ryo Morita)

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●小さく当てて大きく育てる

 松本氏はまずIoTで知られるBtoCベンチャーをいくつか挙げた。

 アーリーステージなら、財布や鍵の紛失をふせぐ紛失防止タグのtile。スマートスピーカーの走りであるjibo。ミッドレイヤーなら、Facebookに買収されたVRディスプレーのOculus。Pebbleを買収したヘルスケアデバイスのFitbit。グーグルに買収されたサーモスタットのnestなどだ。日本で知られているベンチャーの名前も多いが、まだビジネスとして大勝ちした例は少ない。

 逆に、IoTベンチャーには浮かない話も多い。Parrotは2017年にドローン部門から35%のレイオフを発表した。Jawboneはやはり2017年に破産手続きに至った。WIREDが「Hardware is Hard(ハードウェアは難しい)」と皮肉ったように、IoTは最終的にモノのビジネスになるため、経営はたやすくない。

 そもそもIoTビジネスとインターネットビジネスのちがいは何か。

 構成要素を見てみると、インターネットにつながる端末がスマートフォンやパソコンではなくモノであるということになるが、それでは説明ができない。一番の違いはモノが搭載するセンサーだと松本氏は考える。温度、明るさ、速度、センサーから取得したさまざまな環境データをAIで分析し、ふたたびモノに返すことでモノの制御を最適化するのがIoTビジネスの本質ではないかというわけだ。

 そこで勝つためにはモノすなわち産業への深い理解が必要になる。そのため最初は小さな問題解決からはじめることになるかもしれないと松本氏は考える。

 例としてあげたのはアメリカの農業系IoTベンチャー。トラクターのガソリンタンクにセンサーをつけ、ガソリンがなくなりそうになったら運搬するというサービスだ。タンクをもっている大規模農家はアメリカに200万世帯ほどしかいないものの、「ガソリンがなければ従業員が働けない」という切実なニーズをとらえることで堅実なビジネスがつくれる。そこで終わらせず、同じ仕組みを別の産業に応用することでスケールアップをはかれるのがIoTのおもしろみというわけだ。

 「グーグルのプラットフォームがあればできるのでは」と思うようなことも、実務には使いづらいことがある。現場にとってUIが使いづらかったり、かゆいところに手が届かないといった課題だ。そのときシステムインテグレーターのように専用のシステムをつくるのではなく、広範にスケールできるサービスを考えられることこそが、IoT時代の勝ちパターンになるという発想だ。初めは小さく、しかし100%確実に当て、やがて大きく育てていくような考えといえる。

 「たとえばヤフーのサービスはみんなが70%いいと思っている。IoTは、農家が100%いいと思うようなサービスをつくることが大事」(松本氏)

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