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キヤノンとニコンが今夏フルサイズ版ミラーレスに参入した事情

2018年09月14日 06時00分更新

文● 週刊ダイヤモンド編集部(ダイヤモンド・オンライン

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ニコンとキヤノンの会見の様子
Photo by Yoko Suzuki

 一眼レフの二巨頭もついに、“本丸”を明け渡すことになるのだろうか――。世界の一眼レフカメラ市場のシェアを二分するキヤノンとニコンが、相次いで初のフルサイズミラーレスカメラを発表した。フルサイズミラーレスは、画質では一眼レフと同等以上の写真が撮影できるカメラだ。

 両社とも、これまでのマウント(カメラボディとレンズを接合する機構)を変え、新たにフルサイズ用のミラーレスレンズも発売する。また従来の一眼レフカメラのレンズも専用のアダプターを使うことで旧来の一眼レフのレンズも使えるようになる。

「ニコンの100年の技術の集大成で、プロはもちろん幅広いお客様に使っていただける製品。このシリーズでミラーレスカメラシェアナンバーワンを目指す」とニコンの牛田一雄社長は訴え、「これまでの一眼レフカメラでは撮影することができなかった写真が撮れる。もちろんこのカメラでフルサイズミラーレスでもトップシェアを狙う」とキヤノンの真栄田雅也社長も鼻息が荒い。

 そもそも両社は、プロカメラマン向けの商品をこれまでミラー付きの一眼レフカメラで揃えてきた。キヤノンのミラーレス製品は、センサーのサイズが一眼レフ換算よりも小さいサイズのものしかなく、基本的にはノンプロ向け。ニコンに至ってはエントリーユーザー向けに2011年に発売し、その後生産を中止したNikon1以外にはミラーレスを出していない。

 その二社がそろってフルサイズミラーレスを出す背景には、ミラーレスカメラの急拡大が、既存の一眼レフ市場をも飲み込もうとしているという事実がある。

 ミラーがないため本体を小さく軽くできるが、デジカメと異なりレンズが交換できるため、本格的な写真が撮れるミラーレスカメラ。「スマートフォンでの撮影やSNSへの投稿をきっかけに写真に興味を持ったものの、重く大きな一眼レフは持ちたくない」というライトユーザーを中心に支持を集めてきた。

 そしてミラーレスは、毎年縮小が続く現在のデジカメ市場を支える存在である。CIPA(カメラ映像機器工業会)の統計によると、17年の一眼レフカメラの出荷台数は前年比11.1%減った一方、ミラーレスカメラは前年比29.2%伸びた。これがデジカメ市場全体での出荷台数3.3%の増加を支えているという状況なのだ。

 当初は初心者向けだったミラーレスカメラが、一眼レフカメラの牙城であるプロ向け市場においても存在感を高めてきているのだ。ソニーが13年にフルサイズミラーレスカメラを、富士フイルムが17年にミラーレス中判カメラを投入しているのは、まさにプロ顧客の乗り換えを狙ったものだ。実際、「ボディの軽さや画質などの点で、一眼レフと全く遜色がなく、レンズのラインナップも徐々に充実してきている」(報道カメラマン)という理由で、キヤノンやニコンからソニーに乗り換えするカメラマンも徐々に増えてきているという。これまで最も高い性能を持つ製品は一眼レフカメラであり、ミラーレスはあくまでもエントリーユーザー向けと位置付けてきた両社も方針を転換せざるを得なくなった。

 18年のこの時期に2社がフルサイズミラーレスを発表したのには、もう一つ理由がある。カメラマンと一眼レフカメラメーカーにとっては最重要イベントであるオリンピックが二年後に迫っているからだ。これまで、競技会場でニコンの黒い望遠レンズとキヤノンの白い望遠レンズのどちらの本数が多いかで両社はしのぎを削ってきたが、「スポーツカメラマンでもソニーを導入するカメラマンが徐々に増えており、オリンピックでは“3社目”のメーカーのカメラを持つカメラマンも増えるのではないか」(別の商業カメラマン)とみる向きは多い。例えば、ソニーはキヤノンとニコンしか実施していなかった、スポーツイベントにエンジニアスタッフを派遣して自社カメラユーザーをサポートするサービスを一部で始めている。サービス面も含めて、2つの一眼レフカメラメーカーのライバルになりつつあるのだ。

 キヤノン、ニコンとも一眼レフ事業は今後も続け、製品も出し続けていくと表明し、プロ向けに関して表立ってはミラーレスが優位だと認めていない。だがそろってのフルサイズ参戦は、浸食されつつある市場を防衛する必要に迫られたからに他ならないだろう。あえて新しいマウントを開発してまでもフルサイズミラーレスに参戦したのはこのためだ。

パナソニック、リコーも参戦で乱戦模様に?

 実は、フルサイズ参戦が予測されているのはこの2社だけではない。パナソニック、リコー

 などの他のミラーレスカメラメーカーも、近々フルサイズミラーレスカメラを市場投入するとみられているのだ。

 フルサイズミラーレスカメラへの参入企業の増加は、今後何をミラーレスカメラ市場にもたらすのか。

 これまで、ソニーしか出してこなかったという理由もあり、フルサイズミラーレスカメラの単価はほとんど下がらず、むしろ値上がりするケースすらあった。発売と同時に値崩れを起こすエレクトロニクス製品の中では“奇跡”に近い製品といえる。一眼レフ二巨頭に加えて他社もこの市場に雪崩を打って入ってくるとなると、この状況が変わる可能性は高い。

 また、ニコン、キヤノン共に今後のミラーレスカメラはエントリー向けも含めてフルサイズで開発する可能性を匂わせている。現在オリンパスなどの他社から出ているより小さなセンサーサイズの機種は画質の点では競争に勝てず、今後淘汰が進むかもしれない。

 平成最後の夏ににわかに起こった「フルサイズミラーレス戦争」。カメラファンでなくとも、注目すべき戦いであることは間違いない。

(「週刊ダイヤモンド」編集部 鈴木洋子)


※本記事はダイヤモンド・オンラインからの転載です。転載元はこちら

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