このページの本文へ

キーワードは“キネティックインフラ”、ミッドプレーンなし設計で次世代への拡張性も担保

“管理者をITの制約から解放”Dell EMCが「PowerEdge MX」発売

2018年09月13日 07時00分更新

文● 大塚昭彦/TECH.ASCII.jp

  • この記事をはてなブックマークに追加
  • 本文印刷

 デルとEMCジャパン(Dell EMC)は2018年9月12日、コンピュート/ストレージ/ネットワークのモジュールを統合したモジュラー型インフラ新製品「PowerEdge MX」を発表した。9月13日から国内提供を開始。

 PowerEdge MXは、完全な構造を保ちながら変化に対応する“キネティックインフラストラクチャ”をキーワードに掲げた製品で、ワークロードごとにリソースプールから各リソースを動的に切り出して柔軟に割り当てられる点が大きな特徴。ミッドプレーンを排除したアーキテクチャを採用したことで、モジュールラインアップの拡充による将来的な新技術の搭載にも順応し、顧客のIT投資を長期的に保護するとアピールしている。

「PowerEdge MX」の本体。7Uシャーシに8つのモジュールベイ(前面)を搭載

デル 執行役員副社長 インフラストラクチャ・ソリューションズ事業統括の松本光吉氏

Dell EMC サーバー&インフラストラクチャ ソリューション担当 プロダクトマーケティングディレクターのジョナサン・セクラー氏

デル 執行役員 インフラストラクチャ・ソリューションズ事業統括 製品本部 本部長の上原宏氏

コンピュート/ストレージ/ネットワークのリソースを柔軟に組み合わせ

 PowerEdge MXは、今年5月に米国で開催された「Dell Technologies World 2018」において「開発中製品」として初披露されていたもの。8つのモジュールベイと冗長化電源やファンなどを備えた7Uサイズの「PowerEdge MX7000シャーシ」と、そこに搭載するコンピュート/ストレージ/ネットワークの各モジュールで構成される。今回発表されたモジュール群は次のとおり。

今回発表されたPowerEdge MXのモジュール群

 コンピュートモジュールには、2ソケット/シングルワイド(1ベイ)サイズの「PowerEdge MX740c」(最大28コア、3TBメモリ)と、4ソケット/ダブルワイド(2ベイ)サイズの「同 MX840c」(最大28コア、6TBメモリ)がラインアップされている。いずれもインテル Xeonスケーラブルプロセッサー(Xeon-SP)ファミリーをサポートしており、MX740cは最大6台、MX840cは最大8台の2.5インチNVMe/SAS/SATAドライブを内蔵可能。

 ストレージモジュールの「PowerEdge MX5016s」は、最大16台のホットプラグSAS HDDを内蔵する。1シャーシにMX5016sを最大7モジュール搭載することが可能。管理コンソールを通じて、HDD 1台単位で各サーバーに割り当てられるようになっており、サーバーのワークロードに応じた柔軟なストレージ環境が構成できる。サーバーとの接続方式はSAS DAS(ダイレクト接続ストレージ)のほか、Fibre Channel(FC)、FCoEも選択可能としている。

 ネットワークスイッチモジュールには、25ギガビット/100ギガビットEthernet(25GbE/100GbE)および32ギガビットFC(32G FC)の外部接続ポートを搭載した4モデル(MX5108n/MX7116n/MX9116n/MXG610s)がラインアップされている。たとえば「PowerEdge MX9116n」は、内蔵サーバー割り当て用25GbE×16ポートとアップリンク用100GbE×2ポート、32G FC×8ポート(または100GbE×2ポート)、ファブリック拡張用×12ポートを搭載し、レイヤ2/3のスイッチング/ルーティング機能も備えている。

 さらに、PowerEdge MX7000シャーシは管理モジュールを搭載しており、管理ソフトウェアの「OpenManage Enterprise モジュラーエディション」が組み込まれている。単一の管理コンソールから複数台のPowerEdge MXシャーシが備えるモジュール群の構成を一元管理できるほか、あらかじめ用意したプロファイル/テンプレートを適用することで高速なデプロイも実現する。また、外部ソフトウェアとしてOpenManage Enterpriseを導入することにより、その他のPowerEdgeサーバーを含むデータセンター全体のインフラを一元管理できるようになる(最大8000サーバー)。

PowerEdge MXは、OpenManage Enterprise モジュラーエディションを内蔵。外部製品のOpenManage Enterpriseを導入することで、他のPowerEdgeサーバーを含むデータセンター全体の一元管理/監視が可能になる

 なおPowerEdge MXでは、ミッドプレーンを排除した新たなアーキテクチャを採用しており、前面のコンピュートモジュールと背面のネットワークモジュールが直接接続される。またモジュールは無停止での更新/交換が可能。発表によると、将来的にはストレージクラスメモリ(SCM)、GPU、FPGAなどを搭載したモジュールもラインアップし、リソースプールとして扱えるようにすることで「完全なコンポーザビリティを提供する」としている。

PowerEdge MXは“ミッドプレーンなし”のアーキテクチャを採用。モジュールどうしは直接接続される(写真上がネットワークスイッチ、下がコンピュートのモジュールコネクタ)

 また、PowerEdge MXはヴイエムウェアのSDS製品「vSAN」の推奨構成である「vSAN Ready Nodes」をサポートすることも発表している。PowerEdge MXの税抜価格は、1545万7258円からとなっている(MX7000シャーシ、MX740c、MX5016S、ネットワーク/ストレージスイッチで構成し、導入および保守のサービス料を含む)。

SDSなど新しいタイプのワークロードにも順応、まずはHCI基盤として訴求

 記者発表会では、米Dell EMCでプロダクトマーケティングディレクターを務めるジョナサン・セクラー氏が登壇し、PowerEdge MXを開発した背景や技術的な特徴などを説明した。

 あらゆる業界の企業において「デジタルトランスフォーメーション(DX)」が求められている現在、その基盤となるITのトランスフォーメーション(変革)への取り組みが重要視されるようになっている。そうした企業の動きを支援するためにITインフラ領域でできることは何か、というのがPowerEdge MX開発の発端だったという。

 具体的には、仮想化技術を導入してもまだ大きく余剰が残るサーバーリソースのフル活用、クラウドネイティブ時代に生まれる新しいタイプのワークロードに対応するための新しいインフラ技術の迅速な導入、さらにTCO低減/ROI改善や自動化による管理性の向上などの要件がある。こうした要件を満たし、予測できないビジネス/テクノロジー変化も含めて柔軟に対応できるIT環境として、Dell EMCでは“キネティックインフラストラクチャ”というキーワードを掲げる。このキネティックインフラストラクチャというコンセプトを具現化する第一弾製品が、今回提供を開始したPowerEdge MXだという。

 「Dell EMCではこれまでもモジュラー型インフラ製品を提供してきたが、この“キネティック”という考えに合致し、従来型のワークロードと変革型の(新しいタイプの)ワークロードの両方に順応する製品はPowerEdge MXが初めてのものとなる」(セクラー氏)

Dell EMCが新たに掲げる“キネティックインフラストラクチャ”のコンセプト

 PowerEdge MXでは、大きく3つのことを実現しているとセクラー氏は語る。ビジネスニーズの変化に反応して動的にシステム拡張できる「フレキシブルなアーキテクチャ」、インフラの運用工数を軽減し効率改善を実現する「アジャイルマネジメント」、そしてITインフラに対する投資を長期的に保護する「レスポンシブデザイン」だ。

 このうちレスポンシブデザインについてセクラー氏は、シャーシからミッドプレーンを排除しただけでなく、さらなる高密度化/高消費電力化にも耐えうるなど「将来的に出てくる新しいテクノロジーも十分に受け入れられる設計になっている」と説明した。なお、プロセッサーの世代交代に追随してコンピュートモジュールも新しい世代のものが順次リリースされていくことになるが、Dell EMCでは最低でも3世代ぶん(2世代前まで)をサポートするとしている。

 「PowerEdge MX、そしてキネティックインフラストラクチャは、インフラ管理者をこれまでの“ITの制約”から解放し、イノベーションやビジネストランスフォーメーションに取り組むための基盤を作るためのものだ」(セクラー氏)

PowerEdge MXは「フレキシブルなアーキテクチャ」「アジャイルマネジメント」「レスポンシブデザイン」を特徴としている

 デル 執行役員の上原宏氏は、日本市場におけるPowerEdge MXのターゲティングや5つの販売施策を紹介した。

 上原氏は、PowerEdge MXのターゲティングを説明するために「従来型ブレードサーバーのリプレース需要」「HCI(ハイパーコンバージドインフラ)ニーズの急激な高まり」という2点を挙げた。IDCによる市場データから推計すると、2018~2019年には国内でおよそ15万台のブレードサーバーが更改期を迎える。その後継製品としてPowerEdge MXを提案したいというのがひとつ。そして、年平均成長率20%以上で推移すると予測されているHCI市場において、既存のモジュラー型インフラ製品(PowerEdge FXなど)と共に提案していきたいというのがひとつだ。

 特に従来型ブレードサーバーを導入している顧客で、拡張性や柔軟性の高いHCIにインフラを転換していきたいと考えている顧客は大きなターゲットだと考えているという。ブレードサーバーが登場した時代にはSDS(Software-Defined Storage)のようなワークロードは存在しなかったため、そのハードウェア設計(特にミッドプレーン)が障壁となっている顧客が多いという。そこにHCI基盤として高密度にノードを収容でき、ケーブル配線の問題も生じないPowerEdge MXへの乗り換えを訴求していく。

 国内販売施策については、顧客企業やパートナー向けの検証施設「キネティック インフラストラクチャ検証センター」の設置、サーバーテクニカル営業職(約130名)を対象とした「社内エキスパート育成プログラム」の開始、専任プロジェクトマネージャーによる包括的導入支援サービス「ProDeploy Plus」の提供、サービス料やサポート料も含め金利ゼロで3年間リースを提供する独自ファイナンスプログラム、PowerEdgeサーバーの差別化ポイントを訴求する「Did You Know?(ご存知でしたか?)」キャンペーンの展開やパートナーエコシステム強化、という5つを実施していくとした。

ゲスト登壇した新日鉄住金ソリューションズ 取締役 常務執行役員 ITインフラソリューション事業本部長の大城卓氏

 なお、発表会にはゲストとして新日鉄住金ソリューションズ 取締役 常務執行役員の大城卓氏も登壇した。大城氏は、同社のソリューションプロバイダーとしての側面、またSIerとしての側面を紹介しながら、その両面でDell EMCは長年にわたる重要なパートナーだと説明。今回のPowerEdge MXについては、まずクラウドサービス「absonne(アブソンヌ)」のインフラとして採用を検討していくほか、将来的にGPUサポートが進んだ段階で画像認識プラットフォーム「KAMONOHASHI(カモノハシ)」への適用も考えていきたいと語った。

 また冒頭の挨拶に立ったデル 執行役員副社長の松本光吉氏は、グローバルのDell Technologiesが堅調な業績を挙げており、インフラストラクチャ ソリューションズ グループ(サーバー/ストレージ製品の事業部門)単体では最新四半期(2019会計年度第2四半期)に前年同期比24%増の売上成長となったことを報告した。また国内市場では、x86サーバー市場において2018年第2四半期に46.3%の成長を達成した(IDC調査データに基づく)としている。

カテゴリートップへ