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「好きなこと」を仕事にする人が不幸になりかねないワケ

2018年09月12日 06時00分更新

文● 本田直之(ダイヤモンド・オンライン

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写真はイメージです Photo:PIXTA

巷でよく聞く「好きなことを仕事に」。耳触りがよく若者に歓迎されるフレーズだが、うかつに趣味を仕事にしてしまうと、逆に好きなことから遠のくことになるかもしれない。趣味と仕事を両立させるにはどうすればよいのか? 本当に満たされた人生を送るためのヒントを、本田直之氏の『何を捨て何を残すかで人生は決まる』(青春出版社刊)から抜粋して紹介する

「好きなことを仕事にする」はまやかし

 若い人向けの本を読んでいると、よく「好きなことを仕事にしよう!」というフレーズを目にします。耳心地のいい言葉ですし、確かに好きなことを仕事にできたら幸せになれそうな感じがします。でも、わたしはこの言葉自体が好きではありません。なぜかと言うと、「好きなことを仕事にしよう!」というアドバイスが無責任な一種のまやかしだからです。

 例えば、サーフィンが好きな若者がいたとしましょう。彼は海の近くで、好きなサーフィンを感じながら働きたいと、サーフショップの店員になったとします。

 わたしもサーフィンが趣味で、ハワイでは毎日のように楽しんでいるほど大好きです。でも、もし若い頃にサーフショップの店員になっていたら、確実にサーフィンが嫌いになっていたと思います。なぜなら、サーフィンが好きな人が第一に考えるのは、「波がいい時にすぐ海へ行きたい」「そのために波のあるところの近くに住みたい」ということだから。

 サーフショップはたしかに海の近くにあります。でも、店員になってしまった以上、どんなにいい波がきても営業時間中に店を抜け出すことはできません。売上を伸ばすためには好きでもないメーカーのサーフボードを売らなければいけない場面も出てくるでしょう。なにより生活の糧を得るためにサーフィンを我慢して、サーフィンのできる環境の中で店にいなければいけないのです。

 つまり彼は、好きなことを仕事にするという手近な選択肢を手にしてしまったことで、逆に好きなことから遠のいてしまったのです。

 サーフィンが好きでライフスタイルの中心に置きたいのなら、まず考えるべきなのは、いい波が来た時にすぐにすぐに海に行ける自由さと、海の近くに住まいを構え、都市部へ出勤しなくてもいい生活をどう組み立てていくか。手に入れたいライフスタイルを実現するための仕事を探すこと。一番避けるべきなのは、時間給的な仕事です。

 また、「旅行が好きだから旅行代理店を第一志望に面接を受けています」という就活生と会うこともあります。この発送もまた短絡的すぎて、わたしは理解できません。たしかに旅行代理店に就職し、ツアーコンダクターになれば旅行はできます。

 ただ、ツアーに参加する人たちの多くは旅慣れないお客さんたちです。彼らを通り一遍の観光地へと案内する仕事が、旅好きを満足させるとは思えません。むしろ、仕事でする決まりきったツアーを重ねるうち、旅そのものを嫌いになってしまうのではないでしょうか。

好きなことを本気で続けると仕事になっていく

 ここでも選択肢としては、きちんと休暇の取れる別の仕事を持ち、自由な旅を大切にするライフスタイルの方が幸せに近づくはずです。そしてそのライフスタイルを続けるうちに、旅を通じて得たさまざまなインプットが自分のスキルと組み合わさり、好きな遊びが仕事になるということが起こります。好きなことを仕事にするのではなく、好きなことが仕事になっていくのです。

 わたしの場合、旅を通じてさまざまな国や地域の食を楽しむうち、日本やハワイの飲食店にアドバイスをするようになり、今では海外に進出するレストランの顧問も務めています。

 好きと仕事の関係で大前提となるのは、「いきなり好きなことを仕事にしてはいけない」ということです。まずは個人としてきちんと稼げるビジネスのスキルを身につけ、好きなことを趣味として自由に楽しめるライフスタイルを作りあげていきましょう。それができないまま「好きなことを仕事にしよう!」「嫌いなことはしたくない!」と理想を追いかけても、道は開けません。

「プロ」は練習を大切にする

 わたしたちがプロのスポーツ選手の活躍を目にするのは、試合でプレー中の姿です。しかし、わたしたちの目には入らないところで、彼らプロのスポーツ選手は試合に出るため、日常の大半の時間を練習に費やしています。競技そのものの練習もあれば、コンディションを整えるためのジムトレーニング、食事のケア、生活サイクル作りも試合に出るための練習の一環です。

 彼らはそれを誰かにやらされているのではなく、プロとしてお金をもらい、レギュラーとしてポジションを取って活躍するために自ら行っています。

 一方、会社で働く人にとっての試合とは? と考えた場合、通常の業務そのものが試合と言えるでしょう。プロのスポーツ選手と比べると、会社員が行う試合の回数は多く、プレー時間も長く、出場機会にも恵まれています。

 では、あなたは試合に向けてどれくらいの練習を積み重ねているでしょうか。ビジネスパーソンにとっての練習は「勉強」です。普段の仕事が本番で、勉強が練習。プロのスポーツ選手で、練習をせずに試合にだけ出る選手はいません。勉強しないのは練習をサボるのと同じです。業務時間以外に、本を読み、いろいろな人に会い、うまく仕事をしている人のやり方を観察して学び、自己投資をしなければ、先細りしてしまいます。

会社の外に出ても通用する人の共通点

 プロのスポーツ選手の場合、トレーニングと試合に費やす時間の割合は「4対1」程度と言われています。しかし、30代から50代のビジネスパーソンが1日のうち「学習・研究」に使う時間はわずか10分程度(総務省統計局、社会生活基本調査)。一般的なビジネスパーソンは毎日10時間程度仕事をしていると考えると、トレーニングと試合に費やす時間の割合は「1対60」となります。

 多くの人が明らかに練習不足のまま試合に臨んでいるわけです。だからこそ、意識的に練習をしている人は際立った存在になることができます。例えば、30代で頭角を現すビジネスパーソンは、20代で徹底的に勉強をし、仕事に集中した時期を経験しています。わたしの場合、今までの人生の中で一番熱心に勉強をしたのはアメリカに留学していた20代の半ばです。日中は学校で、帰ってからは自分の部屋で、文字通り「脇目も振らず」という感じで勉強ばかりしていました。

 30歳までに独立するという目標に向け、ひたすらステップアップしたいという強い気持ちはあったものの、お金はなく、他にやることもなく、ただただ必死でした。そんなわたしにある日、クラスの先生が「人生をもっと楽しめ」と言ったことがあります。

 しかし、自分にとってアメリカでの留学期間は遊びではなく、土台となるスキルを磨く投資だと思っていたので先生の言葉はまったく響きませんでした。人生を楽しむのはどこに出ても戦える能力を身につけた後にすればいいこと。練習と試合と遊びの順番を間違えてしまうと、ライフスタイルそのものが崩れてしまいます。

自分で自分のコーチになる

 会社の外でも通用する人に共通しているのは、練習量の多さと練習への取り組み方を知っている点です。加えて、練習を積んでいる人は「量が質に変わる瞬間」を経験しているので、ますますトレーニングという自己投資に多くの時間を使うようになります。

 プロのスポーツ選手は、「もっとうまくなりたい」という思いがあるから自らの意思で動きます。ビジネスパーソンも同じで、「もっと仕事ができるようになりたい」「自分を高めたい」という気持ちがあれば、自然と勉強に時間を費やすようになるはずです。

 また、スポーツ選手にはコーチがいて練習プランを作り、管理やアドバイスをしてもらえますが、ビジネスパーソンにはコーチがいません。自分自身で勉強し、あなたを導くコーチになるしかないのです。それができた時、あなたはどこに出ても成果を出せる力を備え、やらなくていい仕事を手放し、自由に働くことのできる人間になっているはずです。


※本記事はダイヤモンド・オンラインからの転載です。転載元はこちら

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