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アグリゲートとビックローブのコラボで見えた「生産」から「小売」までの可能性

八百屋×IoTで解決できる課題とは

2018年09月13日 11時00分更新

文● コヤマタカヒロ 編集●北島幹雄/ASCII STARTUP 撮影●曽根田元

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ビッグローブ(BIGLOBE)がさまざまな企業の事業改善に役立てるべく販売している、AndroidベースのIoTデバイス「BL-02」 。すでに工場や百貨店などさまざまなシーンで使われているが、想定シーンの1つに農業がある。労働人口減少や高齢化で多くの課題を抱える第一次産業こそ、ITの力で問題が解決できるのではないか。今回は、農業分野でIoTデバイスが活躍できる可能性について、生産から農産物の流通・加工・販売までを手掛けているアグリゲートの代表取締役CEO左今克憲氏、ビッグローブでIoTデバイスを担当する法人事業本部の羽石斉氏と森崎泰弘氏による対談の模様をお届けする。

左から、アグリゲートの左今克憲代表取締役CEO、ビッグローブの法人部事業部の森崎泰弘氏、同じく羽石斉氏

畑から小売りまで一気通貫するビジネスモデルとITの関係

アイデアを形にする業務用IoTデバイス「BL-02」

――本日はよろしくお願いいたします。農業×IoTという本題に入る前に、まずアグリゲート社について教えてください。東京都内に旬八青果店/旬八キッチンという都市型の八百屋を運営されているほか、旬八農場では実際に生産にも携わり、農産物の流通や卸なども行なわれています。そのような幅広い事業展開の理由から聞かせてください。

左今克憲氏(以下、左今):うちは食と農業の領域でやっている会社で、今年で個人事業の時代を合わせて10年になります。事業戦略は「SPF」と名付けていて、アパレル業界のSPA(speciality store retailer of private label apparel 衣料品の企画から製造・小売までを一貫して行なうビジネスモデル)のアパレル(A)をフード(F)に変えて、農産物の生産から消費までやっている会社です。川上から川下まで一気通貫しているので、どこか一部だけが得をするような構造にはしていません。

羽石:我々が販売しているデバイス「BL-02」が農業のどのようなシーンで活用できるのか、今日は深くお聞きしたいと思います。

農業のデジタル化とIoTの可能性

農家向けサービス「FARMERS POCKET」現状分析に必要な売上レポートを簡単・自動で作成できるほか、納品書・請求書も自動作成することにより、毎日の事務作業にかかる時間を大幅に軽減

羽石:左今さんの所で提供されている農家向け業務負荷軽減サービス「FARMERS POCKET」のユーザーには、高齢の農業従事者はいらっしゃいますか?

左今:やはり50代ぐらいまでの方がほとんどですね。LINEで会話ができるぐらいのスキルがあれば、できるようにはなっているんですが。

羽石:やはりそうなんですね。我々が開発したIoTデバイスでは農業も対象にしていて、たとえば、センシングによって水温や気温が監視できます。何らかの異常があったときに通知して、手を打てるようになると考えています。若い農家の方からお問い合わせをいただいたこともあるんですが、そもそも農業にこういったIoT機器は役に立つのでしょうか、また個人の農家の方が投資できる金額なんでしょうか。

左今:農家の方で、個人での投資はなかなか難しいと思います。また、水温などの情報がわかったとしても、それを使いこなすためのオペレーションと人材マネジメントがついてこないと思います。

森崎:どうやって活用するかまで、しっかり付き合う必要があるということですよね。今はその仕組みがないため、民間ではなかなか難しい。

左今:国としてもそういうことをしていかなければいけない、という流れにはなっていると思います。今、70代以上の方がノウハウを持たれていますが、それをどう教えていいかもわからないという状態。このままだとノウハウが分断されてしまうので、国としても短時間で教えていかなければいけないと考えているようです。

 たとえば自社農場では、手作業と機械を使った場合の時間を比較しています。すると10倍ぐらい違うんです。機械の減価償却費をにんじん1本の単価や作付面積から計算したり、機械が他の収穫物に使い回せるか、手間を減らせるかを調べて、そこから売り先を決めていく。そうすることで収益が出るようにできているんです。こういうやり方だけでも農業の形は変わっていくと思います。今の農業は体系的に整理ができていないと思います。

森崎:有名な話ですが、「獺祭」(山口県岩国市にある酒造メーカー・旭酒造が製造する日本酒)などはこれまで職人がやっていたことをデータ化して、いい品質で誰もが作れるようにしました。それが評判になって高値でも売れているような状態です。同じように農家の方々が持っていたノウハウが標準化できれば、1年目、2年目でも同じような品質の作物が作れるようになって、それがブランドになって話題になって、高値になるみたいなことがビッグローブとしてもできたらと思っています。

左今:匠の技術を1年目、2年目でも再現できるようにするっていうのはニーズがあると思います。自治体からのニーズもあるでしょうね。

森崎:たとえば70代の匠の畑にいろんなセンサーをつけさせてもらって、いろんな数値が取れればそのデータを利用できるというわけですね。

左今:匠たちは温度の変化で何をするとか感覚的に決めているんですよ。何日前は何度だったという経験があるんです。そういうデータですね。もうひとつは過去データを元にしたAIによる予想です。

 今とある生姜の産地から、地域商社を作って、さらに農業もしませんかとお声がけいただいています。生姜ってギリギリまで太らせたいし、それを過ぎると収穫できなくなる難しい野菜。それを今は、匠の勘でやっているんです。しかし、そのギリギリのタイミングを見定めるのに、ITは使えそうだなと思いましたね。

羽石:個別の品種に寄り添っていくということですね。農業のもう1つの課題が人手不足ですが、IoTデバイスは人手不足でも役立ちそうでしょうか。

左今:役に立つと思います。今は人手を掛けなくていいときにも、これまでの習慣からかけてしまっていると僕は思っています。それは製造や販売でも同じ。たとえば、販売では天候から売り上げを予測して人を減らしたりできます。

より可能性の高い販売の現場での行動センシング

旬八青果店

左今:今弊社はお弁当の製造などにおいて、お惣菜の製造でトップクラスのロックフィールドさんの財務データを分析してベンチマークしています。キッチンの動線管理や食材がどのように売れるか、天候による予測などもすぐに使えると思いました。

 製造と販売は、オペレーションと人材マネジメントをすでにやっているので、動線管理などをIT化できたらもっとよくなるだろうなとは思っています。

森崎:IoTデバイスでの動線管理のニーズはすごくあります。たとえば、大手企業の東京ドーム何10個分みたいな工場などでは、1人あたりの生産効率をあげるだけでも数十億円の効率化ができるんです。今後どんどんノウハウがたまって、デバイスが安くなっていくと使いやすいセットキットが出てくると思っています。あと5年もしないうちにそういうサービスは個人事業主の方が気軽に使える値段にまで降りてくるだろうなって思っています。

左今:すぐほしい機能は、お弁当を作る製造現場の効率化ができる仕組みです。お昼のお弁当の製造数は、今年の5月ぐらいに500個だったんですが、同じ場所で3ヵ月で1000個まで増やしています。そして、あと3ヵ月で2000個まで伸ばしたいと思っているんです。

 弊社の話ではなく、製造業をされているある社外の方からお話を伺った内容なんですが、500個から5000個まで同様に数字を引き上げたらしいんですが、そのときは毎日15分単位で動線を書いて、効率を追求したそうなんです。それをITでできたらいいですね。今後セントラルキッチンで数万個のお弁当を作るためにどうしたらいいかがわかる、そういうのがほしいです。

羽石:屋内の位置情報はビーコンという機械で取得できます。BLEビーコンなら誤差は1mぐらいで、どこにいるかが検知できます。これは数十万円から導入できます。どっちの手で持っているかレベルまで分かるような精度ですと数百万レベルになりますね。ただこれからどんどん安くなって普及していくとは思っています。また、それぞれの事業向け、農業ならレタス栽培向け、のように事業ごとに細分化されていくのかもしれません。

左今:ぜひやってみたいですね。今は記憶を元にアナログで動線管理しているので、さらにIoTデバイスを使えば気づかなかった無駄がなくなりそうです。この動線管理での効率化は、農業もまったく同じ。製造でも農業でも1人ひとりの生産性を上げないと、人手が足りませんという話になるんです。

 できれば農業では収穫時と途中の作業、梱包の作業などがフィールド別に効率化できるようになるといいですよね。今後、農業が法人化していけば効率化の話は出てくると思うんです。

森崎:どの業界でも、どういう作業に時間がかかっているのかを“見える化”したいというニーズが高まっています。まだ、大手製造業でも紙で管理しているところが多いんですが、ようやく行動センシングの可能性に気づき始めたという状態だと思っています。たとえば旅館業では、ベテランほど部屋の中に入らず入口で接客を済ませるそうです。そういった見えない動きを“見える化”して、伝えていくことが大事だということですよね。それの農業版ができたらいいなと今思っています。

左今:農業の場合は、まずはハウス栽培などの施設園芸からでしょうね。弊社ではまず、製造と販売で使ってみたいと思います。

※BL-02の製造元は株式会社オプティムとなります。
(提供:ビッグローブ)

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 2018年9月14日(金)に東京・赤坂インターシティコンファレンスにて、IoT/ハードウェアの最先端スタートアップ・キーマンが集う体験展示+カンファレンス+ネットワーキングイベントを開催します。ビッグローブBL-02については、事例も含めて、動き始めているIoTの事業化の壁を取り払うためのセミナーも開催。参加受付はコチラから!

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