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遠藤諭のプログラミング+日記 第50回

シリコンバレーではニワトリ小屋を作って鶏を飼うのが流行っているそうだ――IoT化しているけどお掃除は大変

2018年09月01日 09時00分更新

文● 遠藤諭(角川アスキー総合研究所)

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CBSニュースの記事

 ある人に「ニワトリを飼うのは動物としては小学生にやらせるくらいだから簡単なのだよ」と説明された。たしかに、小学生の頃に「ニワトリ当番」というのがあった。あれが嫌で嫌で、何かのプレイなのだろうか? と当時思ったかどうかも忘れたのだが。米国シリコンバレーのIT関係者の間で、自宅の裏庭に「ニワトリ小屋」を建てて鶏を飼うのが流行っているそうだ。

 ワシントンポストが、「The Silicon Valley elite’s latest status symbol: Chickens」(シリコンバレーのエリートのステータスシンボルは鶏)という記事をのせていた。CBSニュースも報じていて、「シリコンバレーには数千、おそらく約1万のニワトリ小屋がある」というエンジニアのコメントを紹介していた。

 ニワトリ小屋といえば、我らが国民的アニメ『ちびまる子ちゃん』にも、「 恐怖のにわとり小屋そうじ」という回があった(第46話で視聴率33.3%はちびまる子ちゃんの歴代視聴率9位だそうだ)。お掃除よりも「ニワトリとの対決」というもう1つの側面を捉えた内容だったが、そんなことに思いをはせていたら、ちびまる子ちゃんの作者さくらももこさんの訃報が舞い込んできた。

 「エンドウさん、ちびまる子ちゃんなんて読むの?」と言われたので、以下、『月刊アスキー』の連載「近代プログラマの夕」でのちびまる子ちゃんへの熱い思いを再掲載させていただく。

Something in the Life/ ちびまる子ちゃんの時代だっ(1988年7月号掲載)

写真は単行本の『近代プログラマの夕』より。

 「ちびまる子ちゃん」について紹介したいと思う。「ちびまる子ちゃん」は、わが国を代表する由緒正しき少女マンガ月刊誌『りぼん』に連載された、作者であるさくらももこのライフワークともくされる(そーでもないか)作品である。

 さくらももこといえば、「ちびまる子ちゃん」のみならず、りぼん名物“とんケチャ”の豪気なイラストレーションでそれを知る人も少なくないだろう。とまれ、この少女マンガの読み方、味わい方から始めて、今回のテーマに話を移していこうというわけである。

 さて、「ちびまる子ちゃん」の読み方…それはもう読むしかない。

 作品は、雑誌『りぼん』を読んでなかった人でも、りぼんマスコットコミックス(通称RMC)の『ちびまる子ちゃん』①②で触れることができる。「ちびまる子ちゃん」こそ、現在、最高最大級の賛辞をもって、おすすめしたい本コラム読者のこの夏の課題図書であったりすることにしよう。

 「ちびまる子ちゃん」の作者であるさくらももこの本質的な凄さは、デビュー作として、『りぼん新人まんが傑作集③虹を渡る7人』にも収録されている“教えてやるんだありがたく思え!”にすでに現われている。この作品は、タイトルからも想像できるように、学校の先生について書かれた作品である。1コマ目は「数多くいる教師――」という、あっさりしたト書きで始まる。最初のエピソードは、“生徒をバカよばわりする先生”というタイトルとなっており、さされた質問にちょっとでもまちがうと「ばーか」と血走った目でにらみながらいう…、テストの用紙にまでまぬけな解答を書いた人には、容赦なく「ばーか」と書き、友人が「ばーか」と書かれていて大笑いしていたら、じぶんのテスト用紙には、「死んじまえ」と書きなぐられていた…、というような話である。まー、エピソードの積み重ねで書かれているという点は、このデビュー作のみならず、その後の「ちびまる子ちゃん」でも見られる手法である。

 構図的に見て、少女の持っている世界を“いいつけている”わけなのだが、10ページほどの作品全体として見ると、なんともほのぼのとして爽快である。これを「エッセイまんが」として見ることもできると思う。しかし、世のエッセイまんがと呼ばれるものの水準から見ると、それだけではかたずけられないのである。『ちびまる子ちゃん』①に収録の“うちはびんぼう”シリーズもおすすめだ。「貧乏ヒマなしといいますが、うちの家族はびんぼうなくせにまるっきりまぬけでございます」という書きだしがいい。タイトルの下に“The Poor Family”などと書かれているのも、なんとなくかわいい。

ラップトップコンピュータがやってきた

 ところで、5月の連休の終わりに香港/マカオにリゾート(?)してきた。何をいまさら香港/マカオだと仰せられる向きもあるかと思うが、どっこい、お食事/お買物エリアとしてすっかり定着した感があるのも事実だ。

 おまけに、出発前にアスキーネットで香港/マカオ情報をたっぷり仕入れていったのだが、円とHKドルの交換レートが、ネットなどの書き込みでは、1HKドル20円から18円程度であるのに対して、私が到着した日には、1HKドル16円というしだいである。結果として、食い物などは体感的に日本の半値以下であり、裏通りの屋台の生ジュースにいたっては、1杯1ドル=16円となってしまう。

 さて、香港といえば、そそられるのが、そのパーソナルコンピュータマーケットについてだろう。

 有名なのが、尖沙咀の広東道沿いにある新港中心(シルバーコード)にあるAsia Computer Centerと、深水埗の黄金購物中心(ゴールデンショッピングアーケード)である。深水埗のほうは、中心部から少し離れているために地下鉄で行くことになるが、マカオからのジェットフォイルの発着所の1つが近いので、その帰りに寄ってみるのもよいかもしれない。

 Asia Computer Centerのほうは、近代的なビルの中の1つのフロアを20~30ほどのショップが占領しているというものだ。ラップトップに人気があるらしく、東芝や三洋、シャープ、AMSTRAD、Bondwellといったメーカーのマシンが幅をきかせていた。MacintoshやCommodoreの専門店などもあり、コンピュータ関連の書籍も充実している。ただ、いかにも香港らしい賑やかさがあるのは、黄金購物中心のほうだろう。こちらは、小さなショップが雑居ビルふうにつまっており、なかなかマニアックな雰囲気で、ファミコンをはじめとするゲーム関係の商品も充実しているようだ。場所も、啓徳空港への進入路になっており、すぐ頭の上をジャンボジェットが飛び、街頭では、子供が露店でモツ煮を売っていたり、名物の蛇屋がパフォーマンスをしていたり、豚の鼻の輪切りの干したのを売る露店ありで、もし、本当の香港らしさを味わいたいのなら、観光客の多い彌敦道や中環付近よりも、ここまでやってくるとよい。

 お買物として見た場合には、メーカー品はそれなりの値段がついており、ソフトのほうは、依然としてコピー品を中心に販売している店もあり、冷静に対処したいものである。パーソナルコンピュータについては、お買物で盛り上がろうというのは考えものである。むしろ、ショップの店員に世間話を持ちかけたりすると、結構のってきてくれて楽しい。

 さて、コンピュータのほうはともかく、私は、尖沙咀の海運大廈(オーシャンターミナル)にあるTOYS“Я”USで、Pre Computerという代物を手に入れた。

 このどこかで聞いたことのあるような名前のお店は、文字どおりの玩具屋さんで、1フロアながら、総面積では、原宿のキディランドや銀座博品館トイパークを上回ろうかという巨大な玩具屋さんなのである! 内容は、本場香港のポップでキッチュな玩具のオンパレード(まっとうなラジコンや幼年向けのおもちゃから、学生服の箱ほどもある巨大なシーモンキーの観察セットまで)が中心だが、入口から左側の壁に沿って何10メートルにもわたってボードゲームが並ぶさまなどは、日本の玩具屋さんでは見られない風景だ。

 私の購入したPre Computerは、“TALKING Whiz Kid”という商品で、ひょっとしたら日本でも輸入している店があるかもしれないけど、問題を出しては、キーボードでこれに応えていくという方式の、一種のCAIシステムである。問題は、“Math Activities”、“What is it”、“Matching”、“Spelling Activities”、“Musical Activities”の5種類に分類され、これらのカードを入れることで、さまざまな問題が出題される仕組みになっている。名前のとおり、液晶表示のほかにいちいち操作の説明が英語でなされる。問題の内容は、覆面算やスペリングのほかに、Hangman、Scramble、音楽の演奏をさせる形のものなどもあり、1人ゲームといった趣でけっこう楽しめてしまう。また、このマシンは、別売りのカートリッジとカードがいくつか出ており、宇宙旅行やクッキー作りといったストーリーに沿って、お勉強ができるようにもなっている。

 それから、この“TALKING Whiz Kid”の大きな特徴は、それがフタ開き式の電池駆動のラップトップ型になっていることだろう。キャリングハンドルはもちろん、ディスプレイ部分を開けるとキーボードが出てくるのは雰囲気ものである。本物のパーソナルコンピュータもラップトップに人気が集まっているのを、ちゃーんと反映しているところがにくい。

 ということで、今回は、現在おすすめの「ちびまる子ちゃん」とおしゃれなPre Computerのお話でした。

 後半が、当時まだ通い始めたばかりの香港電脳街の話になっている。あまりにも連続性のない原稿の構成なのでいまさらながら驚いているが、当時の香港の電脳街のようすがわかるし懐かしいので、最後まで再掲載させていただくことにした。TOYS“Я”USを「どこかで聞いたような」と書いたのはTEAS“Я”USのパロディ的なネーミングだから。

私のキッズコンピューターのコレクションたち。いずれも、TALKING Whiz Kidよりも後のモデル。ちなみに、TALKING Whiz Kidは、パナソニックがその後国内で取り扱いをしていました。右上のLearn'n GOは、iPodのクリックホイールにも似たすばらしいUIだった。

 『ちびまる子ちゃん』のほうは、単行本が2巻出ていたタイミングなので、『りぼん』の読者たちを中心にザワザワと人気が出てきた時期である。『ガロ』とか三流劇画とかそういうスジのマンガしか読んでなかったパソコン雑誌編集者としては、最大の賛辞を贈ったつもりなのでありました。そして、まさにちびまる子ちゃんの時代(アニメが始まるなど)がきた。それは、意外なことにバブル絶頂期のことだった。ご冥福をお祈りいたします。

テスラとニワトリ小屋

 冒頭のシリコンバレーのニワトリ小屋のニュースは、どちらも今年3月のものだが、この話題、その後もニュースで何度か取り上げられている。先日は、BBCが現地取材までかけていた。シリコンバレーの成功者なので、そのニワトリ小屋はIoT化されていて、水もエサも自動的に供給される(Raspberry PIの登場だ!)ただし、「小屋の掃除だけは自分でやらなければならない」と説明していた。

 なぜシリコンバレーでニワトリがブームになったのか? ふだんコンピューターの画面に張りついて仕事をしている彼らには、週末の「ニワトリ小屋の掃除」が、貴重な自然の摂理と触れ合う時間なのかもしれない。ニワトリの幸福を最大化することが自分の幸福につながるという自己投影現象なのかもしれない。ある記事は、テスラとニワトリ小屋を比較して、環境や自然に対する姿勢として説明していた。そもそも、フードはシリコンバレーのトレンドの1つであると反応する人もいるだろう。IT業界は、なにかを模索している。

 いまのところ、私の周りには、日本でニワトリ小屋を作ってそのお掃除に喜びを感じているIT業界の成功者はいないようだ。


遠藤諭(えんどうさとし)

 株式会社角川アスキー総合研究所 主席研究員。月刊アスキー編集長などを経て、2013年より現職。雑誌編集のかたわらミリオンセラーとなった『マーフィーの法則』など書籍の企画も手掛ける。角川アスキー総研では、スマートフォンとネットの時代の人々のライフスタイルに関して、調査・コンサルティングを行っている。著書に、『近代プログラマの夕』(ホーテンス・S・エンドウ名義、アスキー)、『計算機屋かく戦えり』など。今年1月、Kickstarterのプロジェクトで195%を達成して成功させた。

Twitter:@hortense667
Mastodon:https://mstdn.jp/@hortense667


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