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特別企画@プログラミング+ 第36回

9/10 Kickstarterの全プロセスを解説する講座開催

企業利用も増加中! 海外クラウドファンディングを検討すべき6つの理由

2018年08月29日 09時00分更新

文● 遠藤諭(角川アスキー総合研究所)

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仕事も忙しいし英語もかなりダメでどうやるのか?

 昨年9月から日本の個人や企業もKickstarterでファンディングできるようになったのをご存知だろうか(以前は米国法人があることなど条件あり)。日本発のプロジェクトも増えているように見えるが必ずしもすべてが成功するわけではない。そこで、9月10日(月)にKickstarterの実践講座を開催することになった。

 海外クラウドファンディングは、私にとって、Kickstarterの創業間もない2010年にその存在を知って以来(以前のコラムでも触れた)、最も注目してきたネットのしくみの1つである。経済産業省の「技術戦略マップ2012(コンテンツ分野)」の中に盛り込ませてもらったのも記憶に新しい。

 今回は、今年1月にクリエイター(Kickstarterではファンディングする人をそう呼ぶ)として立ち上げたプロジェクトを事例として紹介したいと思っている。これは、達成率195%、約100万円の支援をいただいたのだが、平凡なプロジェクトだからこそ参考になることも多いはずである。

Kickstarterでキャンペーン中の日本初のプロジェクトを表示したところ(記事執筆時点)。

 ここ1年ほど国内のクラウドファンディングも盛り上がってきているのはご存じのとおりだ。しかし、もしあなたが何かを作っているなら海外クラウドファンディングを検討してみるべきだと思う。以下、その理由を整理してみる。

モノやコンテンツを作ってるなら! 検討すべき6つの理由

1.お金を集められる/前金で入ってくる

 クラウドファンディングなので当たり前だが具体的にお金を集めることができる。日本からはゲームやコンテンツ系が目立つが、モノでも「空中盆栽」「夢万年筆」「全巻一冊 北斗の拳」など数千万円を集めたプロジェクトはいくつもある(どれもすばらしいプロジェクトだ)。

 300万円で作ったという映画がヒットしたけど何もなければ始まらない。

2.海外にアピールできる

 パソコン業界では、子どものプログラミングの絵本『ルビーのぼうけん』(Hello Ruby、翔泳社)が、Kickstarterから生まれた企画として有名だ。フィンランドに住むリンダ・リウカスという女性のプロジェクトで、9,258人の支援者から$380,747(約4,200万円)集めたが、結果的にその1冊ではなく世界の22言語で翻訳出版されることになった。Kickstarterは、リテイルの流通のしくみの一部としても機能するが、ここでは国際ブックフェア的な役割を果たしたわけだ。

 自分の住んでいるところに理解者は10人しかいなくても世界には100人いる。

3.宣伝になる

 海外のテクノロジーやデザイン系のニュースサイト(TechCrunch、The Verge、Cnetなど)のほぼすべて、ガジェット系ブログメディア(boing boing、Laughing squidなど)がクラウドファンディングの製品を積極的に取り上げている(そのための仕組みやルールのようなものも確立されている)。

 モノを作って売り出したことのある人は、いかに自分の製品を人々に伝えるのが大変かご存知のはずだ。Kickstarterはリリース配信サイトPR TIMES的な働きもする。

4.自分がオリジナルだという証になる

 ガリレオは、木星の4つの衛星を発見したときその説明をアナグラムにして発表した。そして十分に同じ発見が発表されていないタイミングでその内容を明らかにした。まだ発見を認定してくれる学会などの機関が成立していなかったからだ。Kickstarterは、世界に向けてプロジェクトを細かく説明するので、ある種の評価・認定システムのようなところがある。

 私のプロジェクトも、新しい錯視のしくみを含んでいるのだが「このアイデアは自分が最初に考えた」と言える感覚がある。

5.Kickstarterの手数料は5%

 Kickstarterは、PBC(公益法人)である(利益の5パーセントを寄付しているという)。ファンディング成立時の手数料も5パーセントとかなり低めである(国内は10~20%程度=これはとやかく言う数字ではないとは思うが。なお、決済手数料は別)。プロジェクト終了後も、プロジェクトページにその後の販売サイトへのリンクを貼りましょうなどと書かれていて、全般的に良心的なシステムといえる。

 あらゆるネットサービスは、Kickstarterみたいな公益法人にできないのだろうか?

6.客と対話する/シェアリングエコノミーとは何だろう?

 Kickstarterは「まずは友だちにプロジェクトを拡散しておけ」といったことを言っている。仲間であるとか、一緒にモノを作ったとか、アルビン・トフラーの『第三の波』に出てきた生産消費者的なことであるとか、そういうことがクラウドファンディングの根底にある。実際に、私のプロジェクトに1,900円の支援してくれた人から「一緒にモノを作っているワクワクする興奮が味わえた」というメールをもらって少し驚いたし納得した。

 ソニーやプロダクションI.G.など、比較的早くから海外クラウドファンディングを実施した企業は、シェアリングエコノミーという新しい流通やお金の流れを含めた総合的なとらえ方なのだと思う。世の中が緩やかにだが大きく変化するときに、それに直接的に関わっておくことは企業が存続していくためにとても重要なことだ。

KickstarterやIndiegogoで登場したガジェットたち。その後、Oculus(左上)はFacebookに、Peble(右上)はFitbitに買収されている。かつて音楽やフィルムが多かったクラウドファンディングだが、Kickstarterの例でいえば金額ではデジタルガジェットやゲーム、件数では出版やファッションなども多くなっている。プログラマブルな腕時計のコアであるWatchX(左下)、GPD Pocket2(右下)は、Indiegogoのプロジェクト。

乗り越えるべきこと、準備しておけばよかったということはやはりある

 Kickstarterは、この種の成功したサービスらしくユーザーに対してさまざまなアドバイスが届くしくみがある。ウェブ上にノウハウ的な情報やコミュティもあるし、1つフェーズが進むごとに、メールで励ましたりアドバイスをしてくれたりする。

 しかし、実際にやってみるまで分からなかったことや、失敗したこと、あらかじめ準備しておいたらもっとうまくやれたのにと反省する点も出てくる。それから、私自身がそうだったし「やってみたいと思うんだけど」と言っている人たちの疑問はもう少し漠然とした疑問だったりもする。Kickstarterをやるときの課題をまとめると次のようになる。

■英語をどうする(自信のある人は問題ないですが)
■客とのやりとりに対応しきれるのか、わずらわしくないか?
■Kickstarter以外のルートとの併売はOKなのか?
■かっこいいビデオや製品紹介ページが多いけど作るのが大変そう。
■準備に金はかかるのだろうか?
■プロジェクトの開始後に製品内容の変更はどこまで許されるのか?
■絶対に事前にやっておくべきことは?
■世界中のバッカーに発送するのはどのくらい大変なのか?
■税金はどうなる?
■海外メディアへのアプローチ
■広告の出し方
■プロジェクトが未成立に終わったときカッコ悪くないか?

これをやるかどうかは、「人生の別れ道」になるかもしれない

 たとえば、立派なビデオや製品紹介ページのプロジェクトを見かけるので、そこまでやるのは手間もお金もかかりそうに見える。モノにもよるが、これはKickstarterもそういった意味のアドバイスをしているとおり製品をストレートに語れているなら凝る必要はない。本を作るプロジェクトなどはうまくサンプルレイアウトを見せる程度ですませているものもある。

 海外クラウドファンディングがあることで、逆に「こんなものを作ってみよう!」と新しいことを始めるきっかけになると楽しいと思う。昨日までと同じことをずっとつづけて過ごすのか? 新しいことをやるかどうかは、少しも大げさではなくこれからの人生の別れ道になるかもしれない。少しでもクリエイティブなことに興味のある人は、ジャック・マーのビデオを見てみるべきだ。

 最後に、忘れてはいけないのはお金を集めてモノを作るといった以上はそれを完遂する責任がある。これがプロジェクトにお金を出す側からすると、しばしば「だからクラウドファンディングは!」とか「金返せ!」ということになったりもる。モノ作りに障害が発生するのはごく当たり前のことなのだが、そこから先の部分は誰もサポートしてくれない

 ところで、今回のセミナーは2部構成になっていて、第1部は高橋征資氏(クリエイター/バイバイワールド株式会社代表取締役)を講師に、話題の拍手できる玩具「パチパチクラッピー」や拍手ロボット「ビッグクラッピー」をどのように作ったか? をお話いただく予定だ。

 3Dプリンタやファブ、Raspberry PIやネット上のリソースなど、モノを作るやり方が大きく変わってきている。拍手にこだわり続けて0円からの起業、中国製ニセものの登場など、いまどきのモノ作りを知る最高のケーススタディといえる。なお、バイバイワールドは、現在「ビッグクラッピー」の英語版である「BIG CLAPPER」をKickstarterでファンディング中。まだ目標に届いていないが「Project we love」となっている。これは、Kickstarterが「これは魅力的なプロジェクトだ」と推奨するものだ。


セミナー開催概要

■講座名:パチパチクラッピーに見るいまどきの商品づくりとKickstarter実践講座
■日時:2018年9月10日 (月) 19:00 - 21:30
■会場:五番町グランドビル 7F / KADOKAWA セミナールーム 東京都千代田区五番町3-1
■主催:株式会社角川アスキー総合研究所
■参加費:早割 3,000円(税込)
     一般 5,000円(税込)
     パチパチクラッピー付き 5,500円(税込)
■内容:
第一部「パチパチクラッピーのつくり方」(約1時間20分)
講師:髙橋征資(バイバイワールド株式会社代表取締役)
第二部「Kickstarterで地球を相手にしよう」(約1時間)
講師:遠藤諭(株式会社角川アスキー総合研究所主席研究員)
■申し込み:
参加登録はコチラから!
==>http://lab-kadokawa64.peatix.com/(Peatixの予約ページに遷移します)。


遠藤諭(えんどうさとし)

 株式会社角川アスキー総合研究所 主席研究員。月刊アスキー編集長などを経て、2013年より現職。雑誌編集のかたわらミリオンセラーとなった『マーフィーの法則』など書籍の企画も手掛ける。角川アスキー総研では、スマートフォンとネットの時代の人々のライフスタイルに関して、調査・コンサルティングを行っている。著書に、『近代プログラマの夕』(ホーテンス・S・エンドウ名義、アスキー)、『計算機屋かく戦えり』など。今年1月、Kickstarterのプロジェクトで195%を達成して成功させた。

Twitter:@hortense667
Mastodon:https://mstdn.jp/@hortense667


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