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BMW提携の電池材料会社が巨額の資金調達、蓄電池VBに脚光

2018年08月17日 12時57分更新

文● James Temple

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シラ・ナノテクノロジーズ(Sila Nanotechnologies)の新たな発表によって、エネルギー貯蔵産業が今年になって調達した資金は15億ドル以上を超えた。前年同期の合計と比較すると約3倍になる。より耐久性に優れた装置や、より安価な電動移動手段、よりクリーンな電力を作り出せるテクノロジーへの投資に投資家が殺到しているのだ。

8月16日、リチウムイオン電池用の新たなアノード(負極)材料を開発したシラ・ナノテクノロジーズは、サター・ヒル・ベンチャーズ(Sutter Hill Ventures)主導の投資ラウンド、シリーズDで7000万ドルを調達したと発表した。独シーメンスのベンチャー部門であるネクスト47(Next47)や中国の新能源科技(Amperex Technology)も参加しており、シノ・テクノロジーズへの総投資額は1億2500万ドルに達している。

カリフォルニア州アラメダに本拠を置くシラ・ナノテクノロジーズは、新たなアノード材料を使って、リチウムイオン電池のエネルギー密度を10%以上増やすことを約束している。エネルギー密度が増えると、電気自動車は走行距離が伸び、コストを抑えられ、スマートフォンは「大型カメラや超高速の5G回線といった消費電力の大きな次世代技術」を搭載できる可能性がある。このことは、以前にMITテクノロジーレビューでも伝えている(「リチウムイオン電池の性能を2桁向上、BMWが採用決めた新素材」参照)。

シラ・テクノロジーズが発表した巨額の資金調達は、2018年のエネルギー貯蔵企業における大がかりな資金調達の一例だ。調査会社のクリーンテック・グループ(Cleantech Group)によると、2018年の巨額投資上位3社は次の通りだ。まずは、すでに報じられている7億9000万ドルの出資を受けたリチウムイオン電池メーカー「ファラシス(Farasis)」。次に、電動乗用車と電池を製造する「時空電動汽車(Skio Matrix)」は1億6000万ドル近くを調達した。固体電池を手掛ける「クアンタムスケープ(QuantumScape)」は1億ドルの出資を集めている。

クリーンテック・グループのアナリスト、ケンイチ・ヒノによると、積極的な投資活動の背景には複数の要因があるという。

  • —中国やその他のアジアの投資家のエネルギー貯蔵への投資意欲が増大
      • —自動車メーカーが市場の優位性を獲得する手段を模索する中、電気自動車部門の競争が激化
      • —固体電池やその他の先進的な手法がもたらす新たな性能の実現に対する期待感の上昇

シラ・テクノロジーズは今年になってBMWと提携しており、ジーン・ベルディチェフスキー最高経営責任者(CEO)によると、集めた資金を商業生産の拡大や将来の製品に向けた追加の研究開発に投入予定だという(「35歳未満のイノベーター35人 2017:ジーン・ベルディチェフスキー」参照)。

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