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Xなし無印Ryzen&B350チップセット搭載マザーボードでお買い得ゲーミングPC自作

2018年08月23日 11時00分更新

文● 加藤勝明 編集●ASCII編集部

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原稿執筆時点においては、第2世代RyzenはRyzen 5 2600/2600X、Ryzen 7 2700/2700Xの4モデルのみが提供されている(Ryzen GはGPUが14nmなので第2世代ではないので除外)。今回はその中でも安価な「Xなし無印Ryzen」にフォーカスをあててみたい

 第2世代Ryzenが発売されて3ヵ月余が経過した。第1世代のRyzenの欠点であったシングルスレッド性能を大幅に強化し、物理6コアないし8コアのCPUとしては「コスパ最強」と言ってよいほどの成熟したCPUになった。パフォーマンスは魅力だが、初モノには不具合が潜むという慎重な人でも、そろそろ買い替えを検討してよい時期だと思う。

 自作PC業界では「今自作するのは時期が悪い」、「Sandy Bridgeで十分」という声もあちこちから聞こえてくるが、旧世代PCと第2世代RyzenベースのPCでは地力からして違う。今回は型番にXが付いていない「無印Ryzen」を使った自作PCレシピを提案するとともに、そのPCが旧世代PCを圧倒する様をご覧に入れようと思う。

第2世代Ryzenは全モデルにCPUクーラーが付属する。Ryzen 7 2700はリング状に発光する「Wraith Spire with RGB LED」(右)、Ryzen 5 2600は発光機能のない「Wraith Stealth」(左)がそれぞれ同梱する

Ryzen 5 2600なら10万円で揃えられる!

 まずはXなし無印Ryzenを使ったオススメレシピを紹介しよう。今回は特定のPCパーツ指名ではなく、大雑把にこの程度の予算で調達できるもの、というものを出してみた。CPUをどちらにするかで合計金額は変わるが、6コア/12スレッドのRyzen 5 2600で10万円、8コア/16スレッドのRyzen 7 2700で11万円あればお釣りが来るだろう。SSDやメモリーなどに激安品を使えばもう少し削ることもできるので、実際にはもう数千円程度安くできる。

 ただ、SSDの激安品は多量のデータ転送に弱いなどのデメリットもあるため、ある程度の実績を積んだメーカーの品に限定している。メモリーもDDR4-2400にすれば5000円ほど予算を削れるが、メモリー速度(クロック)の確保はRyzenのパフォーマンスにおいて非常に重要な意味を持つため、定格に近いDDR4-3000のモジュールをあえて選択している。

Xなし無印RyzenでPCを組む時のおおよその価格イメージ。ゲーミングPCにも使えるようにGeForce GTX 1060のVRAM 6GB版を加えてみたが、ゲームが不要ならもっと安いグラフィックスボードに変えてもよいだろう

 ここでポイントになるのはマザーボードのチョイスだ。第2世代Ryzenで使えるチップセットはCPUと同時に発売した「X470」、先日リリースされたばかりの「B450」、そして第1世代Ryzenの時からある「X370」と「B350」の4種類があるが、予算を絞りたければB350一択だ。

 X系列のチップセットはOCに強かったり、CPU側のブースト機能(XFR/XFR2)をより積極的に使う機能があるが、CPU側がXなし無印Ryzenなら低価格なB系列のチップセットでよい。また、B450チップセットは出たばかりなのでまだ価格が高め。ゆえにB350がベストの選択なのだ。

 もちろん、X470やB450が無駄と言うつもりはない。HDDにSSDを組み合わせて安くて高速なストレージシステムを組みたいなら、X470やB450では「StoreMI」が無料で使えるが、B350では有償の「FuzeDrive」(コアな機能はStoreMIと同一)を導入する必要がある。また、将来的にX付きCPUに乗り換える可能性を考えるなら、「Precision Boost Overdrive」が活かせるX470が理想だろう。

 しかし、StoreMIやPrecision Boost Overdriveは使用感を劇的に左右するような機能ではない「隠し味」的な機能なので、コスパを重視して価格が手ごろになったB350を選んだ。

Core i7-2600Kを搭載する旧世代PCと比較

 ではRyzen 7 2700やRyzen 5 2600とB350チップセット搭載マザーボードでマシンを組み、実アプリでどの程度のパフォーマンスが出せるのか検証しよう。とはいえ、ただ最新コスパ重視構成PCの性能だけ見せられても凄さがわかりづらい。そこで、いまだユーザーが多そうなCPUとマザーボードが「Sandy Bridge近辺で時間が止まった」PCを用意し、これをベースラインとしてみた。

 今回使用した検証環境は以下の通りだ。パーツ調達と締切の都合で、前掲のプラン表よりやや高いパーツも混じっていたり、手間の関係でPCケースは使っていないが、性能はそう変わらないということでご容赦いただきたい。

【検証環境】
CPUAMD「Ryzen 7 2700」(8コア/16スレッド、3.2~4.1GHz、TDP65W)、「Ryzen 5 2600」(6コア/12スレッド、3.4GHz~3.9GHz、TDP65W)
マザーボードASUS「ROG STRIX B350-F GAMING」(AMD B350)
メモリーCrucial「W4U3000BMT-4G」(DDR4-3000、4GB×2)
グラフィックスASUS「DUAL-GTX1060-O6G」(GeForce GTX 1060 6GB)
ストレージウェスタンデジタル「WD Blue 3D NAND SATA SSD WDS250G2B0A」(SATA、250GB SSD)
電源ユニット玄人志向「KRPW-BK650W/85+」(650W、80PLUS BRONZE)
OSMicrosoft「Windows 10 Pro 64bit」(April 2018 Update適用済み)
【比較対象】
CPUIntel「Core i7-2600K」(4コア/8スレッド、3.4~3.8GHz、TDP95W)
マザーボードASUS「P8Z68-M PRO」(Intel Z68)
メモリーセンチュリーマイクロ「CAK4GX2-D3U1600」(DDR3-1600、4GB×2)
グラフィックスNVIDIA「GeForce GTX 560 Tiリファレンスカード」
ストレージウェスタンデジタル「WD Blue 3D NAND SATA SSD WDS250G2B0A」(SATA、250GB SSD)
電源ユニット玄人志向「KRPW-BK650W/85+」(650W、80PLUS BRONZE)
OSMicrosoft「Windows 10 Pro 64bit」(April 2018 Update適用済み)

馬力や総合力で旧世代PCに2倍ぐらいの差をつけるRyzen

 ではCPUパフォーマンスを中心にRyzen 7 2700及びRyzen 5 2600で構成したPCの実力をチェックしよう。とはいえ、CPUの馬力比較がなければ始まらない。まずは「CINEBENCH R15」で力比べした。

「CINEBENCH R15」のスコアー

 Sandy Bridge登場から今年で7年。Xなし無印RyzenはTDPを65Wに抑えるため定格クロックもブーストのクロックも(X付きより)控えめだが、マルチスレッド性能はRyzen 5 2600で旧世代PC(Core i7-2600K)の2倍弱、Ryzen 7 2700で2.5倍弱と強烈だ。

 Core i7-2600KとRyzen 5 2600の動作クロックがほぼ同じであることを考えると、コア数の上昇とともにプロセッサー自体のIPC(Instructions Per Clock、1クロックあたりの実行命令数)も着実に上昇している。

 シングルスレッドのスコアーの伸びは2割程度とマルチスレッドに比べ緩やかだが、そこはTDP65Wモデルの制約と言うべきだろうか。シングルスレッド性能ではX付きのRyzen 7 2700X(TDP105W)などに敵わない。

 では、新旧CPUのおおよそのパワー比がわかったところで、続いては総合性能をみる「PCMark10」のスコアーも見てみたい。テストは全ワークロードを実行するExtendedテストを実施した。総合スコアーだけでは漠然としすぎるので、もっと具体的にストロングポイントがわかるように、ワークロード別スコアーも比較する。

「PCMark10」Extendedテストの総合スコアー
「PCMark10」Extendedテストにおけるワークロード別スコアー

 Extendedテストの総合スコアーでは、第2世代Ryzenのスコアーは旧世代PCのほぼ2倍。ここはまあ納得できるが、同時にRyzen 7 2700とRyzen 5 2600のスコアーはほぼ同じ、というにわかに信じがたい結果に驚くかもしれない。6コア/12スレッドのCPUと8コア/16スレッドのCPUであまり違いがない、というのは納得がいかないかもしれないがその理由は後述する。

 ワークロード別のスコアーも見てみよう。まずアプリの起動やビデオチャットなど、負荷の軽い処理での性能を測る「Essentials」と、Office系アプリでの処理性能をみる「Productivity」では、旧世代PCとRyzenの差はそれほど開いていない。「Sandy Bridgeで十分」勢がまだ一定数いるのは頷けるところだ。

 しかし、映像編集やCG作成を扱う「DCC」(Digital Contents Creation)と、3DMarkの「Fire Strike」相当の負荷をかける「Gaming」では、Ryzenが圧倒的な差をつけている。前者はCPUパワーの差、後者はCPUとGPUに強い負荷をかける処理の差、これこそが「Sandy Bridgeで十分論」が通用しない領域なのである。

 ちなみに、DCCとGamingではRyzen 7 2700のほうがRyzen 5 2600より(わずかだが)良いスコアーを出している。だが6コア/12スレッドと8コア/16スレッドの性能差はCINEBENCH R15で確認したはずなのに、PCMark10では差が非常に小さい。その理由はPCMark10でテストを実行している際のCPUクロックの推移にヒントがある。

PCMark10の実行時におけるCPUやGPUクロックの推移。上がRyzen 7 2700、下がRyzen 5 2600のもの。紫の線がCPUクロックを示している

 グラフの縦軸を見ると、Ryzen 7 2700(上)ほうがRyzen 5 2600(下)よりも高いレンジまでカバーしているが、CPUクロック(紫線)は3.5GHzあたりにくることが多く、時々4GHzあたりに上がってはすぐ下がるということを繰り返している。これに対し、Ryzen 5 2600はスパイクのようにクロックが極端に飛び上がることがない反面、Ryzen 7 2700よりも明らかに高い位置で安定している。

 つまり、TDP65Wの枠内で動作するよう設計されているので、物理コア数の多いRyzen 7はクロックを抑え気味で動く、ということになるのだろう。ほどほどの負荷で使う前提なら、Ryzen 5 2600はRyzen 7 2700よりも優れた選択になり得る、という点を覚えておきたい。

写真・動画編集でも見せつける圧倒的な差

 それではDCCとGamingの分野でのパフォーマンス比較を実アプリを使ってさらに深掘りしてみたい。まずはRAW現像の定番「Lightroom Classic CC 2018」を使用する。6000×4000ドットのRAW画像(NEF形式)を200枚インポートし、それにレンズ補正をかけた状態からスタート。「NEF形式をDNG形式に変換する時間」と「DNG形式から最高画質のJPEG形式に書き出す時間」をそれぞれ比較する。JPEG書き出し時にはシャープネス処理(スクリーン向け)を付与している。

「Lightroom Classic CC 2018」における処理時間

 DNG-JPEG処理でPCMark10のDCCに似た傾向が見られた。すなわち、Sandy Bridge世代の旧世代PCに比べ、Xの付かない第2世代Ryzenの性能は2倍近い差ができている。CPU負荷の高いシャープネス処理が加わると、その差が一気に広がる。なお、Ryzen 5 2600とRyzen 7 2700はほぼ同じ性能だった。シャープネス処理はCPUの全コアに負荷をかけるが、CINEBENCHほど負荷の密度が高くないのが差がつかない理由だろう。

 では、CPU負荷の密度が高い映像編集も試すということで「Premiere Pro CC 2018」で編集した2種類の動画を「Media Encoder CC 2018」を利用して、H.264 MP4形式で書き出す時間を計測してみた。グラフで「フルHD」とあるのは、フルHDで録画したゲーム動画4本を50%縮小し、約6分40秒のフルHD動画にまとめたもの。そして、「8K」とあるのは、iPhone 8 Plusで撮影した4K@60fpsの動画4本を4つ並べ、約1分の8K動画にまとめたものだ。

こんな感じに4本の動画を4枚貼り付けただけのプロジェクトを用意し、それをMP4形式に書き出すテストを実施した
「Premiere Pro CC 2018」で編集した動画を「Media Encoder CC 2018」でMP4形式に書き出す際の時間

 まず、旧世代PCの圧倒的な遅さに驚かされる。8Kテストで旧世代PCが4時間以上もかかるのは、GPU(GeForce GTX 560 Ti)の処理が遅く、CPU処理の足を引っ張ってしまうためだ。ちなみに、旧世代PCにGeForce GTX 1060を載せると8Kの処理時間は1時間11分37秒と、劇的に短縮する。

 GPUにより差が出なかったフルHDテストでは、CINEBENCH R15のスコアー比に近い結果が得られた。そしてこのテストでは、Ryzen 7 2700がRyzen 5 2600よりも3分20秒短く処理を終了した。動画編集のような高負荷な処理ではRyzen 5 2600よりも優れた選択であると言えるだろう。ただ、それでも9000円前後の価格差を考えるとRyzen 5 2600のコスパの高さは揺るがない。

現行人気ゲームであらわになった旧世代PCの限界

 DCCはこのへんにして、続いてはGamingに相当するテストをPCゲーム「PLAYERUNKNOWN'S BATTLEGROUNDS」を利用して実施するとしよう。同一のリプレイデータを再生している時のフレームレートを「OCAT」で計測した。画面解像度はフルHDに固定し、画質は「中」及び「ウルトラ」の2通りとした。画質を2パターン用意したのは、今回のプランで使ったGeForce GTX 1060の性能を考慮した結果である。このテストのみ、旧世代PCにGeForce GTX 1060を載せたパターンも計測した。GPUが同じでもCPUの違いでどれほど差が出るかチェックしたい。

「PLAYERUNKNOWN'S BATTLEGROUNDS」で解像度「1920×1080ドット」、画質「中」時のフレームレート

 まずは画質「中」時。旧世代PCそのままの構成(Core i7-2600K+GeForce GTX 560 Ti)では、画質「中」ですら、平均フレームレートが20fps以下。これでは画面描画がカクカクしてマトモに遊べない。GeForce GTX 1060を搭載すると、平均76fpsと一気に上がるのでGPUパワーの進化の凄さが確認できた。

 一方で、Ryzen 7/5はそこからさらに一段高いクラスのフレームレートを叩き出した。注目してほしいのは、Min(1%)の値が60fps付近になったこと。つまり、Ryzen 7/5なら負荷の重いシーンでも快適指標となる60fpsを大きく下回ることはないということだ。Core i7-2600KではGTX 1060を使っても50fps未満と不安が残る。いまどきグラボの性能は旧世代CPUでは完璧に引き出すことができないのだ。

「PLAYERUNKNOWN'S BATTLEGROUNDS」で解像度「1920×1080ドット」、画質「ウルトラ」時のフレームレート

 しかし、画質「ウルトラ」時ではRyzen 5/7と旧世代PCの差がかなり詰まる。これはGTX 1060側がボトルネックになってしまうためだ。Ryzen 5 2600のほうがRyzen 7 2700よりもやや高いフレームレートを出せているのも興味深い。PCMark10でも示された通り、低クロックな8コアよりも、クロックが高めで安定する6コアのほうがPLAYERUNKNOWN'S BATTLEGROUNDSでは役立つということだ。

 つまり、ゲーミングPC向けのCPUを選ぶ際、Ryzen 7 2700Xが予算的に厳しい時の妥協案としてRyzen 7 2700も良いけれど、Ryzen 5 2600が思いのほか賢い選択と言える。

まとめ:コスパ抜群のRyzen 5 2600に変えて新しいことに挑もう

 「旧世代のハードでも十分論」はなにも今に限ったことではないが、旧世代CPUを使い続けることは今ではリスキーなことになりつつある。まず、Windows 10ではSandy Bridgeを含めた旧世代CPUはサポート外となっている(テストで示した通り動きはするが……)。

 また、旧世代ハードユーザーの砦であるWindows 7のサポートは2020年1月14日で切れてしまう。さらにSpectre/Meltdownのような新しい攻撃方法の発見により、旧世代CPUを使い続けるリスクはさらに高まっている。BIOSやOSの更新、アンチウイルスソフトの使用といった緩和策はあるが限界はある。そろそろ旧世代PCは休ませてやるべきなのだ。

 そこで、Ryzen 5 2600やRyzen 7 2700といったXなし無印Ryzenを利用してコスパの高いPCに乗り換えることをオススメしたい。メモリーやマザーボードも買い替えになるので躊躇するかもしれないが、パフォーマンスやセキュリティーが一気に向上するメリットは計り知れない。CPUのコア数が増えることで今まで苦戦していた処理も苦痛なく処理できるようになる。また、苦戦することがわかりきってて二の足を踏んでいたこともサクッとできるようになるかもしれない。コスパがいいRyzenでPCを新調して、ぜひ新しいことに挑戦しようではないか。

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