このページの本文へ

最新パーツ性能チェック 第233回

32コア64スレッドは乗りこなせるか? 第2世代「Ryzen Threadripper」を速攻で試す

2018年08月13日 22時00分更新

文● 加藤勝明 編集●ジサトラショータ

  • この記事をはてなブックマークに追加
  • 本文印刷

CPUにより異なる動作モード

 第2世代Threadripperも全モデル倍率ロックフリーであり、OCのやり方も従来と同様にWindows上で動作する「Ryzen Master」を使うか、古典的なBIOS設定を操作する方法のいずれかで実施できる。そのRyzen Masterも第2世代Threadripperリリースに伴い、「バージョン1.4」へ更新される見込みだ。ただ本稿執筆時点では一般ユーザーがダウンロードできるのはいつからかという確たる情報はないが、今回は評価キットに同梱されたビルドではこうだ、という所をお見せしよう。

 基本的インターフェースは従来のRyzen Masterとほぼ同じだ。コア数が多いと不具合の出るソフト用にコア数を減らす“Legacy Compatibilityモード”への切り替え、あるダイからのメモリーアクセスをコントロールする“Memory Accessモード”の設定、そしてCPUのOC関連の設定等の機能を備えている。

第2世代Threadripperに対応したRyzen Master。2990WX環境なのでコアがズラッと並ぶのは壮観

CPUのコア部分を展開したところ。各CCXで1番速いコアには★マークが、2番めのコアには●マークが付けられる

 まず1番大きな変更点はLegacy Compatibilityモードの細分化だ。16コア32スレッドの2950Xや、先代Threadripperでは従来通り全コア稼働の“ON”、コア数を半減させる“OFF”の2択だが、32コア64スレッドの2990WXでは「OFF」「1/2」「1/4」の3択に増えた。これは「OFF」なら全コア稼働、「1/2」ならコア数が半分に、「1/4」なら4分の1になるというもの。2950Xではオン(1/2モード)しか使えないのは、Legacy Compatibilityモードがダイ単位で有効・無効化するためだ。つまり4ダイ構成の2990WXでしか利用できない。現時点では名言されていないが、現時点では未発売のモデルに関してもこの制約下で動くものと推察される。

 ちなみに、コア数を減らしてもOSから認識される物理メモリ量に変化はないが、ダイが1基のみ有効化されるモードではメモリーの動作モードがクアッドではなくデュアルチャネルに格下げされる。

Ryzen Masterのウインドー下部にある“Profile1”または“Profile2”をクリックすれば、Legacy Compatibilityモードの変更が可能になる

2990WXで1/2モードにした状態。Ryzen Master上では下半分のダイが全て“Disabled”になる

同様に1/4モードにすると、左上のダイ以外はすべてDisabledになる

各Legacy Compatibilityモードにおける、第2世代Threadripperの仕様の変化をまとめてみた。1/4モードは4ダイ構成の“WX”付きモデルに限られるようだ

 Threadripper特有のメモリアクセスモードも若干変更があった。これまでは各ダイ内のコアは自分のダイに直接接続されたメモリー領域にしかアクセスしない“Local(またはNUMA:Non Unified Memory Access)”モードか、それを気にしない“Distributed(またはUMA:Unified Memory Access)”モードの2種類がある。

 先代ThreadripperではDistributedモードがデフォルトだったが、第2世代Threadripperではやや事情が異なる。ダイが2基の2950XはLocalモードがデフォルトで、Distributedモードへの切り替えが可能なのに対し、ダイが4基の2990WXではDistributedモードで固定され、変更はできない。

 この違いは冒頭部で解説したターゲットユーザーの違いとCPU内部の設計にある。まず2950Xはゲーマー向けであるため、レイテンシー的に有利なLocalモードをデフォルトにしたのだろう。これに対し2990WXでは2基のコンピュートダイは隣接するIOダイを経由してメモリーにアクセスせざるを得ないため、Localモードは意味をなさないからだ。また、2990WXでコア1/2モードや1/4モードでも、メモリーアクセスモードを変更することはできない。

2990WX(左)ではメモリーアクセスモードの切り替えUIは常時“N/A”となるのに対し、2950X(右)では“D(Distributed)”と“L(Local)”の2択になる

 そしてもう一つ、このバージョンから第2世代Threadripperに搭載された「Precision Boost Overdrive」がUI上で設定可能になった点にも触れておきたい。第2世代Ryzenの新機能として紹介され、X470マザーのBIOSで先行的に実装された製品もあるものの、AMDはRyzen Masterが必要と謳っていた。その機能がバージョン1.4のRyzen Masterでようやく解禁になったのだ。Ryzen 7 2700Xにおける検証記事で明らかな通り、クロックが微妙に上がるだけなので必須機能とは言えないが、少しでも性能を絞り出したい人には歓迎すべき変更といえる。

 ただしRyzen Masterで設定できるのはPrecision Boost Overdrive有効時に操作できる3つのパラメーターだけで、Precision Boost Overdrive自体の有効・無効化はできない点に注意したい。

ウインドウの中盤に位置するこの部分がOCとPrecision Boost Overdriveに関係する関係。中央の“Precision Boost Overdrive”を選択すると、PPT/TDC/EDCの3パラメーターを変更することができる

BIOSレベルでPrecison Boost OverdriveをDisableにすると、Ryzen Masterの上部に表示されるPPT/TDC/EDCの表示が消える

↑Precision Boost OverdriveをAutoもしくはEnableにすると、このような表示になる。図ではCINEBENCH実行中にPPT250Wの枠を使い切ったということで赤表示になっている

“Manual”ではPrecision Boost Overdriveの手動設定ではなく、コアのクロック調整が可能になる。+とーのボタンを押してコア単位でクロックを微調整できるほか、CCX表記の部分をクリックすることでCCX(4コア)いっぺんにクロックを上げ下げできるようになる。もう少し分かりやすくして欲しいところだ

カテゴリートップへ

この連載の記事