銀座ソニーパーク「星の王子さま」で荒れ模様

文●盛田 諒(Ryo Morita)

2018年08月08日 16時00分

 東京・銀座ソニービル跡地にできる新施設「銀座ソニーパーク」。開園を9日にひかえ、ソニー企業が8日に開催したプレス向け内覧会は、台風第13号の接近と重なり、あいにくの荒れ模様となった。

 ソニーパークは地下4層の立体公園をモチーフとした施設。ソニー平井一夫社長(当時)直下で2013年に開始した、ソニービル建て替えプロジェクトの一環でつくられた。1966年ソニービル開設時の「街にひらかれた施設」というコンセプトを意識し、各フロアは幹線道路、メトロ、地下駐車場に隣接。ただの商業ビルではなく公共性をもつ「公園」の意味をもたせたという。施設には、毎週金曜に音楽ライブを開催するスペースや、テイクアウト専門の飲食店などが並ぶ。ソニービル当時の躯体を残し、ありし日の姿をしのばせる建築も見どころだ。

 一方、ツイッターでは開園前にもかかわらず、「#銀座ソニーパークださい」と批判的なハッシュタグができている。

「星の王子さま」コラボで批判

 ハッシュタグの発端は、ソニーパーク限定で1000個販売する、サン=テグジュぺリ「星の王子さま」とコラボレーションしたバオバブの苗木だ。

 企画には、植物にまつわるさまざまな企画を提案するコンサルティング事務所・そら植物園の代表取締役である西畠清順氏が関わっている。西畠氏は世界中から植物を集める「プラントハンター」を自認し、著書に「プラントハンター 命を懸けて花を追う」(2011年)がある。コラボ商品は、原作にない「オリジナルストーリー」を掲載し、王子さまの隣に西畠氏のイラストを並べたパッケージもある。

 コラボ商品は「ファンの心を傷つける」と一部ファンから反感を買い、冒頭にあげたハッシュタグの拡散が呼びかけられた。作中で「王子さまが住んでいた星を割ってしまうかもしれない」というネガティブな意味をもつバオバブを商品化していたことも手伝い、「ファンが作ったとは思えない」と批判がふくらんだ。

 西畠氏は2017年12月、生木のクリスマスツリーを運び、神戸メリケンパークに立てる企画「めざせ!世界一のクリスマスツリープロジェクト」でも物議をかもした。当時から西畠氏の企画を疑問視していた人々が拡散を手伝ったことで、ソニーパークの話題が悪い意味で広まってしまった形だ。

 ソニー企業永野大輔社長は内覧会会場で、「星の王子さま」コラボレーション商品が原因でソニーパークが悪い意味で話題になっていることについて記者から聞かれると、「個別の商品のことなので答えられない」として回答を避けた。

コラボで植物を届けたい

 コラボ商品を販売するのは、ソニーパーク地上の「アヲ GINZA TOKYO」。出版取次の日本出版販売とそら植物園による合弁企業・日本緑化企画が手がける。コラボ商品は、同社のブランド「アヲ」商品企画第1弾という位置づけだ。

 アヲ GINZA TOKYOでは、ソニーパーク地上に植栽として展示された植物を立ち寄った人が購入できる。購入された植物が次の植物へと移り変わることで、公園としての姿が変わるというコンセプトだ。販売時は、購入者の住まいに、植物をきちんと育てられる環境があるかたしかめてから販売するという。

 会場にいた西畠清順氏にアヲ GINZA TOKYOのねらいを尋ねると「公園の木は『自分とは関係ないなあ』と思うけど、値段がつくことで不思議なことに『うちの店に置こうかなあ』『おじいちゃんおばあちゃんの家に植えてあげようかなあ』とかコミュニケーションができる。それがひとつの目的」と話した。

 「ただのグリーン屋さん、花屋さんが新しく増えても仕方ない。動物を売っている人もそうかもしれないが、『ちゃんとその人が引き取ってくれる気持ちがあるのか』ということをヒアリングしてから販売することにしている」(西畠氏)

 一方、植栽販売事業と「星の王子さま」とのつながりについて聞くと、いずれも日本緑化企画がかかげる「植物を届ける」というコンセプトがあるという。

 「今後も空間づくりとか、レンタルグリーンとか、いろんな緑化事業をやっていくんですけど、本屋らしい商品開発をやっていく。たまたま今は商品開発のラインが1個しかなくて、それが『星の王子さま』とのタイアップ。これは第1弾。第2弾は第2弾で、人気のアニメなのか、絵本なのか、作家なのか、アーティストなのかとコラボレーションしてどんどんやっていきます」(西畠氏)

 なお、西畠氏本人は星の王子さまが「大好き」という。

 その上でバオバブを選んだ理由については「アフリカで育ったバオバブを自分で植えて育てられるというのも面白い試みだと思うし、ぜひそういうことをやらないかんということで、セネガルの財団と提携している会社からオファーがあったので、こりゃ面白いなと思って着手した」と話していた。

ソニーの発信を注視したい

 ソニーパークのテーマは街にひらかれていることだ。公園のように公共性を持つということは、誰でも出入りできるということで、そこで起きうるさまざまな事件やトラブルにも、当事者として関わりを持つことになるということだ。

 これからもソニーパークにはさまざまな声が集まるだろう。公園の管理主体であるソニーが、歴史的なソニービルの跡地で、何を、どのように発信し、そして人々の声にどのようにこたえていくかは、大きな意味をもちそうだ。



書いた人──盛田 諒(Ryo Morita)

1983年生まれ、家事が趣味。赤ちゃんの父をやっています。育児コラム「男子育休に入る」連載。Facebookでおたより募集中

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