このページの本文へ

結婚式に異変、伝統的な「和婚」が人気を呼ぶ理由

2018年08月08日 06時00分更新

文● 週刊ダイヤモンド編集部(ダイヤモンド・オンライン

  • この記事をはてなブックマークに追加
  • 本文印刷
和婚がブームとなっている
写真はイメージです Photo:PIXTA

最近、日本の伝統的な結婚式の要素を取り入れた和のウエディング「和婚」が人気を呼んでいる。その背景には、晩婚化が進むとともに、結婚式に対する価値観が変化していることがあり、格式やけじめを重視する女性が増えているのだ。(「週刊ダイヤモンド」編集部委嘱記者 森川幹人)

結婚式に対する価値観が
33歳を境目に変わっている

 かつて、「女はクリスマスケーキ」とやゆされた時代があったことをご存じだろうか。25歳を過ぎれば女の価値が下がるから、その前に結婚しなさい、という意味で使われていたのだ。

 時代が進んで、テレビドラマ『29歳のクリスマス』が大ヒットしたのは1994年。当時、人気の絶頂にあった女優・山口智子が、キャリアと結婚の間で揺れる“29歳”の女性を演じた。

 そして現在、「33歳を境目に結婚式に対する価値観が変わっている」と語るのは、リクルートマーケティングパートナーズの斉藤裕子氏だ。同社が毎年10月に行っている「ゼクシィ 結婚トレンド調査」によると、33歳以上の女性は、結婚式のキーワードとして、「格式」や「けじめ」を挙げるという。

晩婚化が進むにつれ
和婚の割合も上昇

 25歳から29歳、そして、33歳へ。女性の結婚に対する向き合い方が変わるタイミングは、時代とともに遅くなっている。背景には、女性の社会進出によって、生き方や働き方が変わったことがある。現在、女性の初婚平均年齢は29.4歳で、過去20年間で3歳上昇した。

 晩婚化とともに、結婚式に関するトレンドに興味深い動きが現れている。「ゼクシィ 結婚トレンド調査」によると、結婚式全体における神前式の割合は、2012年に20.3%だったものが17年には27.3%と7ポイントも上昇しているのだ。

 こうした流れを受けて、リクルートマーケティングパートナーズは、33歳以上の大人をターゲットにした結婚情報誌「ゼクシィPremiere」の付録として、和婚に特化した「大人のハレの日」という別冊を、年に2回発行している。

「結婚式に関する最近のトレンドは、おもてなしを大切にすること。ただ、その価値観をイメージに落とした時、年齢により違いが出る。20代は感謝を伝える場として捉え、アットホームや自然体など、ゲストに寄り添うイメージが強い。30代は格式を重んじ、落ち着きやシンプルを大切にする。その結果、和婚が選択肢に上がってくるのかもしれない」(今西裕子「ゼクシィPremiere」編集長)

「和婚人気の1つのきっかけになったのは、女優・沢尻エリカさんの結婚式だった」と語るのは、ウエディングパーク広報担当の尾崎佳苗氏だ。

 2009年に明治神宮で行われた結婚式で、沢尻エリカさんは白をベースにした伝統的な着物を選んだ。一方、髪形は右半分を下ろし、左半分を白い花の髪飾りで覆うなど、スタイリッシュなもの。和婚といえば白無垢に角隠し、というステレオタイプを打ち破り、新しいスタイルを提案して多くの女性の心を捉えた。彼女の結婚式を境に、和装はより自由になり、浸透していく。

インスタ映えする会場として
神社での挙式が人気

 また、和装の多様化以外にも和婚の人気を後押ししている要因がある。

「今どきの花嫁は、インスタグラムを使って結婚式場に関する情報収集をします。そのため、インスタ映えする結婚式会場として、神社での挙式が人気を呼んでいるのです」(尾崎氏)というのだ。

 例えば、埼玉県の川越氷川神社が行っている「ナイトウエディング」。かつて結婚式が夜に行われていた習慣を現代によみがえらせた神社の挙式では、群青色の夜空を背景に灯籠が白無垢の花嫁を映し出す。インスタにアップされた神社の幻想的な写真が、和婚人気をより後押ししているという。

 和婚のための「神殿」を新たに造り、結果を出しているのが藤田観光だ。同社は2015年に大阪の太閤園内にあった豊生殿をリニューアルし、17年には東京の椿山荘内に庭園内神殿を新設した。

 ただ、藤田観光の中村雅俊取締役によれば、実は結婚式場を造るのは案外簡単で、結婚式産業の参入障壁は低いという。それゆえ、藤田観光は差別化のために和婚に力を入れ、ハードとソフトの両面で質を高めようとしている。

「少子高齢化で結婚式市場は縮んでいくが、披露宴の市場は必ずある。これからは競争優位に立てるかが勝負。結婚式会場にきちんと投資して、まずはハードで魅了する。その後、サービスなどのソフトで対応して成約してもらう」(中村氏)

 ハード面では神殿造りに工夫を凝らし、デザインは同社が手がける結婚式用のゲストハウスのデザインを発注してきた会社に依頼。例えば、豊生殿では、京都の伏見稲荷大社を思わせる朱色の鳥居の先に、緑の庭園を望むことができる。式場内部には鏡を設置して、鳥居がどこまでも続いているように見せ、入り口は暗くして、扉を開けた途端に明るくなるようにするなど、細かい演出が施されている。

インバウンド急増で
日本人も自国文化に興味

 創意工夫の結果、多くのゲストが神殿に入った瞬間に感嘆の表情を見せてくれ、成功を確信したという。その結果、太閤園における和婚は、豊生殿を作る前は3割ほどだったのが、今では5割を超えた。

 結婚式において、自分らしさが重要になるとともに、自らのルーツを探る流れが生まれてきている。また、近年はインバウンドブームにより、日本文化が外国人にとって魅力があることが明らかになり、日本人の間でも日本の文化を評価する風潮が強まっている。その結果、日本の伝統的な結婚式である和婚への興味が高まっているといえる。

 晩婚化や少子高齢化など、結婚式産業を取り巻く環境変化は著しい。その中で、長い時間をかけてはぐくまれてきた日本の伝統的な挙式スタイルである和婚の価値が、今、見直されている。


※本記事はダイヤモンド・オンラインからの転載です。転載元はこちら

カテゴリートップへ

最新記事
最新記事

ASCII.jp ビジネスヘッドライン

アスキー・ビジネスセレクション

QDレーザー販促企画バナー

ピックアップ