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相続が泥沼化する家としない家の違い、長男の重大な役割とは

2018年08月08日 06時00分更新

文● 税理士法人レガシィ(ダイヤモンド・オンライン

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相続は「長男」がどのように行動するかにかかっている
写真はイメージです Photo:PIXTA

親がいる限り避けては通れない「相続」。配偶者、子どもとその配偶者、孫…関わる人が多く利害関係でモメがちな相続問題を円満解決するために、「やってはいけないこと」と「やるべきこと」を、累計相続案件数1万2000件の実績を誇る“日本一相続を見てきた税理士法人”レガシィの著書『やってはいけない「長男」の相続』(青春出版社刊)から解説する。

相続法改正で重要になる「本家」と「長男」

「相続」と聞いて、皆さんは何を思い浮かべますか? テレビドラマで観るような資産家の相続争いでしょうか? きょうだいや親戚の財産の奪い合いでしょうか?

 親がいてそれを引き継ぐ子どもがいる限り、等しく相続は発生します。相続なんて、お金持ちの人間だけの話だろうと思ったら大間違いです。税制改正により、東京近郊に住む方にとって、今や2人に1人が相続税の課税対象者になるとされています。「わが家には関係ない」ではもう済まされない時代なのです。

 私たちは相続専門の税理士法人として、これまでに9400件以上の相続税申告に携わってきました。相続税申告だけでなく、相続に関する相談事なども含めると、累計1万2000件以上の相続案件にかかわってきました。そうしてさまざまなご家族の相続をお手伝いしているうちに、「モメる家族とモメない家族はどこが違うのか」がわかるようになってきました。

 それは、「長男」がどのように行動するか、です。モメない相続のカギは、長男が握っているといっても過言ではありません。折しも40年ぶりに相続法が改正されることになりました。この改正により、長男の動きはますます重要になっております。

「本家相続」7割、「均分相続」3割という事実

 ここでは便宜上「長男」としますが、男性だけを指しているわけではありません。きょうだい構成により、姉妹なら姉、姉と弟なら弟、といったように、「本家」としてその家を受け継ぐ人が、これから述べるところの「長男」に相当することをお断りしておきます。

 また、ここでの「長男の相続」とは、「本家の相続」を意味しています。「本家」や「分家」、「長男」や「跡継ぎ」といった言葉を聞いて、「今どきもう古いよ」と思われた方もいるかもしれません。でも、まだ相続の世界では、本家意識が強く、いまだに「長男が相続」するケースが多いのです。

 戦前の日本では、「実家を相続するのは本家」というのが基本でした。本家のもとに、不動産や先祖から受け継がれてきたものを残すものだとされていたのです。これは戦前の旧民法にも規定されていたことです。戦後に民法が改正され、きょうだいが平等に相続する「均分相続」が基本となりました。

 私たちは、相続案件実績日本一の税理士法人として、常に最新のデータ分析をしています。過去17年にわたり、長男が相続する「本家相続」と、きょうだいで公平に分ける「均分相続」のデータも取り続けています。そのデータからわかることは、年々「均分相続」が増えつつあるものの、いまだに本家相続が根強いという事実です。全体の割合を見てみると、2017年のデータでは本家相続が71%、均分相続は29%です。つまり、法律では均分相続となっていても、意識のなかではまだまだ本家相続が根強く残っているのです。

 今は本家意識、分家意識の端境期と言えるかもしれません。あと20年もすれば、間違いなく均分相続のほうが多くなるでしょう。しかしいまだ長男の相続にこだわる人が多いため、現実が法律に追いついていないとも言えます。だからこそ、モメることも多いのです。

「父親の相続」がモメにくいワケ

 一般的には、1つの家族に相続は2回やってきます。

 1回目は両親の一方が亡くなったときに発生する相続、2回目はその後、残された配偶者が亡くなったときに発生する相続です。1回目の相続を「一次相続」、2回目の相続を「二次相続」といいます。

 一次相続では父親が亡くなるケースがほとんどです。母親のほうが先に亡くなるケースもありますが、不動産の名義人でなかったり、財産がそれほど多くなければ、遺産分割や相続税の課税に伴う手続きは父親の相続より少ないでしょう。大変なのはやはり父親の相続なのです。

 一般的に、一次相続でモメ事が起こることはほとんどありません。なぜなら、残された母親を前にして、子どもたちが争ったり、不満を言ったりすることはまずないからです。一次相続の傾向としては、その家庭の財産の大半は亡くなった夫のものであり、その夫が先に亡くなります。

 ですから、一次相続が発生した際には、先のことは考えずにとりあえず今は配偶者(多くは母親)がすべて相続する、というケースも多くなっています。いずれ母親が亡くなったときには、その財産は子どもたちに引き継がれることになると想定されるため、その時点でモメることは少ないのです。

父親の相続をおろそかにしてはいけない

 なおかつ相続税も、多くはかかりません。一次相続では「配偶者の税額軽減」「小規模宅地の評価減」という2つの税額軽減措置があるため、多額の相続税がかかることはまずないのです。

 ところが残された母親が亡くなった二次相続では、このような優遇措置はありません。子どもたちが親の遺産を相続することになるため、多額の相続税がかかってきます。また二次相続ではお金のことだけでなく、きょうだい間の感情の問題が出てきます。もう親という歯止めが利かないため、子どもたちは独立した個人として、意見をいい合うようになるわけです。

 本当は、一次相続が発生したときに、将来必ず発生する二次相続のことを想定して相続対策をすべきなのですが、実際に進めている人はまだまだ少ないのが実情です。やはり、相続が発生したときだけ動くのではなく、その前後の対策が大切なのです。

親に相続対策を迫ってはいけない

 いくらモメ事を避けたいからといっても、やっていいことと悪いことがあります。避けてほしいことの筆頭に挙げられるのが、親に遺言を書いてくれと迫ったり、相続対策をしてくれ、相続税を払えるようにしておいてくれ、と迫ったりすることです。

 確かに遺言があれば、モメ事を避けやすくなりますし、相続対策をしてもらえれば、残された子どもたちは楽かもしれません。子どもの立場からすれば、その気持ちもわかります。しかしながら、特に長男に改めて認識してほしいのは、自分の親であっても、相手は80歳代、90歳代の高齢者であるということです。

 なんとか遺言を書いてもらおう、相続対策をしてもらおうとすることは、ご両親にとって「死」を前提にすることであり、非常にデリケートな問題だということを肝に銘じておいてください。

長男は“もらった遺産”でも独占してはいけない

 モメない相続ができたケースでは、長男はどんなことをやっていたのでしょうか。実際にあった例をいくつか紹介しましょう。

 父親が亡くなった一次相続のとき、長男がかなり広い土地を相続しました。

 残された母親が亡くなる二次相続の前に、このご長男はその土地の一部を売りました。普通に考えたら、長男は自分が相続した土地の一部を売ったのですから、売った代金は自分のものにしていいわけです。でもこのご長男は、「私1人で使うのもなんだから、お姉さんたちも使ってくれ」と、代金の一部を長女、次女に分けたのです。その後、母親が亡くなり、二次相続の遺産分割協議となりましたが、あっさり円満に終わりました。

 これはレアケースかもしれませんが、ここから学べることは多いと思います。人というものは、得てして自分のいいことは隠して、つらいことや大変だったことを話すものです。例えば宝くじで大金が当たったら、誰にもいわずに独占したいと思うのは当たり前の感情ですし、ずるいわけでもなんでもありません。

 ところがこの長男のように、いいことがあったら話をして共有する、人にも差し上げるといったことができると、「損して得取れ」ではないですが、あらゆることがうまく回り出します。

 もう1つ、長男である本家の気遣いに感心した例があります。分家の娘さん、つまり長男から見ると姪がピアノを習いはじめたと聞いたら、ピアノをプレゼントしたというケース。なかなかできることではありませんが、いろいろなご家族を見てきて、相続がスムーズにいっているケースでは、本家が甥っ子や姪っ子に、何かにつけプレゼントを贈っていることが多い印象があります。

 高価なものであればあるほどいいのは間違いありませんが、それよりも大切なのは日頃の本家側の気づかいです。例えば、法事や子どもの結婚式をするときは、特別なお土産をつけたり、交通費を渡したり。「気をつかってお金を使う」姿勢が大切です。ピアノのように高価ではないですが、こうした気づかいを重ねておくと、将来、遺産分割協議になったときに分家の人たちから起こるかもしれない批判や反発をやわらげることができるのです。


※本記事はダイヤモンド・オンラインからの転載です。転載元はこちら

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