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苦境の地銀の収益機会探しを縛る、メガバンクとの「系列意識」

2018年08月07日 06時00分更新

文● 週刊ダイヤモンド編集部(ダイヤモンド・オンライン

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みずほ銀行と東邦銀行(福島県)は、今年6月に福島県でキャッシュレス化の実証実験を始めた
みずほ銀行と東邦銀行(福島県)は、今年6月に福島県でキャッシュレス化の実証実験を始めたが、これも裏側で支えるのはブルー・ラボだ Photo by Takahiro Tanoue

「地方銀行の応募が殺到し、入りたくても入れない」──。ある第二地銀の幹部は嘆息を漏らした。その“意中の相手”は、昨年6月にみずほ銀行がベンチャー投資会社のWiLと立ち上げた子会社、Blue Lab(ブルー・ラボ)だ。

 同社の目的は、ITを活用した新事業を生み出すこと。金融界の共通課題であるキャッシュレス決済の推進にも取り組んでおり、地銀がこの“試験場”にこぞって行員を出向させている。その数はすでに10行を超えるが、キャパシティーの問題もあり、20行ほどの待機組が列を成しているという。

 無論、こうしたデジタル分野での地銀との協力体制は、三菱UFJ銀行も構築済み。昨年10月、持ち株会社傘下にジャパン・デジタル・デザインという子会社を設立し、地銀の行員を集めて業界横断型のサービス開発に着手している。

 メガバンクからすれば、多くの地銀と新サービスを共同利用することで覇権争いを制しやすくなるのに加え、開発コストの低減にもつながる。片や年々業績が悪化する地銀にとっては、少しでも有望な新ビジネスに絡んでおきたい。そうした陣取り合戦の最たるものが、地銀の“系列超え”だ。

 メガと地銀といえば、三菱UFJ銀行ならば「火曜会」「好日朝食会」、みずほ銀行では「ハロー会」「八紘会」などといったように親密な系列関係を築いてきた。ところが、デジタルなどの新分野に関しては、そうした系列関係を超える例が散見されるのだ。

信託銀行も困り顔

 確かに、株式の持ち合いなどで強固な結び付きが多かった系列関係も、最近では薄まっている。ならば、系列超えへの抵抗感がないかといえば、そうではない。

 例えば今春、三井住友銀行は地銀10行とマネーロンダリング(不正資金の洗浄)対策などをテーマにした勉強会を立ち上げた。ところが、この中に他のメガと親密な地銀が参加しており、「『何が起きているのですか』と事情聴取が入り、地銀は説明に追われていた」(メガバンク関係者)という。

 また、今年に入り、信託銀行が地銀との新しい連携を模索し始めた。三井住友信託銀行は4月から持ち株会社傘下の子会社を通じ、投資信託を顧客に販売する地銀の体制づくりを支援。みずほ信託銀行も、秋から信託商品の販売支援アプリを地銀に提供する考えだ。

 ところが、連携先を探す現場では、「メガの顔色を気にする系列地銀に提案しても、反応がない」(信託銀行営業担当)と系列の壁にぶち当たっているという。

「かつて系列行から人材や提携面で事業支援を受けた」(地銀関係者)というメリットがあったのは事実だが、地銀の業績悪化はすでに待ったなし。系列の呪縛を解き放って利益機会を得るのかどうか、地銀は“踏み絵”を迫られることになる。

(「週刊ダイヤモンド」編集部 田上貴大)


※本記事はダイヤモンド・オンラインからの転載です。転載元はこちら

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