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業界人の《ことば》から 第304回

銀行との連携で日本の顧客獲得を狙うPaypal

2018年07月26日 09時00分更新

文● 大河原克行

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今回のことば

「Paypalは、だれもが公平に金融サービスを実現することを目指している。新たに提供するPaypal口座と連携した銀行口座からの支払いサービスは、金融サービスの民主化を大きく加速することになる」(Paypalの曽根崇カントリーマネージャ)

銀行と連携した新たな2つのサービス

 デジタル決済サービスを提供するフィンテック企業のPaypalは、日本において2つの新たなサービスを開始する。

 ひとつは、Paypal口座に連携した銀行口座からの支払いが可能になる個人向けサービス。そして、もうひとつは、銀行口座を利用した、企業から個人ユーザーへの支払いが可能な「ペイアウト」機能の提供だ。

 どちらの新サービスにも共通しているのは、銀行口座を新たに活用することによって、これまでは、クレッジトカードを使ったオンライン決済に限定されていたものが、銀行振り込みでの決済も可能になるという点だ。

 Paypalの曽根崇カントリーマネージャーは「Paypalは金融サービスの民主化を進めてきている。だれもが公平に金融サービスを実現することを目指している」と前置きし「新たに提供するPaypal口座と連携した銀行口座からの支払いサービスは、金融サービスの民主化を大きく加速することになる」と語る。

 たとえば、Paypal口座に連携した銀行口座からの支払いでは、クレジットカードを持っていないユーザーや、クレジットカードを使いたくないユーザーにも、安心、安全な決済を可能にするものだ。

 同サービスを活用するアールビーズは、マラソンに関するサイトとして月4000万PVを誇る「RUNNET」を運営している。同サイトを通じて約2500のマラソン大会の検索とエントリーが可能だが、各マラソン大会へのエントリー費用支払いの際、コンビニ支払いが4割、クレジットカード支払いが6割を占めているという。

 アールビーズ 企画開発部の生駒佑人ディレクターは「過去には、銀行口座引き落としができる会員サービスを用意し、3万人の利用者がいたものの、未回収時の資金負担のリスクが高いことから、2013年にサービスを終了していた」と前置きし、「Paypalのサービスを利用することで、カードが使えない人のニーズに応えたり、未回収リスクゼロとなること、運用負荷がないこと、コンビニ決済が減り、入金率がアップするというメリットがあると考えている」とし、2018年8月からこの仕組みを活用するという。

 また、電子チケットを取り扱うPeatix Japanでは、いまでは、3分の1のユーザーが現金系での支払いとなっており、「若い人ではまだカードを持っていない人が多かったり、カードは持っていても、オンラインでは使いたくないという人も多い。銀行口座振替による新たな決済手段が提供できることで、コンバージョンの向上、カードの不正利用の際に発生するチャージパックの低減などが可能になる。ユーザーにとっても、カード情報の入力がない、コンビニやATMへ行かないで済む、すぐに注文が完了するといったメリットがある」(Peatix Japanの岩井直文社長)とする。

 一度、電子チケットを予約しても、支払いのためにコンビニに行く手間が面倒だったり、熱が冷めてしまって、入金をやめてしまったりということが発生するなど、コンビニ支払いならではのデメリットといえる要素もある。しかしPaypalの仕組みを利用することで、リアルタイムに支払い処理ができ、すぐにチケットを発券。確実な支払いにつなげることができる。

 また、銀行振り込みと比べても、振り込み手数料の負担はゼロになり、毎月定額の支払いもPaypalを使えば、その都度都市銀行の口座から振り込む手間がなく、一定の条件を満たせば買い手保護制度の対象にもなるという。

 口座振替対応銀行は、みずほ銀行、三菱UFJ銀行、三井住友銀行、りそな銀行、埼玉りそな銀行、ゆうちょ銀行の6行となっており、主要銀行を網羅した形でサービスが開始される点も見逃せない。

 もうひとつのペイアウト機能では、従来は買い手から売り手への支払いという個人から企業への支払いだけだったものを、企業から個人への支払いも銀行口座を使って受け取りが可能になるというものだ。

 「追加コストなしで、口座振替機能が導入可能であり、若年層を中心としたクレジットカードを持たない層にも対応できる。また、すでに銀行振込に対応している企業の場合でも振り込み結果と注文情報のつきあわせ作業が不要になったり、Paypal決済のUIでコンバージョンレートを向上させたり、リアルタイムでの入金や継続的課金にも対応できるといったメリットがある」とする。

 ソーシャルファンディングの増加や、副業の広がりなどにより、個人が事業主としてビジネスを展開するケースが増加したり、eコマースやマーケットプレイスの広がりによって、企業が個人宛てに支払いをする機会も増えている。こうした需要に対応できるという点でも、今回のペイアウト機能はメリットが大きいといえる。

 個人でチケットを買いたい人と、売りたい人とのマッチングをしているチケット流通センターでは、個人のチケット購入と個人への代金の支払いにPaypalに導入。API連携で銀行手数料よりも安価な支払いを実現しているという。さらに、売り手に対して支払いおよび通知をリアルタイムで行えるため、安心度がアップするというメリットも生まれる。

 個人ユーザーは、Paypal口座で1回あたり10万円までの支払いの受け取りができるようになり、対応する銀行口座とオンライン連携することで、本人確認をすれば1回あたり100万円までの支払いの受け取りや、銀行口座への引き出しが可能になる。そして、企業は銀行口座を知らなくても、個人ユーザーのPaypal口座となるメールアドレスと、金額を指定するだけで簡単に支払いができる。国内および国外においてもリアルタイムで支払いが可能で、すぐに確認できることは利用者の安心感につながる。

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