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声に出していいたい、激光XII号と2000兆ワットレーザー! レーザー核融合の現場を見る

2018年07月21日 12時00分更新

文● 林 佑樹(@necamax

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 ASCIIでは、未来の電力源の方式として注目される核融合について何度か取材している。電気がないと我々は呼吸できない。自作PCでやたらと動作周波数を上昇させるにしても、スマホでゲームをエンジョイするにしても電気は必要だ。

 過去にトカマク型ヘリカル型の核融合実験施設を取材しているが、今回は大阪大学レーザー科学研究所(Institute of Laser Engineering、以下ILE)だ。レーザーによる核融合実験ほか、レーザー自体の研究や強力なレーザーの活用した高エネルギー密度科学も進め、惑星の中心核にも迫るマルチな研究所だ。

今回は大阪大学レーザー科学研究所を取材した

 ILEは、1972年に大阪大学工学部附属レーザー工学研究施設としてスタートし、改組や統合を経て現在に至る。レーザーとあるように、光に関する技術研究を得意とし、光量子ビーム科学研究部門と高エネルギー密度科学研究部門、レーザー核融合科学研究部門、理論・計算科学研究部門からなる。

レーザーってなに?
光となにが違うの?

 レーザー自体の登場はごく最近で、1957年に研究が始まり、1960年にレーザー発生装置が開発された。Light Amplification by Stimulated Emission of Radiationの頭文字を取って、Laserと呼ばれ、指向性や収束性が良いだけでなく、波長を一定に保てるため、いまでは多くの分野で活用されている。

 ざっくりとなるが、都合よく制御できる人工的な光という認識でもいいだろう。身近なものとしてはレーザートラッキング仕様のマウス、BDなどの光学ドライブ。読み込みだけでなく、書き込み時にもレーザーが使用されている。

 また赤外線やX線、紫外線もレーザーに属する。そのため、バーコードリーダーやリモコンもレーザーを使用しているものといえるし、一時期多くの読者がワクワクした投影型キーボードもレーザーを採用したキーボードだ。

光学ドライブもレーザーでデータを読み書きしている投影型キーボード。これもレーザー

 となると、光と同じものと認識しがちだが、レーザーは前述のように単色性と指向性、エネルギー集中に優れるほか、可干渉性の高い光である。そのため、金属を溶かすほどの高いエネルギーを1点に集中させることが可能だ。レーザーポインターだと思えばわかりやすいかもしれない。

 また重要な部分としてはナノ秒やフェムト秒といった時間でのパルス発振が行なえること。瞬間的に出力をピークにでき、もちろん、ナノ秒の間に高いエネルギーのレーザーにすることもできる。それを大規模に、そして極一点に集中させた場合はどうなるか。ILEではそれを行なっている。そのひとつがレーザー核融合だ。

レーザー核融合の仕組み

 ASCIIでは過去に核融合実験の方式として、磁場封じ込め式を紹介している。岐阜県土岐市にある核融合科学研究所と茨城県東海村にある那珂核融合科学研究所は、磁場封じ込め式を採用するがアプローチは異なっていると記した。

左が那珂核融合科学研究所JT-60SA(トカマク型)、右は核融合科学研究所LHD(ヘリカル型)。プラズマを扱う点では、レーザー核融合を含めて共通している

 ILEはというと、慣性閉じ込め式だ。慣性閉じ込め式にもいくつかの方式が存在しているが、レーザー核融合の場合は、ターゲットをレーザーで思いっきり圧縮して、そこにもっと高出力のレーザーを撃ち込んで点火させるというもので、高速点火式と呼ばれる。

レーザー核融合のイメージ図。左はトカマク型で、そもそもやり方が大きく異なっているのが分かる(画像出典:レーザー科学研究所)

 ペレットをレーザーでまず圧縮する装置名は激光XII号。男児がもれなく好きそうな名前である。とりあえず、声に出して言いたい。ちなみにXII号とあるのは、12世代目ではなく12本のレーザーを使用するためだ。

 なお激光というネーミングは初代所長が決定したところ、たまたま中国語でレーザーという意味だったそうだが、諸説あって具体的には不明とのこと。

 それからペタワットの出力を持つLFEXで点火という流れ。磁場封じ込め式は高温のプラズマを維持するのが課題だが、レーザー核融合の場合は上記のサイクルを連続実行できるかが課題となっているほか、重水素と三重水素が入ったペレットを射出する方法もまだ模索中だ。

慣性閉じ込め式の仕組み(画像出典:レーザー科学研究所)

 ILEは、リネームする以前にはレーザー核融合中心の研究を行なっていた。直近ではトヨタなどとの協業で車両向けのレーザー核融合の研究がスタートしているが、核融合発電方面を見ると、まずトカマク型でITERを建設する流れになり、日本国内でも、まずはヘリカル型を含む磁場封じ込め式で進むことになった。

 そのため、レーザー核融合だけでなく、ハイパワーレーザーによる宇宙物理学や高圧下での物質の振る舞い、新物質の模索なども並行するようになった背景がある。

 たとえば世界でも数少ない超高圧環境下を生み出せるため、巨大な惑星の中心部の物質構成を探ることも可能だという。最近では「マイクロバブル爆縮」を発見している。これは新しい粒子加速器機構で、ミクロンサイズのバブルを内包する水素化合物をレーザーで原子サイズまで超圧縮すると高エネルギーの水素イオンが放射されるというもの。

 発見されたばかりだが、周期的に膨張と収縮を繰り返し、最大収縮状態になると高エネルギーの水素イオンを放出することも発見しており、小さいパルサーのようだと言われている。

 また試料やレーザーの当て方を変更するだけで異なる実験をスムーズにできるため、研究内容のバラエティーは豊富だ。レーザーをユカタン半島の岩に当て、恐竜絶滅になった原因とされる隕石落下と同じ状況を再現なんていうことも過去に行なっている。

毎年5月あたりに予定されている一般公開では、見学用通路から激光XII号とLFEXを見られる

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