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ほかに深層学習専用インフラ、従量課金モデルなど、「データ・セントリック」ビジョン製品を発表

ピュア・ストレージ、NVMe-oF対応「FlashArray//X」機種拡大

2018年07月17日 07時00分更新

文● 大塚昭彦/TECH.ASCII.jp

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 ピュア・ストレージ・ジャパンは2018年7月13日、次世代インフラビジョン「データ・セントリック・アーキテクチャ」に基づく新たなソリューション群を発表した。NVMe/NVMe-oF(NVMe over Fabric)に対応した「FlashArray//X」を対象規模別の5モデルに拡張したほか、クラウドライクな従量課金モデルを目指す「Evergreen Storage Service(ES2)」、NVIDIAと提携した深層学習向け統合インフラの小型モデル「AIRI Mini」投入などが発表されている。

フルNVMe対応のオールフラッシュアレイ「FlashArray//X」が5モデルに拡大した。NVMe+SAS/SATAコントローラを備えるため、従来の//Mファミリーは//Xファミリーへ統合

米ピュア・ストレージ 戦略部門副社長のマット・キックスモーラー氏

ピュア・ストレージ・ジャパン 代表取締役社長の田中良幸氏

データ資源を「活用」するための“データ・セントリック・アーキテクチャ”とは?

 今回発表されたソリューション群は、ピュア・ストレージが考えるデータ・セントリック・アーキテクチャのビジョンを実現していくためのものだという。では、そもそもデータ・セントリック・アーキテクチャとは具体的にどんな世界のことなのか。記者説明会では米ピュア・ストレージ 戦略部門副社長のマット・キックスモーラー氏が登壇し、その疑問に答えていった。

 「データはデジタルビジネスの“石油”である」と言われるようになり、現在ではあらゆる業種の企業が保有するデータを新規ビジネス開発や競争力向上のために活用したいと考えている。しかし、現実には「多くの企業は保有するデータを十分活用できるインフラを持っていない」とキックスモーラー氏は指摘する。過去のインフラはアプリケーション/プロジェクト単位で構築、拡張されており、ストレージはそれぞれの配下に存在しているため、データはインフラ内に散在している。

現状の企業システムイメージ。アプリケーション単位で構築されており、データが散在している

 こうしたデータ環境を“データ中心の視点”で考え直し、変えていこうというのがピュア・ストレージのビジョンだ。データを保存するストレージ基盤を統合し、シンプル化すると同時に、あらゆるデータに対するリアルタイムのアクセス性、マルチクラウド時代に適した管理性やコスト性も併せ持つものにする。

 「(自社内の)データをきちんと使える準備ができているか、という課題。ピュア・ストレージではここに真摯に向き合ってきた。そして、過去9年間をふまえた具体的なソリューションを今回、提案する」(ピュア・ストレージ・ジャパン 代表取締役社長の田中良幸氏)

 社内にあるデータを1カ所に集約し、活用できるようにするという意味では「データレイク」というコンセプトにも近い。ただし、データレイクがデータベース/データウェアハウスのレイヤーで行うデータ集約だったのに対し、データ・セントリック・アーキテクチャはよりストレートに、ストレージ/インフラレイヤーでの統合を狙う。ビッグデータの分析処理だけでなく、高いストレージパフォーマンスを必要とする従来型の業務アプリケーション(SoR、データベースなど)もそのまま利用できることが前提だ。

 より物理的な視点で言うと、外付け型ネットワークストレージ(SAN/NAS)を利用してきたワークロードだけでなく、サーバー内蔵ドライブ(DAS)を利用する分散ワークロードについても、ひとつの「共有型高速ストレージ」ですべてをカバーするという考えだ。

すべてのデータを「共有型高速ストレージ」に集約し、従来型ワークロードから新しい分散型ワークロードまでをカバーするという新たなビジョン

 ここでは、高速なストレージネットワークプロトコルであるNVMe-oFが大きく寄与することになる。NVMe-oFの外付けストレージは、サーバー内蔵ドライブとほとんど変わらない低レイテンシを実現する。また、ストレージI/O処理に使われるCPUリソースがiSCSI SANやHCIの利用時よりも低く、CPUをアプリケーション処理にフォーカスさせることができる。

高速ストレージネットワークプロトコルであるNVMe-oF(NVMe over Fabric)により、SAN/NASとDASの両方のワークロードを外付けストレージでカバーできるようになる

 キックスモーラー氏は、ガートナーが新たなストレージカテゴリとして「共有型高速ストレージ(Shared Accelerated Storage)」を認定したことを取り上げたうえで、これがハイエンドワークロードだけをカバーするのではなく、やがて現在のオールフラッシュアレイのワークロード全体をカバーするようになるだろうと語った。

FlashArray//Xシリーズが5モデルに、従量課金モデルも開始

 ピュア・ストレージでは、昨年4月にNVMe対応のDirectFlashモジュールを搭載した「FlashArray//X70」をリリースしている。今回はその//Xファミリーが拡張され、//X10から//X90までの5モデルがラインアップされた。

 なお、//XファミリーではNVMe DirectFlashとSATA/SAS SSDに対応するデュアルコントローラーを備えているため、SATA SSD搭載の//Mファミリーは//Xファミリーに統合される(本稿冒頭の図を参照)。DirectFlashとSATA SSDを混在させることもでき、「Purity」ストレージOSや「Pure1」管理ツールは共通しているので、従来どおり//Mファミリーから//Xファミリーへの無停止アップグレードが可能。

 //Xファミリーの新しいハイエンドモデルである「FlashArray//X90」では、6Uサイズの筐体で最大3PBの実効容量を備え、250マイクロ秒の低レイテンシを実現。FlashArray//Mシリーズと比較して、性能は最大2倍に向上すると発表している。

従来のFlashArray//Mシリーズとのパフォーマンス比較。書き込み帯域幅拡大、低遅延が実現し、パフォーマンスは最大2倍になるという

 なお昨年の//X70発売時点では、//Mファミリーと25%の価格差(実効容量ベース)があったが、今回の//Xファミリー拡張に併せて、その価格差をなくしたとキックスモーラー氏は説明した。

 また、クラウドネイティブなワークロードへの対応を強化するため、新たにKubernetes/Mesosphere/Docker環境に対応する「Pure Service Orchestrator」も発表された。加えて、「VMware SDDC(Software-Defined DataCenter)」や「Red Hat OpenShift Container Platform」のリファレンスアーキテクチャ、開発者コミュニティ「PURE/CODE()」を通じた「Ansible」や「Puppet」などの自動化ツールへの対応も強化し、インフラ自動化の動きに追従している。

 ストレージの新たな購入モデルとしてEvergreen Storage Service(ES2)も発表された。これはクラウドライクな従量課金モデルを目指すもので、毎月の使用量ベース(GB単位)で計測し、課金するものとなる。ただし基本契約は100TB以上の有効ストレージ、最短12カ月以上の利用契約が必要。

従量課金型購入モデルの「Evergreen Storage Service(ES2)」

 また今年4月にリリースした深層学習専用インフラ「AIRI」の小型構成モデルである「AIRI Mini」も発表された。AIRI Miniは「Tesla V100 GPU」搭載のAIアプライアンス「NVIDIA DGX-1」×2ノードと、17TB×7ブレードのオールフラッシュストレージ「Pure Storage FlashBlade」、ディープラーニング向けソフトウェアスタックなどで構成される。

 AIRI Miniでは、2ノードのDGX-1により合計2ペタFLOPSの深層学習能力を実現する。また、将来的な需要増加にあわせたスケールアウトも柔軟にできるアーキテクチャを採用している。

AIRI Mini(左から2列目)は、将来的なスケールアウトも容易にできるアーキテクチャを採用している

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