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ビール市場6年連続減の中、キリンが新ジャンルで首位奪還の裏事情

2018年07月13日 06時00分更新

文● 週刊ダイヤモンド編集部(ダイヤモンド・オンライン

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キリンが手掛ける各流通の新ジャンルPB。国内製造であること強調して品質の良さをアピールする Photo by Akira Yamamoto

ビール大手各社の上半期(1~6月)の課税出荷数量は6年連続で過去最低を更新した。大きくシェアアップしたのは、昨年独り負けを喫したキリン。雪辱を果たした格好だが、その内容には他社から疑問の声も上がる。(「週刊ダイヤモンド」編集部 山本 輝)

新ジャンルが唯一
増加に転じたカラクリ

「こういう形が許されるなら、何が何でもPB(プライベートブランド)を取りに行くことになるね」。あるビールメーカーの幹部は、ビールシェアの発表を見て毒づいた。

 11日に発表されたビール大手5社の上半期の課税出荷数量は、ビール類全体が1億8337万ケースで前年同期比3.6%減となり、上半期として6年連続で過去最低となった。

 種別ごとに見ると、ビールは8823万ケースで同6.3%減、発泡酒は2414万ケースで同8.4%減。新ジャンルが7099万ケースで同1.9%増だった。

 新ジャンルが唯一増加に転じた。だが、この増加にはカラクリがある。

 今春以降、キリンビールは、ファミリーマートやローソン、イオンなど流通各社の新ジャンル商品のPBの製造を矢継ぎ早に受託した。

 従来、韓国メーカーに委託され、国内の課税出荷数量に集計されていなかったこれらの商品が統計に含まれたことで、新ジャンルは前年比増という結果になったのだ。

課税数量の数字だけを見て
シェアを競い合うのは無意味

 実際、5社計の新ジャンルの数量のうち、PBが2.7%を占めるが、これを除くと新ジャンルは約1%の減少となる。

 アサヒビールやサントリービールは、PBを含めた集計方法に反発する。特に、6月から発売したキリンが製造するイオンのPB「バーリアル」は、年間販売目標が1700万ケースと市場に占める割合が大きく、PBを含めた数量だとこれまでの統計と連続性がなくなるというのだ。

 対してキリンも、PBの割合が大きくなる中、PBを含めない統計は問題だと主張する。従来からサッポロが手掛けているイオンのPBは課税出荷数量の統計に含まれており、集計の方法は今までと同様だという。

 各社意見が激しくぶつかり合うが、課税数量の数字だけを見てシェアを競い合うのは、無意味になりつつある。

 そもそも課税数量は実際の販売量と異なり、正確に市場規模を反映していないという面がある。

 例えば、PBの受託先として大きかった韓国製の新ジャンルだと、昨年の韓国からの輸入量は大瓶換算で1256万ケース(財務省貿易統計)にも上る。既にビール市場の数量の1%弱を占めるクラフトビールでは、最大手のヤッホーブルーイングが製造の多くをキリンに委託するが、缶製品などを中心にあくまで納税するのはヤッホーであるため、大手5社が発表する課税数量にカウントされていない。

「本麒麟」などがヒット
キリン自体はPBを除いても好調

 だが、装置産業であるビールは、シェアの増加が経営に重要な意味を持つこともあり、常に各社がシェアを意識し合っててきた。

 PBの“最後の聖域”となっていたビール類にキリンが手を出すのも、「シェアを取りにいくため」(キリン幹部)だ。シェアが増えれば、ビール類の生産が落ち込む中、工場の稼働率が改善する効果がある。しかし、「PBは薄利」(同)のため、利益率の面では大きな効果は望めない。PBを含めたシェア発表が定着すれば、各社ともPB受注に動かざるを得なくなるため、PBの受注合戦による消耗戦が勃発しかねない。

 キリン自体は、PBを除いても好調。今年発売した「本麒麟」などがヒットし、弱点であった新ジャンルはPB込みで前年比で21%増と大きく伸びた。キリンは新ジャンルの約7%がPBだという。そこから推計すると、PBを除いても新ジャンルは前年比で約12%増となり、ダントツの増加だ。

 昨年、キリンから新ジャンルで首位の座を奪ったアサヒは、キリンの逆襲に晒され、ビール類全体で前年比8.4%減と冴えない。

 キリンの好調を目の当たりにして、アサヒもPBに手を出すのではないか――。そんな観測が業界に流れるが、そうなればビールの新たな激戦の端緒となるだろう。


※本記事はダイヤモンド・オンラインからの転載です。転載元はこちら

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