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導入顧客の三菱UFJ銀行も出席、「2000件以上の業務プロセス自動化」を目指す取り組みを紹介

「目標はRPAではなく“知的プロセス自動化”」Kofax CEOが戦略語る

2018年07月11日 07時00分更新

文● 大塚昭彦/TECH.ASCII.jp

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 RPAツール「Kofax Kapow(コファックス カパウ)」などの業務プロセス自動化ソフトウェアを提供する米Kofaxが2018年7月10日、都内で事業戦略説明会を開催した。来日したCEOのレイノルズ・ビッシュ氏は、Kofaxが目指すものはRPAではなく、OCRやワークフローなどの機能も備える統合基盤を用いた業務プロセス全体の「インテリジェントプロセスオートメーション」の実現であると強調。またKofax導入企業である三菱UFJ銀行も出席し、2000件以上に及ぶ業務プロセスの自動化に向けた取り組みを紹介した。

Kofaxが提供する“インテリジェントプロセスオートメーション”ソリューションの全体像。単一業務だけでなく「業務プロセス全体の自動化」を狙う

米Kofax CEOのレイノルズ・C・ビッシュ(Reynolds C. Bish)氏

Kofax Japanセールスディレクターの河上勝氏

キャプチャソフトウェアから「業務プロセス全体の自動化」へ

 Kofaxは1985年、ドキュメントキャプチャソフトウェアのメーカーとして創業した。これは紙ベースの業務文書を、検索可能なかたちでデジタルアーカイブ化するソフトウェアだった。そしてここから長年をかけて発展し、業務プロセス全体の自動化基盤となる現在の「Kofax TotalAgility」プラットフォームが生まれた。

 TotalAgilityプラットフォームは、大きく分けて「キャプチャ」「自動化」「エンゲージ」という3つの機能で構成されている、とビッシュ氏は説明する。“マルチチャネルキャプチャ”と呼ばれるキャプチャの機能では、紙文書の読み取り(OCR)だけでなくPDFやExcelなどのデジタルファイル、WebページやEメールといったデジタルデータの取り込みにも対応する。また自動化は、RPAのKapowに加えてケースマネジメント、ワークフロー/プロセス自動化ツールも備える。そしてエンゲージは、カスタマーコミュニケーションツールなど外部システムとの連携、稼働状況の分析とダッシュボード可視化などの機能である。加えて、このプラットフォームに機械学習/AI機能も統合されている。

TotalAgilityプラットフォームの概念図。キャプチャ/自動化/エンゲージの機能群をベースに、各業種向けのソリューションを構築できる

 プロセス全体の自動化を実現するための機能群がプラットフォームに統合されているため、Kofaxは幅広い業務プロセスの自動化を実現可能であり、単体で提供される他社のRPA製品よりも優位性があるとビッシュ氏は説明する。ちなみにTotalAgilityプラットフォームのコンポーネント群は、個別導入によるスモールスタートも可能だ。

 ビッシュ氏は、Kofax製品を導入する顧客は規模も多様で、業種としては特に銀行と保険、製造、小売、政府公共系の顧客が多いと説明した。銀行ではグローバルトップ10社のすべて、保険ではトップ10社のうち9社が顧客だという。

 また、導入目的はRPAだけでなく、紙書類を含む多様なチャネルからの統合的なデータ取得/抽出(OCR/キャプチャ)、銀行の口座開設や行政組織の社会保障給付開始など新規顧客のオンボーディング、財務システムとの連携による請求や買掛金の処理など、一連の手続きが確立されたワークフローの自動化において、幅広い業務で利用されているという。

Kofax TotalAgilityプラットフォームとKapowの主な用途

 ビッシュ氏は、調査会社による市場予測データを示しながら「現在のRPAは、さらに大きな『インテリジェントプロセスオートメーション』市場への入口だと考えている」と説明。目指すものはRPAではなくあくまでもインテリジェンスプロセスオートメーションであり、Kofaxはそのための機能/技術をすべて「所有」している唯一のRPAベンダーだと強調した。

「業務プロセスの中で」ロボットを管理/操作するRPAの強み

 Kofaxの考える業務プロセス自動化環境において、RPAはあくまでも「プロセス自動化のための一機能」という位置付けだ。とは言え、前述したとおりRPAツールのKofax Kapowは単体製品としても導入/利用ができる。ビッシュ氏によると、Kofaxは20年以上のRPAツール開発経験を持ち、600社以上が採用するKapowでは数十万台のロボットが稼働しているという。続いてKofax Japanの河上勝氏が、さらに詳しくKapowの特徴や強みを紹介した。

 Kapowはサーバー型RPAツールであり、オンプレミスまたはパブリッククラウド上に配置したサーバー側で、ロボットの一括導入と管理ができる。クライアントPCの台数に関係なく、サーバー上におけるロボットの同時実行数に応じて費用を算出するライセンスモデルとなっている。構築できるロボット数は無制限で、GUIツールから設定のみ(ローコーディング)で、300種類を超える操作を実行できる。

KapowではGUIツールからの設定だけで300種類を超える操作をロボット化できる

 河上氏は、一般的なRPAツール、特にデスクトップ型RPAとKapowの間には大きな違いがあることを強調した。業務プロセスの中の一部分、単一の手作業を自動化するためのRPAツールではなく、他のシステムやドキュメントのデータとも連携することで「業務プロセス全体の自動化」を目的としている。

 「Kofaxでは『ビジネスプロセスの中で』ロボットを管理する。これにより、たとえば一連のワークフローの必要なタイミングでロボットを自動で起動させるといった処理ができる。さらにはOCR/キャプチャ、ケースマネジメント、ダッシュボードの機能も備えており、(一般的なRPAツールよりも)大きな効果を目指している」(河上氏)

KapowはOCR/キャプチャ、ケースマネジメント、ダッシュボードなどと連携しており、単体で開発されている他社RPAツールとは大きく違うとアピール

 またKapowでは、RPAで一般的なデスクトップ画面(キーボード、マウスの操作)をエミュレートする機能に加えて、Webアプリケーションの自動操作用に独自のブラウザエンジンを搭載している。河上氏によると、このブラウザエンジンはInternet ExplorerやChromeといった外部ブラウザを使わず、画面をレンダリングしないため10~100倍のスピードで稼働するという。さらに、Webサイト/WebアプリケーションのAPI(合成API)をコーディングなしで自動生成し、ロボット操作を可能にする機能も備えている。

 河上氏は、日本市場におけるKofaxの事業戦略について、日本企業の課題であるドキュメント(紙文書)起点のプロセス自動化や、SAPやOracleのERP周辺プロセスの自動化に実績と強みを持つため、特にそうした領域に注力する方針を示した。また、従来よりも導入しやすい約200万円/セットの買い取りモデルでの提供も開始している。

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