今回のことば
「ZOZOSUITは、計測することが目的ではなく、ぴったりとした洋服を着てもらうことが目的である。サイズの問題で悩んでいる世界中の人たちを笑顔にすることができる」(スタートトゥディの前澤友作社長)
ファッションショピングサイト「ZOZOTOWN」を運営するスタートトゥディは、創業20周年を迎えたのにあわせて、2018年10月1日から社名を「ZOZO」へと変更する。あわせて世界展開を本格化させる。
前澤友作社長は、1998年5月に創業したスタートトゥディの初年度の売上高が8000万円だったのに対して、2017年度の売上高が2700億円に達したことに触れながら「『世界中をカッコよく、世界中に笑顔を。』という企業理念を掲げてきたが、これまでは国内向けの事業に留まっていた。だが、新たなサービスを提供するチャンスがいま訪れた。これからが大事なチャレンジになってくる」として、全世界72の国と地域において、事業を開始することを明らかにした。
世界10万人にTシャツ&デニムパンツを無料提供
日本を除く全世界の72の国と地域を対象に、抽選で10万人に対して、Tシャツとデニムパンツをセットで無料提供するグローバルキャンペーン「グローバルロンチキャンペーン」を開始。「キャンペーン後の展開については秘密だが、ZOZOTOWNを世界展開していくものではなく、プライベートブランドのZOZOを展開していくことになる」とした。
同社では、これを第二の創業期に位置づけている。
前澤社長は「世界中に、サイズの問題で悩んでいる人がいると信じている」と前置きし、「私自身、背が低くて、足が短い。自分に合う洋服を選ぶことができず、それがコンプレックスでもあった。現在、ZOZOTOWNでは、65万点もの商品を扱っているが、そのなかでも適したものが選べないかもしれない。また、店頭では、裾上げするだけで恥ずかしく感じたり、自分が認められていないのではないかという思いもあった。それが、店に出向いて服を買うことが怖くなる原因だったり、店を訪れる機会が減っている原因になったりし、ネットで販売した方がいいと考えたきっかけにもなっている」と語る。
続けて、「そこで、プライベートブランドを通じて、自分が欲しいもの、自分にぴったりのサイズのものを作りたいと考えた。それを作れば、世界中で同じ悩みをしている人にも提供できる。プライベートブランドを実現するまでに、7、8年に渡る試行錯誤があったが、S、M、Lという既成のサイズではなく、Yサイズ(Your Size)を提供することで、人が服に合わせる時代から、服が人にあわせる時代にできる」などと語った。
スーツも販売するプライベートブランド「ZOZO」
ZOZOTOWNを通じて、ファッションブランドを扱ってきた同社が、プライベートブランドによって、新たな提案を加速することになる。
プライベートブランド「ZOZO」は、採寸用ボディースーツ「ZOZOSUIT(ゾゾスーツ)」で計測した体型データを利用するのが特徴だ。
ZOZOSUITは、約300~400個のドットマーカーを、スマートフォンのカメラで360度撮影することで、精度の高い計測が可能になる採寸用ボディースーツだ。ZOZOSUITは送料200円だけで、無料配布しており、配布数は、2018年7月3日時点で、55万3179枚に達したという。
前澤社長は、「2019年3月末までに、600万~1000万枚のZOZOSUITを配布できると考えている」とした。
トップスとボトムの上下を着用して、スマートフォンで360度撮影すると、全身24ヵ所の寸法を計測して、ZOZOTOWNアプリに保存できる。
「一部の体型によっては首の部分が採寸できない場合もあるが、ほかのデータをもとに機械学習によって予測することが可能になっている。ほかにエラーになりそうなところも同様に計測値を予測することが可能」だという。
前澤社長は、「ZOZOSUITは計測することが目的ではなく、ぴったりとした洋服を着てもらうことが目的である」と前置きし、「自分にあった洋服が注文できれば、身体が大きかったり、小さかったりといったように既製品では合わないという悩みを解決できる」とする。
ZOZOSUITで計測した体型データは、島精機製作所が開発した「WHOLEGARMENT」と連動させると、ニットの場合で、約40分で一着が編み上がる。
「WHOLEGARMENTは3Dプリンターの洋服版といえるもの」と前澤社長は語る。このほかにも自動で生地を裁断したり、自動で縫製する機器を組み合わせたりすることで、効率化や期間短縮などにもつなげることができる。
同時に、プライベートブランド「ZOZO」の拡充にも積極的に取り組む。
同ブランド初のフォーマル商品としてメンズの「ビジネススーツ(2Bスーツ)」を発表。ドレスシャツのセットでお試し価格は2万4800円(税込)で販売する。通常価格は4万4800円となっている。
「多くの人に試してほしいと考え限界まで価格を下げた。期間は限定していないがいつまでやるかはやりながら決めていく」とする。
これまでのパターンオーダーとは異なり、ZOZOSUITで計測した体型データをもとに、注文を得てから、体型にあわせて作り上げる完全オーダーメイド製品であり、1~2週間で届ける。
スーパー110'sのウール生地を用いて、着ていることを忘れるような着心地を実現。柄とカラーは、無地ではブラック、ダークネイビー、チャコールグレーを用意。ヘリンボーンでは、ネイビー、ダークネイビー、ライトグレー、チャコールグレーから選べる。今秋にはストライプのラインアップを追加。ネイビー、ライトグレー、チャコールグレーを用意するという。
また、ドレスシャツは14色を用意しているという。さらに、ネクタイも14種類を用意。これもカラー16色、長さ6種類、幅6種類をラインアップ。これによってネクタイも一人ひとりにあわせたものを提供できるとする。
さらに、カジュアル商品として、VネックTシャツ、ストレートデニムパンツなど、メンズで3種類、ウィメンズで4種類の販売を新たに開始。こちらもZOZOSUITで計測した体型データをもとに、一人ひとりの体型にあわせたサイズで提供する。VネックTシャツは1200円、ストレートデニムパンツは4900円、オックスフォードシャツは3900円(いずれも税込)。
「ベーシックアイテムを、すべて、あなたサイズで提供できる」としている。
なお、今後はZOZOSUITで計測した体型データを、ZOZOTOWN内の検索にも利用できるようにするというが、「体型データそのものを、他のブランドに提供する予定はない」としている。
同社では「Be Unique.Be Equal」をキャッチフレーズにしている。
「すべての人は個性的であり、同時に平等であるという意味を持たせている」とし、「ファッションは、笑顔になるきっかけや、人に会うきっかけになり、人をつなげるものになる。そこで、最初は、たくさんのブランドの洋服を扱って、それで喜んでもらえると考えた。だが、それでも洋服を着ることに自信がなかった、選択肢がなかった人たちにも、プライベートブランドのファッションを通じて、勇気や選択肢を与えて、世界を豊かにすることができると考えた」と前澤社長は語る。
プライベートブランドの強化と世界に向けた本格展開は、前澤社長のこうした思いがベースにあるといえそうだ。
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