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三菱UFJ系証券、相場操縦の背景に「稼げない債券市場」

2018年07月10日 06時00分更新

文● 週刊ダイヤモンド編集部(ダイヤモンド・オンライン

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三菱UFJフィナンシャル・グループ傘下証券でで長期国債先物の不正取引がありました
三菱UFJフィナンシャル・グループの傘下証券で起きた国債先物の相場操縦は、銀証連携などの一体運営を進める中、グループ経営の在り方にも疑問を投げ掛ける Photo:REUTERS/アフロ

三菱UFJモルガン・スタンレー証券社員による長期国債先物の不正取引をめぐり、証券取引等監視委員会が課徴金納付命令を金融庁に勧告した。証券会社初の不名誉な不正が起きた背後には、厳しい収益環境下でのディーラーの焦燥が浮かび上がる。(「週刊ダイヤモンド」編集部 竹田幸平)

 三菱UFJフィナンシャル・グループ傘下の大手証券、三菱UFJモルガン・スタンレー証券のディーラーが、昨夏に手を染めた長期国債先物の相場操縦。金利に影響を与える長期国債先物の相場操縦を証券会社が行うのは初のことで、6月29日に証券取引等監視委員会が2億円超の課徴金納付を命じるよう金融庁に勧告した。

 不正取引をしたのは三菱モルガン証の社員1人で、同社の自己勘定取引によるもの。同社員が昨年8月25日、実際に売買を成約させる意思がないにもかかわらず大量の注文を出す「見せ玉」と呼ばれる手口を使い、国債先物価格を不正に操作したというのだ。

 同社の屋台骨を成す法人部門であるが故、とりわけ厳しい収益を課されたディーラーが「収益ノルマで後れを取るまいとの危機感を抱いたことが、不正取引の背後にあったのではないか」と、ある債券市場の専門家は推測する。

 監視委は同社員が評価損を取り戻すために独断で行ったとみるが、大手証券関係者からは「損失を挽回したかったとしても信じ難い行為だ」と驚きの声が漏れる。というのも、わずか1銭の値動きに伴うさや抜きで上げた利得は158万円にすぎないからだ。

 だがその代償は大きい。不正発覚後、複数の事業会社による社債発行案件の引き受け主幹事から三菱モルガン証が外され、手痛い二次被害にまで発展しているからだ。

 なぜ、このような極めてリスクの大きな不正に手を染めたのか。その深淵を探ると、今回の病巣が属人的な問題にとどまらない可能性が透けて見える。

 前出の専門家が着目するのは、三菱モルガン証の稼ぎ頭が2本柱である点だ。一つは、財務諸表上でM&Aの関連手数料や株式・債券の引受手数料、委託手数料などを含む「受入手数料」。もう一つは、自己勘定のデリバティブ(金融派生商品)取引や機関投資家向けの金融商品販売などの収支を示す「トレーディング損益」だ。

 ここ数年、二つの柱とも同程度の稼ぎを上げ、営業収益全体の約9割を占める。だが、共に収益の絶対額は減少傾向にある。

 特に厳しいのは、一部が不正対象となった債券取引全体の比重が、株式より大きなトレーディング損益。2018年3月期の黒字額は前期比7%減の1167億円と、同4%減の受入手数料(1179億円)を下回り、3期連続で減少している。15年3月期と比べると、15%減というありさまだ。

 それだけではない。減収に伴う人件費などコスト割合の上昇も凄まじく、営業収益から金融費用を除いた純営業収益に占める「販管費・一般管理費」の比率は、14年3月期の63%から、18年3月期の86%にまで急上昇しているのだ。

 前出の債券市場の専門家の試算では、「販管費が横ばいのままトレーディング損益がさらに3割程度落ちると、営業赤字に陥る」という。これ以上、受入手数料との差が開けば、社内で債券ディーラーたちへの風当たりが強まるのは必至。故に、「現場には収益確保への強い圧力がかかりやすい状況にあった。社内の他の業務担当者には相当なライバル意識を持っていたのでは」(同)というわけだ。

 トレーディング損益の黒字縮小は世界的な低金利環境で債券取引が細った影響が大きいが、日本銀行の金融政策の存在も見逃せない。とりわけ、長期金利に0%程度の誘導目標を設けた新たな金融緩和の枠組みを導入した16年9月以降、市場機能の低下で日々の国債相場の値動きが極めて限られる“稼げぬ市場”となり、収益環境が厳しさを増したのは間違いない。

 ましてや、2年ほど前の16年12月には同じグループ会社のモルガン・スタンレーMUFG証券が、自己勘定部門による西武ホールディングス株の相場操縦で金融庁から2億円強の課徴金納付命令を受けるなど、グループの経営管理体制にも疑問符が付く状況だ。

銀行系証券で相次ぐ不祥事は
グループの問題にも

 一方、同じ銀行系証券で同時期に不祥事を起こしたのがみずほ証券だ。6月26日に発生したシステム障害で、個人顧客向けのインターネット取引サービスを3日も停止する事態に追い込まれた。親会社のみずほフィナンシャルグループが同月上旬から移行に着手したばかりだった次期勘定系システムとは無関係ではあるものの、みずほグループのシステムへの信頼が再び揺らぐこととなった。

 三菱UFJモルガン証、みずほ証の両社とも、今年4月から新社長が就任したばかりのタイミングで不祥事が発覚し、出はなをくじかれた格好だ。子会社の証券発の問題も銀行グループ全体のイメージダウンや経営管理問題につながりかねず、共に地道な取り組みで信頼回復に努める他ないだろう。


※本記事はダイヤモンド・オンラインからの転載です。転載元はこちら

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