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AIで犬型ロボットはつくれても、猫型はまだつくれない

渋谷100BANCH「ナナナナ祭」セッションレポート「AIは優しくなれるか」

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優しいAIの見た目

 次いでパナソニックの森川氏は、PepperとAIBO2つのロボットを例に「優しいAI」の外観について話題をふった。

 「AIBOの方がいい。PepperはSiriの頭しかないのに見た目があれでは期待してしまう。犬型のAIBOならうまくいかなくても許せる」

 そう語ったのは東出氏。自身が手がける木製ロボット「HACO」でも、饒舌に話さない方がいいと考えているという。それは外観から予想される発話レベルに関係があるようだ。

 林氏はAIBOを手がけるソニー担当者の話として、AIで犬型ロボットはつくれても、猫型はまだつくれないと紹介した。そっけなく次の行動が想像しにくい猫よりも、犬の方がつくりやすいという。

 粟生氏は「人が想像できる近しいものが優しくなるんじゃないか。Pepperは何かすごいことができそうな気がする」と話した。

AI同士がメールの返事

 このほか林氏は、何かしら形はあるにせよ、それはロボットのようなものではないのではないか、と疑問を投げかけた。

 「AIは人の気持ちに対して寄り添う。形より声や内容が重要で、形は勝手に想像させてくれるようなものがいいのかもしれない。LINEの電話で話す仲良しと、普通の電話で話すと何かが違った。使うツールにより声の伝わり方とか慣れ親しんだ間合いが違うなら、AIもプライベートで話す近さ、オフィシャルなものの距離とか、声のチューニングが変わってくるのではないか」(林氏)

 実際にロボットを開発している東出氏も「今は仮説としてロボットをつくっているが、そもそもロボットは必要なくなると考えている」と意見した。

 現状は会話するためのよりしろとして擬人化する向きもあるが、こうした支えはいずれ不用になるというわけだ。東出氏はチャットボットとのやりとりについても「文字に変換されるので向こう側に人がいるかコンピューターかは関係ないんじゃないか」と話していた。

 これに林氏は、現在Gmailアプリで返信メッセージが選択できる点について「メールによってやりとりが手紙の100倍くらいになったかもしれない。今は短文だけどAIが入ってきて、すぐにちゃんと返事ができるようになるはず。そうなるとメールの返信をAIがして、さらにその返事をAIが書くようなことになって、結局用事ってなんだったの? と電話で聞くことになるかもしれない」と述べた。

優しいってなんだ?

 最後の議題は「優しいAI」は人に何をしてくれるのか?

 林氏が「利便性のためのAIなのか、感情のためのAIなのかでずいぶん違ってきそう」と切り出した。ようするに、人が苦手な領域をAIで支援するものと、人の主観的な判断をAIがするかという話だ。

 たとえば利便性のためのAIについて。人事評価や自己評価など、バイアスをかけずに判断するのは難しい面がある。粟生氏のエクサウィザーズではHRテックにAIを導入しており、過去の採用傾向を勉強し、AIが求人エントリーの中から傾向を示すという。

 人の感情を伴う部分については、会場の参加者を巻き込んだ形で熱を帯びた議論が戦わされた。

 「そもそも、優しいってなんだろう?」

 「人は基本的に邪悪な存在で、AIが人に近づけば優しくない」

 「人はまだ、理想の人間を定義できていない」

 「主観的なことをAIに決められる怖さがある」

 「AIの優しさはペンが持ちやすい、持ちにくいのようなUIやUXの話ではないか」

 「お腹に優しいバファリン。胃が荒れやすい薬であって、優しくないからそうなる。AIもそもそも優しくないのでは」

 粟生氏はAIをつくる側として「実はAIは大したことがまだできない。知らない技術は怖いけど、日常の中にやがて溶け込んでいくんじゃないか。知って使ってつくってほしい」と意見した。

 このほか、会場から「四次元ポケットのないドラえもんがいたら、優しいAIなのかも」といった意見が出た。東出氏はこれに「そう考えるとドラえもんすごい! 四次元ポケットで解決して、存在そのものが優しい」と述べた。

 また林氏は「四次元ポケットのあるドラえもんとないドラえもん。どちらか持って帰ってよいとなれば、みんなポケットのある方を選ぶ。これが人間。一般論なら性善説でいられるけど、個人となれば別の意見があるはず」とコメント。どういうルールがいいのか議論を重ねる必要性を説いた。

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