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選ばれし者のみがステアリングを握れる、F1より貴重なフェラーリ「XX」

2018年07月07日 17時00分更新

文● 栗原祥光 撮影●栗原祥光

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 イタリアのスポーツカーメーカー「フェラーリ」は、新車販売以外にもアマチュア向けレーシング車両の販売やサポートを行なっている。その中でも他社に類を見ないサービス「XXプログラム」の車両が日本にやってきたので紹介しよう。

フェラーリオーナー自らが市販モデルの開発を行なう

 「XXプログラム」とは、フェラーリの顧客を代表するオーナーが専用車両を購入し、クローズド・コースをドライブすることで得られたデータを将来の市販モデル開発に役立てることを目的としたサービス。オーナー自らが次のフェラーリを作るという夢のような企画なのだ。

 マシンの保管やメンテナンスはフェラーリ本社内の一部門「コルセ・クリエンティ」で行なわれる。オーナーは走らせたいサーキットと日時をコルセ・クリエンティに連絡すると、マシンとスタッフ、機材一式がイタリアからサーキットに届きセットアップ。オーナーはヘルメットとレーシングスーツを持ってそのサーキットに行き、気が済むまで走行。気が済んだらマシンはそのままにして帰宅する。あとはフェラーリのスタッフが片付けてくれるというわけだ。

 言い換えると、車両を購入してもオーナーのガレージにその車はないし、好きな時に走らせられるというわけにはいかない。かなり特殊なシステムなのだ。

 サーキットには車両だけでなくテレメトリシステムも持ち込まれ、マシンの状態をリアルタイムで監視。走行後、オーナーはインストラクターから正しいライン取りなどのレクチャーを受けてドライビングテクニックを磨くことができる。一方、フェラーリ側はテレメトリのデータや、テストドライバーであるオーナーの意見を基に新車開発に役立てているという。

 現在、このXXプログラムに参加しているメンバーの数は明らかにしていないが、コルセ・クリエンティではF1マシンや公認レースの車両を含めて300台近くのマシンを管理しているという。そのうち日本人の比率は約9%とのこと。気になる価格は非公開。

 一説によればEnzo Ferrariをベースとした初期のプログラム「FXX」が、車両価格と各種メンテナンスをつけた基本パッケージが150万ユーロ(約2億円)と言われている。また、それだけの金額を持っていても誰でも参加できるわけではなく、フェラーリ側が選んだ一部のオーナーのみが対象となる。その選定方法は明らかにされていない。

 そのようなサービスであるため、日本にXXプログラムの車両がやってくることが珍しく、また一般の目に触れることは、F1マシン以上に貴重な機会。3種類あるマシンのうち、2種類を紹介しよう。

599GTBをベースとした599XX EVO

 2010年から開始された「599XXプログラム」の専用車両で、その名の通り599GTBフィオラノがベースとなっている。エンジンは599GTBをベースとした5998ccのV型12気筒を搭載し、オリジナルが620馬力であるのに対して700馬力へとチューニング。車体もベース車両の1750kgから1350㎏へと大幅に軽量化がなされている。

 注目はリアに設けられたACTIFLOW(アクティフロー)という空力システム。アンダーボディーを通過したトランク内部に設置された2つのファンで導きテールライト部やディフューザーから車外へ強制的に排出することで、ダウンフォース量が変化しやすいコーナリング時の姿勢に応じて積極的にコントロールするというもの。車体下面の空力処理は長年のF1参戦で培った技術であるが、これを市販車に積極利用したシステムは599XXが初めてとなる。

 2012年に電動可変式リアウイング等を搭載し空力や排気系をチューニングしたEVOパッケージが登場した。なおフェラーリのエンジニア曰く「XXプログラムの車両の中では、もっとも運転が易しい」そうだ。

LaFerrariをベースとしたFXX K

 Enzo Ferrariをベースとした「FXXプログラム」の後継として始まった「FXX Kプログラム」。FXX Kは、LaFerrariをベースとしたモデルだ。KはKARSシステムから採られており、6.3リットルV型12気筒エンジンとモーターアシストを合わせた総出力はLaFerrariを100馬力ほど上回る1050馬力を発生する。

 LaFerrariとの外観上の違いはエアロダイナミクス。特にリアに設けられた小型のリアウイングは特徴的だ。

 車内はかなりレーシー。バックミラーはなく、モニターを使って見ることになる。車内空間はタイトで軽自動車の運転席程度しかなさそうだ。

 2017年10月には空力アップデートしたEVOバージョンが登場。フロントやリアのディフューザーが大型化され、よりダウンフォースを得る工夫がなされている。目につくのはシャークフィン。その翼端板には通常のウイングとは異なる角度のフィンが3枚設けられているのが興味深い。

 また、車内を覗くとF1のようなステアリング形状に変更されていた。

 これらの車から得られたデータが、新しい跳ね馬にどのように役立つのか。これからのフェラーリに注目だ。

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